とある町で
勢いで書いた連載です。
更新スピードは気まぐれなのでまちまちかと。
とある町の食堂に、一人の人物が真ん中のテーブルに着いていた。
その人物は少女。
少女は周りの目を引く、愛らしい見た目をしている。
足首までの茶髪を左耳の上のところでお団子にして蓮を模した簪で留め、余った部分は下ろしている。
瞳は琥珀色で左目には眼帯をしている。
肌はぬけるように白く、幼さの残る愛らしい顔立ち。
140くらいの小柄な上に華奢。
白百合の花弁を銀の、葉や茎は緑の糸で刺繍された白いワンピースの上に淡い水色のカーディガンを羽織っている。
足元にはピンクの編み上げサンダル。
全体的に色素が薄い。
「わざわざ来て良かった……美味しい」
少女は嬉しそうに笑う。
それに周りの客は微笑ましい気持ちになる。
少女が食べているのは新鮮な魚介を使ったパスタ。
「この後は町を観光して、それから帰るんだっけ……?お兄ちゃんがうるさかったし」
その言葉を聞いて彼女が観光客だと、周りの客達は知った。
柔らかい雰囲気な彼女に癒され、中断しかけたそれぞれの食事を再開させる。
だから気づかなかった。
いつの間にか少女がいなくなり、彼女が食事するのに使われた皿が綺麗に空になっていたのを。
なお、きちんと代金は支払われていたらしい。
バナナと生クリーム、チョコという定番のものが入ったクレープを食べながら少女は路地裏に入る。
と、少女の後ろに二人の男が現れる。
「お嬢ちゃん、ここに何かあるのかな?」
「ここは危ないよ~?お兄さん達と行こうね~?」
にやにやと下卑た笑みを浮かべる男達。
それに少女は食堂での笑みは無く、無表情で彼らを見る。
クレープを一口かじって数回咀嚼して飲み込むと。
「君らの方がそこ、危ないよ」
「は?」
片方の男が不思議そうに呟いた瞬間、横から生暖かい液体がかかる。
ぬるりとし、鉄臭い。
それは血だった。
声にならない悲鳴を上げようとしていたが、頭の上半分が消える。
一拍遅れてから血が噴水のように溢れ、死体となったそれは倒れた。
それを見ても少女の表情は変わらない。
むしろ関心さえ無いようだ。
ぴちゃん…
出来た血溜まりを、いつの間にかいた青年が踏んでいる。
その青年に向かい、クレープを再びかじった少女は微笑んだ。
「お迎えありがとう、ガランサス」
「何をやってるんですか、蓮様」
青年――ガランサスはため息を吐き出し、少女――蓮を見た。
「お腹空いた、魚介類使ったパスタ食べたかった、クレープ食べたかった」
真顔で答える彼女にガランサスが頭を抱える。
蓮はクレープを食べ終え、彼を見上げる。
「帰ろう、ガランサス?」
「……ああ」
ガランサスは片手で蓮を自分の肘に座らせるように抱き上げる。
もう片手には血に濡れた剣を握っている。
転移魔法を展開し、二人は光に包まれる。
光が消えると、そこには死体しかいなかった。