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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
101/191

31話 アイス屋開店です。


いやぁ・・・うちの建築部(土木鍛冶細工混合班)、すげぇなぁ・・・


着工から二週間。


本日、何事もなくドロードラング王都屋敷跡にアイスクリーム屋さんがオープンです。


いや、土台水回り系は私も手伝ったよ。屋敷を取り壊した直後に。

それから二週間って・・・実は皆魔法を使えるんじゃないの?と思わずにはいられない。義手義足には普通の働きができるようにはしているが、木材を放り投げられるとか、二階部分までジャンプできるとかの能力は込めていない。

私がやっているんだからその保証はある。亀様だって基本ノータッチだ。

・・・元々のスペック? 高過ぎない?


「お嬢が土台をやってくれるから早いのさ」


グラントリー親方はそう言うけどさ。それだけじゃないっしょ。


実は、店舗から離した所にも建物を造った。こちらは社員寮である。アイス屋の従業員や王都見学に来た時の宿代わりとしての物。キッチン、トイレ、風呂が共用で、男女に別れた二棟と、ファミリー向けが一棟。

お隣さんの屋敷がうちの敷地から離れていたから建てられた。


それを建てるのも同時に二週間である。

どうなってんの?


「お嬢が一人いると作業が(はかど)る!」


・・・あざーす。



さて。


「いらっしゃいませ」

「「「 いらっしゃいませ! 」」」


「かしこまりました」

「「「 かしこまりました! 」」」


「少々お待ちください」

「「「 少々お待ちください! 」」」


「お待たせいたしました」

「「「 お待たせいたしました! 」」」


「ありがとうございました」

「「「 ありがとうございました! 」」」


「余裕があれば、またのご来店をお待ちしています、とも言って下さい」

「「「 はい! 」」」


食堂勤務経験者ダジルイさんのもと、挨拶練習。

なのだが、野太い・・・


なぜならば、店舗が小さいので、少数精鋭でやってもらう事になり、ネリアさんの元でガッツリ掃除術を叩き込まれ、姿勢も綺麗になり、ついでに余分な肉も削げ落ちてスレンダーになったガットとライリーがまず選ばれた。


二人は執事服(と言うよりバーテンダーだな)と眼鏡で驚きの変身を遂げた。

執事に見える。黒のベスト、パンツ、ネクタイって格好が、執事に見える!

あの小汚かった、イヤ、こん(・・)汚かった男たちがスタイリッシュな執事に見える!

ライリーなんて、どもりを誤魔化す為にゆっくり話すようにしたから余裕があるように見えるし。

ネリアさんはどんな指導をしたの!? 恐ろしい女性(ひと)!!


そして驚きの人がもう一人。


興行に参加するくらいなら店長をやる(そこまで嫌か)、と言ったヤンさんだ。王都偵察も一段落したことにして、次代育成中。

元々細身ではあったけど、ここまで執事服を着こなすとは思ってなかった! 前髪を上げての細縁伊達眼鏡が超似合うんですけど! 


・・・ちょっと若頭っぽいのは置いておく。または若い組長。

ガットとライリーなんて腕まで刺青してあるから長袖シャツで誤魔化してるけど・・・極道さんのお店と変わらないかしら?


それにしても落ち着いた見た目の男たちがいるだけでだいぶ高級感が出るな~。初老の眼鏡執事の喫茶店・・・アイスしかメニューがないのにね!


平民向け店舗の方はダジルイさん率いる侍女たち五人。

失礼のない愛想の良さ(あと若さ)で選んだらしいが、うちの侍女たちは誰もどこに出しても恥ずかしくない! という事で最後はジャンケンになったとか。


水色と白のストライプ柄の制服にお揃い柄のベレー帽、フリフリ真っ白エプロンにそれはそれは熾烈な女の闘いが繰り広げられたとか。うん、年齢制限ある制服可愛いわ~。


ダジルイさんは男たちと同じ黒の服。パンツ姿が格好いい。この人可愛い孫がいるんだぜ、信じられない。ちょっと化粧をしただけでどうなってんだいこのエロさ。私には一生備わらない気がする・・・


そして真新しいコック服の料理班の若手が男ばかり五人。全員孤児なので、こうして店を任せられるようになったのが感慨深い。ちょっとうるっとしたら皆から頭を撫でられた。・・・へへっ。


開店五分前。私の挨拶が終わったら配置に付く。


「予定通り当分は日中だけの営業になります。アイスが売り切れたら閉店で構わないですが、来店されたお客様には丁寧な接客をお願いします。まあ初日だし、そんなにお客さんは来ないと思うから落ち着いてやってね!」


元気な返事が頼もしい。領地でも接客してたしヤンさんもダジルイさんもいるし、大丈夫でしょう!

