全帝再び
固まる全帝、あーあと言いたげなクロムさん、お茶を飲むユーリ、三人を眺めるウチ。
何だろう、この状況。
とりあえず声をかけるか。
「やぁ、全帝。一ヶ月ぶりだね」
そう言いながら結界を部屋に張り、眼帯を外して神の姿になる。
それで硬直から解けて驚いていたが、すぐに無詠唱でアクアアローを放たれる。
防がれても他への被害は少ないからそれにしたのだろう。
魔力も質は高いし、圧縮したのか威力は普通のよりも高い。
ユーリはちらりとこちらを見るが、狙いがウチだと分かると説明してる間にクロムさんが出した茶菓子を食べ始める。
クロムさんはウチの前に立とうとするが。
「蓮は強い、この中で一番な」
ユーリの呟きと同時にアクアアローが跡形もなく消える。
消失属性は読んで字の如くな属性で、盾をイメージした魔法を無詠唱で発動して防いだのだ。
ついでに上着を着てる状態で創造、理由は察しろ。
上着は軍服のような黒いコートである。
「リト、お前はいきなり何を」
「マスター、この女は……」
ルベリドの森での出来事を話す全帝。
気にせずにお茶を飲む。
うん、完全に麦茶だな。
「めんどくさい…」
記憶属性を使って記憶をコピーする。
一ヶ月前、ウチが巻き込まれて召喚された瞬間からガランサスと契約するまでの知識と記憶。
ビー玉サイズのそれを二つ作ってクロムさんと全帝に投げる。
当たったそれは痛みに無言で悶える二人に吸収された。
記憶属性とは記憶を操る属性だ。
記憶をコピーしたり消したり、偽の記憶を植えたり、取り出したり他の人に見せたりと出来る。
なかなか恐ろしい属性である。
「神が……何であそこにいたのよ…しかも、私が攻撃したのがフェンリルなんて…………」
記憶を見たのか、四つん這いの体勢で落ち込む全帝。
再びオネエ口調となっている。
「あー……」
クロムさんはなんて声をかけようか考えているらしい。
ところでさ。
「いつになったらランクの話をするんですか?」
「あ……ごめんね」
ユーリとウチの言葉に謝るクロムさん。
未だにぶつぶつ呟きながら落ち込んでるのを放置し、話が始まる。
ただし、クロムさんがSにしようとしたがユーリがEを譲らないので話し合いの結果、何故かCとなっていた。
次はウチだが。
「レンちゃんはリト……全帝と試合をしてね」
「なんでさ」
「父さん、いきなり過ぎない?」
いつの間にか復活した全帝が言う。
しかもローブを脱いで。
かなりの美人系イケメンだ。
艶やかな黒髪は背の真ん中まで伸ばし、ポニーテールにしている。
瞳は星のような銀色で、顔立ちは女性的な美しさだ。
透き通るように白い肌。
白いワイシャツに黒いズボン、黒いジャケットというシンプルな服が似合う。
細身で身長は175くらいかな。
クロムさんはウチら二人の意見に笑みを浮かべると。
「実力を見たいから。そこからランクを決めたいんだ」
そう言われればなんとも言えなくなった。