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贅沢三昧したいのです!  作者: みわかず
12才です。
100/191

続続30話 さらばです。<勅命>


とりあえず、怪我をした生徒は治癒教師が手当てをしていたので青龍は教師を手伝って鍛練場の修復。

ミシルも青龍の治癒を受けてから保健室へ。

今日はもう生徒全員が自室待機になった。


見た目だけなら校舎は元に戻ったけれど、四神が二体も現れたのでそれはそれはそれは大騒ぎ。

生徒たちは誘導されるまで遠巻きに魔物たちを見ていた。


学園長は王宮に呼び出し、騎士団が厳戒態勢をとり、生徒である私は関連あると判断され(まあ、あるけども)、白虎と青龍と鍛練場にいた。

マークとルルーはミシルに付いてもらった。

アンディは残って私の定位置のベンチに一緒に座ってくれている。


《この後、我はどうなるのだろうか?》


タツノオトシゴが聞いてきた。

どう?って、どう?


《騒ぎを起こした責はとるつもりだが、ミシルの村にも長いこと迷惑をかけた様子。そちらにも詫びをせねばならぬ》


詫びね~。


《ミシルにも、どう詫びれば良いか・・・》


それは・・・私にも何とも言えないな~・・・


《姉上、暇だから帰って良いかー?》


白虎がけろっとそんなことを言う。昼前から夕方になりつつある間、鍛練場でシロクロとアンディと私と遊んだけれど、後はゴロゴロとしているしかできないもんね。私も飽きた!


「そうね。サリオンも心配だし良いわよ。でもシロウとクロウは残ってくれる? あ、白虎を送ってから戻ってきてくれてもいいけど」


《むぅ! 我だけで領まで帰れるぞ!》


でっかくなっても可愛いな~。


「分かってるけど、領に着くまで独りだと寂しいかなと思ったの。平気?」


そう言うと小さくぐぬぬと唸る。


「白虎が強いのは心配してないけど寂しいのは心配だよ」


《うぬぅ・・・姉上にはアンディも()るし、少し、シロウとクロウを連れて行く・・・》


「うん。今日はありがとう。サリオンたちをよろしくね」


《任せるが()い! ではな!姉上!》


三頭が消えるのを確認して、アンディと青龍を振り返る。


「さて、これからどうするかな」


アンディが苦笑する。


「どうなる(・・)かな、じゃないんだ?」


「自慢じゃないけどどうとでもなる力はあるもの。まあ、そうするには亀様にもお願いするけどね」


《力添えは何時でも構わぬよ》


「ありがとう。それはアンディへもお願いできる?」


「ええ!? それはさすがに図々しくないかい?」


《ははは。我はアンドレイも好ましいからな。嫌と言われるまで力添えをするぞ》


「! ・・・ありがとうございます」


アンディがベンチから立ち上がり、亀様へ深々と頭を下げる。


《愛し子、か・・・》


青龍がぽつりと言った。

あ、それも聞いてみたかったんだよね。


「ねぇ『巫女』って代々継ぐものじゃないの?」


《いや。『巫女』とは我らの親代わりだ。我らが独り立ち出来るようになればその(えき)を終える、一代限りのもの。後は希望があれば人間として生まれ変わると言っていたな。その頃は人間など影も形も無かったが》


・・・いやいやスケールのデカい話、というか創世の話じゃないのコレ!?

アンディもちょっと引いてるよね?


「えっと、では、もし『四神の巫女』と呼ばれる存在が今現れた場合、本物かどうかは分かりますか?」


アンディが果敢に質問をする。あ、それは確認しておかないと!


《判らぬ。・・・ただ、》


亀様が一旦言葉を区切る。


《それが『玄武の巫女』と言うならば、我は偽物と断じるよ》


《え?》


タツノオトシゴがぽかんとした。

亀様はその反応が分かっていたのか、はははと笑った。


《それだけの時を過ごしたと言ったろう? それに、我の『母』は一人だ。他は要らぬし今更の事でもある。何にしても、もう『愛し子』がたくさん()るしな》


『愛し子』とは『気に入った者』ということらしい。

アンディと見合って笑った。嬉しい。


《青龍よ、そういう意味ではお前はまだ若い。世界を見るといい。美しいものも、穢れたものも、全てを見て、己の信じるものを見つけるといい》


タツノオトシゴは神妙な顔をしていた。


・・・たぶん。

喋ってもらわないと表情もよく分からん・・・

そういや亀様も最初は分からなかったな~。

白虎は表情が豊かだよね~・・・猫科だから?