じゃあ私は帰ります!

今日は休日のはずなのに休みの申請が受理されなかったので、店に来た時同様、亀様転移で仕事に戻ります。

もしや?とは思っていたけどやっぱりブラックだった。

助手だから学費は免除してもらったけど! なんなら給料も出るけども! 


助手なんてーーっ!!





エンプツィー様(上司になるので呼び名も変わった)の割り当ての教職部屋を片して(毎日やってるのに!)、そろそろ昼食かと思ったタイミングにヤンさんから売り切れたので閉店しますと連絡が来た。


もうっ!?


そして寮の食堂に行けば、今日もアイスは旨かった!と、顔見知りの生徒のほとんどに言われた。

わざわざ行ってくれたのかい!?

テイクアウトの方は制服着用もしくは学生証の提示で半額になる学割を導入したけど、まさか顔見知りのほとんどが行くとは思ってなかった。試食と言っては食べさせていたから、それで満足してると思ってた。


好評だったのは紅茶味。王都限定味としてバニラと売り出すことに。他の味は様子をみながら増やすかも。あんまり種類豊富にしてドロードラングでガッカリさせるのもな~。というか領に来て欲しいので、あえての二種だ。


「コーンも旨いよな。せっかくだから皆で食べながら歩いて宣伝してきたよ」「食べ歩き組はちゃんと私服だぞ。制服で食べ歩きは怒られそうだからな」「ドロードラング領に行ったことのある人も並んでたみたいだったわ」「ヘラがあるから、小さい子も上手に食べてたわよ」「バニラ味と紅茶味と二種類だったから、悩んでる人も多かったな」「外のベンチも可愛いよね!」「売り子さんの制服が可愛いくて!私も働きたい~!」「チラッと見えたけど貴族向けには執事がいるのか? 格好良かったわー」「黒い服の女の人が格好良かった~!」「あ、そういや先輩方も見かけたぞ」「貴族は私服もおしゃれよねー」「いつかは二階のメニューも食べたいよなー!ちょっと多いんだろ?アップルパイもあるし!」「あ!ゴミはちゃんと持ち帰って寮のゴミ箱に捨てたからな」


「・・・皆、ありがとう」


「いっつも旨いモン食わせてもらってんだ、たまには払う。たまにだけどな!」


皆が笑ってる。

嬉しい。


「次はミシルとも一緒に行こうぜ」


ミシルはまたもやドクターストップがかかった。

やっぱり体力が足りなかったようだ。ミシルの魔力も膨大なものらしいけど、青龍がやっていたように足りない体力を補うものでもないらしい。

今まで魔力を意識したことが無かったから上手く変換出来ないんだろうと学園ちょ、エンプツィー様も言っていた。


私の魔力発動が貧乏への怒りだったから、ミシルも母親を助けたくて目覚めたのかもしれない。

・・・原作ゲームだと、どんなだったんだろ?


置いといて。

ミシルにはとにかくちょっとずつ食べさせて食べさせて、時々皆も巻き込んで食べさせているところ。だから皆とも仲良くなった。


体が重いと言い出したので筋トレと短距離ウォーキングから始めてもらってる。カロリー消費と筋肉増量。目指せ普通の体!

プールが良いんだけどね~。まだ水はちょっと苦手みたい。

あ、プールは存在が無い。アーライル国は水遊びは川らしい。水着・・・スパイダーシルクでいけるか? むぅ。


マークとルルーのおかげで騎士科と文官科と侍女科の平民生徒とは仲良くなった。

「もっと恐い人かと思ってたけどその残念さに気が抜ける」とよく言われる。

頼もしい兄貴なマークと綺麗なお姉さんのルルーが容赦なく突っ込んでくるからだろうか。田舎臭が漂っているからだろうか。

「黙っていれば美人」もよく言われる。


ここでも「黙っていれば」か!?

