説明
「それじゃあ二人とも、さっそく依頼を受けようか」
クロムさんにそう言われ、部屋を出る。
酒場の方に戻ると一斉に視線が集まる、ウチに。
うざったいので言霊を使おうとしたら、ユーリに止められた。
残念だ。
先に依頼が貼られた掲示板を見て……首を傾げた。
「どうした?……何でAランクとかの依頼を見てるんだ」
視線の先を見たのか不思議そうな声で言われる。
そこにある採取や討伐の依頼は、ちょうど持ってたりするのだ。
無言で何枚か取り、受付へと持っていく。
おい、とクロムさんに言われるが。
「ちょうど証拠品あるので受けます」
兄妹で同時に言い、無属性の初級魔法であるボックスを開く。
そこから帰らずの森にあった薬草や木の実、植物を先に渡す。
その時点でウチとユーリ以外が固まる。
気にせずに帰らずの森にいたドラゴン系などの心臓とかを出す。
こいつらは害を為す方の侵入者だったので、躊躇なく殺した。
「……Aランクを五、SSランクを十、Sランクを十二……!?」
何故か討伐系のを見て驚愕する受付の人。
採取系のも見て驚愕してる。
「……ちょっとマスター室に来てくれる?」
苦笑して受付の人、ウチ、ユーリを見ながら言うクロムさん。
頷いてから歩き出す彼についていく。
受付の人は他の人に頼んで代わってもらっていた。
クロムさんの入っていった部屋に続いて入る。
思っていたより、綺麗だった。
応接室も兼ねてるのか広めで、少し書斎のようになっている。
広さを例えるなら……一般家庭の居間くらいか。
勧められたソファにユーリと座る。
ソファは黒の革張りで三人掛け、真ん中にガラスのローテーブルを置いて向こう側にもソファがある。
それに受付の人が座り、クロムさんがお茶を入れてウチらの前に置く。
湯飲みに入ってるのは、どう見ても麦茶だった。
お茶を入れてるのが見えた受付の人は立ち上がりかけてたんだけど、クロムさんの少し威圧的な笑顔に座り直してた。
一口飲んだが、やはり麦茶だった。
「まずはアリサちゃんに説明かな」
そう言いながら受付の人、アリサさんに説明を始めるクロムさん。
ただし、ウチが異世界から来た神とは知らないらしい。
フローラさんがわざと教えなかったのだろうな……ここ来る前に、彼を信用したら話したら的な言い方もされたしね。
まぁ、裏切ったりしたら……殺せばいいだけだから、ね…。
「帰らずの森が出身でしたか……。だからあの魔物や薬草だったんですね。あ、これはギルドカードですがランクはまだです」
アリサさんは納得したらしい、優秀な受付だ。
差し出されたギルドカードを受け取る。
確かにランクはまだ書かれていない。
光沢をある程度抑えられた銀色のカードはハガキサイズで、文字などは横に書かれている。
切手を貼る部分を下側にし、そこに紅い石が嵌め込まれている。
検索すればカードはどの王国でも石以外が同じらしい。
さすがに所有者やギルド名は違うが。
石には微量の魔力を吸収して認識する力があり、それは受付と所有者の魔力を吸うらしい。
そうすることで、ランクなどの更新や盗難防止などが可能だと出た。
なかなか便利なカードだ。
「レンちゃん、ユーリ君、ギルドランクについて話したいんだけど時間、大丈夫?」
「大丈夫です」
「ギルド登録したら買い物だけなんで、大丈夫です」
「ん、ありがとう。アリサちゃん、俺は二人とギルドランクについて話し合うから受付に戻っても大丈夫だよ。ごめんね、仕事中に」
「大丈夫ですよ。お茶、美味しかったです。……失礼しました」
アリサさんは言いながら立ち上がり、無言で扉まで行くと礼をしてから部屋を出る。
その瞬間、クロムさんは真剣な表情になる。
違和感あるかな?
ちゃんと眼帯してるから、ほぼ人間と言える魔力量……ああ、魔力水晶のことか?
アリサさん、仕事に集中して忘れたっぽいし。
ウチも忘れてたけど。
「アリサちゃんから聞いた、魔力水晶がレンちゃんの魔力で溶けたと。…………君は、何者だ?」
とりあえず、最初から説明する。
ユーリ達にしたような説明を。
「つまり神か……納得…。でも、勇者召喚…しかも巻き込まれ…?」
なにやら難しい表情になったクロムさん。
何かを思い出してるような表情だ。
「クロムさん?」
ユーリが声をかける。
「もしかして…」
「ただいま、父さん。あの勇者ってなんとか出来ないかし…ら…」
何かを言いかけたクロムさんを遮り、全帝が現れた。
何故か、オネエのような口調で。
こっちを見て、驚愕しながら。