・・・性格か。







シロウとクロウが戻って来たと同時に緊急会議も終わったらしい。お偉方がぞろぞろとやって来た。


国王までもが現れたので礼をとる。


「貴方が青龍か」


如何(いか)にも》


臣下の仕事をすっ飛ばして国王自ら青龍に声を掛ける。

青龍もベンチからぴょこんと飛び降り、国王を見上げる。

途端、国王が片膝をついて青龍の目線に近づいた。

どよめくオッサンたち。


「お初にお目に掛かる。私はアーライル国王フリード・アーライルだ」


《四神の(いち)、青龍と申す。この度はアーライル学園に多大な迷惑を掛けた。申し訳ない》


ぴょこ、とタツノオトシゴが頭を下げる。


「いや。四神が暴れて国が残っている方が奇跡だ。なので青龍がどの様な者かを見に来ただけだ。その礼ある態度、もはや害は無いと信じよう」


《・・・(かたじけ)ない》


「せっかく会えたのだから友誼(ゆうぎ)を結びたいところだが、正直どうしたら良いかわからんな。

ドロードラング。面を上げよ」


国王がその場に立ち、私に向く。


「ご苦労だった。気になっているだろうから先に言うが、残念ながら学園長は職を降格だ」


ミシルの暴走を予見できなかった上に、軽いとはいえ怪我人が多かった。生徒に。

それに原因のミシルを連れて来たのは学園長である。

長として、責任はある。

待ってる間にアンディと話し合った。予想通りだ。


「管理不行き届きだな。クビにせよと騒がれたが、残念ながら防衛面でもキモだからな。エンプツィーを学園から離す訳にはいかん」


まあそうだろう。


《我が代わりに罰を受けよう》


タツノオトシゴがビシッと決めたが、


「せっかくの申し出だがそれはまた違うのでな。気持ちだけ受け取ろう」


そうか、とちょっとだけ項垂れた。・・・真面目か。


「私にも何か処分がありますか?」


私にも何かあるのだろうと聞けば、ニヤリと国王が笑う。

うげ。

思わずアンディの手を掴む。


「新しい学園長には副学園長が繰り上がる。学園長は平教師に格下げで学園に留める事になったが、元々じっとしておれん性格だからな、目付けを兼ねた助手を付ける事にした。侍従だけでは足らん」


・・・うわ~。

アンディにそっと助けてと目配せしたけど逸らされた。

手は強く握られたので、覆せないけど助けてはくれるのだろう。


「どうせ魔法に関してはエンプツィーを凌ぐんだ。サレスティア・ドロードラングよ、リンダール・エンプツィーの助手を命ずる。爺が勝手をせんように見張りをせよ」


「お断り致します!」


「ふっ・・・勅・命!」


「ぎゃーっ! 私12才ですよ!? 新入生ですよ! 成人前ですよ! 横暴!横暴だ!」


「お前が生徒だとやり辛いと職員会議で満場一致だったそうじゃないか。予定が早まっただけだ。問題無い」


「問題ありますよ!」


「どうせもう領主として働いているし、爺一人の面倒が増えるだけだ」


「その爺一人が問題でしょうよ! そして増える仕事は一人分じゃないし!」


「ちっ。ガタガタ言わずに受けろ。勅・命!」


「舌打ち!? そして二度目!」


「仕様がない。代わりに何か一個免除してやる。言え」


「一個だけ!? ケチく・・・あーじゃあ、青龍の囲い込みを禁止して下さい」


「それはもう禁止した。四神の囲い込みは正直危険の方が大きいからな。どの領地に住まわせるかと聞いたらたらい回しにあったぞ」


付いて来た人々が目を泳がせる。

そうなの? 誰もが欲しがると思ったのに。安全思考なのかな?


「ちなみにお前も見張りが必要と判断された。爺とお互いに見張れ」


そういうの言っちゃう!? ぶっちゃけ過ぎだろ!?


「何だ、何も思いつかないのか? だったらあれだ、ドロードラングの王都屋敷の敷地内は治外法権、ではおかしいか、特区としよう。それならどんな店を出そうが文句をつけられんだろ」


え。


「・・・良いのですか・・・?」


「お前の手腕は信頼している」


国王はやっぱりニヤニヤとしている。

アンディの手はそのまま繋がれている。


「俺を優遇してくれ」


「ドロードラング規定内でなら」


「暴君!」


「今自分で言ったじゃないですか!」


「それはそれ!これはこれ!」


「どっちが暴君!?」


アンディは隣で遠い目をして、青龍はオロオロとしている。

付いて来た貴族たちは放心し、騎士団員は呆然としている。


学園長室を片した元学園長が様子を見に来るまで、私と王の言い合いは続いた。



助手って・・・私の学生生活はどこへいく・・・トホホ







お疲れさまでした。

ミシル編、一段落です。

長かったな…。余計なものがあったのですが、なかなか端折れない…

さーて、助手とか、どうしようかな…(~_~;)


また次回もお会いできますように。


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『贅沢三昧したいのです!【後日談!】』にて、

書籍1巻発売記念SSやってます。
― 新着の感想 ―
[良い点] サレスティアと王様の言い合いは楽しくて好きです。 まるでケンカ漫才をしてるみたい(笑)
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