そして私は美人ではない!!

美人とは!ルルーもそうだけど、ライラとかエリザベス様とかクリスティアーナ様とかビアンカ様とかアンディとか王妃様方を言うのだよ!


そう力説する度に納得はしてもらえるが、なぜか残念な目で見られる。そして皆、私を宥めるように頷くのだ。

ハイハイ、と・・・解せぬ!


「相変わらず騒がしいな・・・」


あ、アイス先輩方のご登場だ。シュナイル殿下は休日はお城で別の勉強があるらしい。大変。


「「「 こんにちは! 」」」


「おぅ。何だお前たちも行ったのか?」


子爵家嫡男らしいアイス先輩はすっかりとこちらに馴染んでしまった。もともと雑なのか、後輩の挨拶に「おぅ」と言うまでが早かった。貴族だから「善きに計らえ」とかでもいいのに。


マークによればなんと寮での一年生自主練に何人かで手伝いに来てくれてるそうだ。

最初はマークにこてんぱんだったけど、サポートが上手いらしく、他のチャレンジャーに的確な助言をするとか。

「集団の動きを考えられる奴でもある」とマークが言っていた。へー。

そういう事なら、いずれ騎士団長になるシュナイル殿下の助けになるだろう。


三年生のアイス先輩方が現れるので、自主練には二年生もわらわらと参加。

騎士科はすでに貴族平民入り乱れて仲良しな感じだ。


もちろん差し入れとして胃袋を掴んだのが良かったのもある。

一年生は頼れる先輩が出来て毎日楽しそうだ。

先輩方は将来の戦力としても繋がりができ、何より慕ってくる後輩が可愛いよう。


女子の方は平民と貴族と明確に分かれているのが仕様がないかなとは思うけど、平民生徒は三年生まで掴んだぜ! 卒業後はドロードラング領に就職したいとかで明け透けにごますりに来ているんだけど、まあ、授業や行事でキチッと動くし、それ以外も礼儀のしっかりした普通の女の子たちなので、来てもらっても楽しいかな。

流行なんかはここで仕入れるので助かっている。



「先輩もお嬢の店に行きましたか?」


「ああさっきな。危うく食いっぱぐれるところだった。二階席で二個盛り旨かった!」


ぎゃーっ!!と庶民から絶叫がおきる。

二個盛りなんて更に高価だからね。先輩を見る目がヒーローを見つけた子供のようだ。


「こうなったら俺たちは討伐実習を頑張って稼ごうぜ!」


「そしていつか!アイスの二個盛りを食うぞ!」


志低いよ!そんなのすぐだよ!


「その後はドロードラング領に行って泊まりがけで旨いモンを食うんだ!」


・・・ははっ!


「そうとなったらアイス先輩! 着替えてくるんで稽古お願いします!」


昼食を終えた一年生がわらわらと食堂から出ていく。

二年生は残ってる料理を掻き込み、三年生は一人以外含み笑いをしている。


「ぶっ、クックッ、()()()()()で定着したな?」


取り巻き仲間に言われた本人は不貞腐れた表情だ。


「俺の名はマイルズ・モーズレイだっつーの。覚える気あるのかアイツ等は。そして俺はこれからが飯だっての」


ため息をつきながら私と同じテーブルにつく。そこに、トレイに昼食を載せた侍女科の女子がやってくる。

こうして食事を運ばせてもらい、貴族へのマナー復習を実践している。

先輩にやらせてもらえるか質問したのも偉いが、快くOKした先輩方も偉いと思う。おかげで今では無駄な緊張はしなくなったようだ。


良いことだと思う。なあなあではない、良い感じの線引きがされている。


アイス先輩は私の隣に座るマークを見た。


「休日に悪いがマークも付き合ってくれ」


「畏まりました~」


もはやマークも練習仲間である。大出世だなマーク。

だけど、ガツガツと、でもこぼさない食べっぷりにアイス先輩はちょっと引いてた。



あ~あ、私も稽古にまざりたい・・・





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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
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