07話 クラスとまんじゅう(仮)
ちょっと早足かな?
翌朝、俺達は商業都市コルスタンの城門に来ていた。
俺は1週間前の街でクレイトンから借りたお金(本人はあげると言っていたが恩人なので頑なに断った)で買った、着替え等の入った大きめのリュックを背負って降りた。
「大きいリュック買ったのはいいけど、そんなに物入れなかったな」
中には、着替え2日分しか入ってない。
理由は生活魔法が便利過ぎたためだ。
この一週間の間に小吉はクレイトンから旅の基本、野営や自炊、体を清潔に保つ魔法などを教わっていた。
まだ及第点とは行かないらしいが初期に比べれば大分マシになったはずだ。
「この街ならいろんな物が手に入るから必要なら揃えるといい!」
「そうだね、そうするよ」
現在小吉の装備は、クレイトンの小屋にあったお古の革の鎧…というよりは急所を守るようなプロテクターをつけている。
剣もお古のやつを研磨してもらってから何かの魔法をかけてもらっていた。
いつかお礼しないとな…。
「にしても凄い行列だね…」
「商業都市なだけにいろんな種族の商人達や、近くの村から物資調達の住民がくるからいつもこうだ。まぁ俺達には関係ないがな!ガハハハハ!着いてきな!」
そう言って行列じゃなくて違う門の方へ歩き出した。
「何か身分証明出来る物をご提示下さい!」
ビシッ!と音のしそうなくらい丁寧に門番が問いかける。
「ほらよ」
そう言ってクレイトンは自分のステータスプレートを見せた。
「クレイトン様ですね。お連れの方の身分証明は結構ですので、どうぞお通り下さい! 」
やけにあっさり通してもらう事ができた。
行列には冒険者と思わしき人々もいるので冒険者が特別という訳ではなく、クレイトンが偉いのか?
「クレイトンって何者なの?実は凄い人!?」
「クレイトン様の事をご存知ないので?クレイトン様はかつてランクSの冒険者だったのですがーー」
「あんまり人の情報ペラペラ喋るな!昔しくって、ランク下げられただけだ!気にするな!」
「は、はい!大変失礼しました!」
実は凄いんだなと思った…。
ちなみに、ランクはこうなっている。
G 資格剥奪
F 登録時
E 初心者
D 初心者卒
C 中堅
B 上級
A 特級
S 戦術級
Sは戦争等で投入するだけで戦術として使える実力の持ち主だとか。
クレイトンはなんであんな森でハンターなんかやってたんだ?
無事門を通り抜けてから、俺はここから自分で行くと提案したが、クレイトンは「折角だからお前のクラス見てから行くぞ!」と言ったのでクラスギルドと言う場所に案内してもらった。
入るとイメージしていたギルドとは違い、かなり綺麗な内装で白っぽい木の床と壁、カウンターは綺麗に加工された石で出来ていた。
こちらに気がついた受付の額から角の生えた可愛げのある女性が声をかけてきた。
「こんにちは。クラスギルド、コルスタン支部へようこそ。本日はどんなご用で?」
「ちょっと連れのクラス適正を調べてもらってほしいんだが大丈夫か?」
「はい、分かりました。ではステータスプレートをご提示下さい」
俺は言われた通りにステータスプレートを机の上に置いた。
「あれ?相当お強いんですね!」
「それがこいつ、素質はあるんだが何故か技術がからっきしなんだよ!だからまだまだランクDでいいと思うぞ!」
前の街の冒険者ギルドではクラスが無かったこともありランク付けは見送ってもらったのだ。
「何はともあれ、早くクラスを調べて見ましょう!ちょっと仕事を忘れてワクワクしてきましたよ!」
最初のような落ち着いた雰囲気が無くなってきている。
これが彼女の素なのだろう…。
「ではこちらの部屋へどうぞ!」
そうやって通された部屋は真ん中に魔法陣が描かれた割と狭い部屋だった。
「では、魔法陣の真ん中にお立ち下さい。後はこちらでやりますのでリラックスしてください」
言われた通りに真ん中に立つ。
あぁ…。なんかワクワクしてきた。
「では、今から始めますね!」
言うのと同時に魔法陣が輝き、回り始めた。
「はい、おしまいです!お疲れ様でした!」
あれ?早!?なんか明らかに起動中みたいな感じだったぞ!?
「結果はですね…魔物使い…ですね」
「お?結構少ないやつじゃないか!よかったな小吉!俺はてっきり魔法系の職が出ると思ったぞ」
「ま、魔物使いですか?」
「はい、魔物使いです。えぇ、魔物使いとは魔物と契約し、使役して戦う戦闘職です。一部の場所以外に住む魔物を使役できてますが、どれだけ使役できるかは個人の素質や力量によります」
おお!なんだか面白そうだな!
「補正に関しては、本人に対しては少ないですが、使役している魔物に対してはその分大きく補正が入ります」
「魔物使いになる連中は、他の人よりも生き物に懐かれやすいと聞くぞ!」
「へぇ。俺、動物とかは好きだからそれでいこうと思います!」
「分かりました!では、ステータスプレートをお返ししますね」
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名前:大森 小吉 17(19)
クラス:魔物使い
Rank:D+
生存魔力:6297
自由魔力:3045
筋力:63
体力:50
素早さ:97+10
知性:94+10
抵抗:134+20
~スキル~
・コール
使役した魔物を自身の近くに呼び出す。
・解放
使役している魔物との契約を解除する。
・契約の瞳
目を合わせた魔物と契約できる。
・アナリシス(魔物)
魔物のステータスが視認出来る。
相手の方が強い場合、部分的にしか見ることが出来ない。
・全力の歯車
使役している魔物のステータスを大幅に上げる。効果は掛けた魔物が多い程高くなる。
~ユニークスキル~
・理解者の理 Lv1
生き物の意思が分かりやすくなる。
又、自身の考え、知識を共有することが出来る。
・魔召喚
自身の自由魔力を全て使い、魔物を召喚する。
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なんか変なの増えてる…。
動物と意思疎通が出来るって事?
なんかありがたいな!
「恐らくクラスが加わった事によりスキルが発現したと思います。スキルの方はそのクラス固有の物です。もしかしたら無いかもしれませんが、ユニークスキルというのもあり、個人の人格や経験等から発現するスキルであまりにも多く、全てを確認出来ていません」
「なんか、理解者の理っていうユニークスキルと変なのがあるんですけど…」
「おぉ!なんか頭良さそうなスキルだな!見た目の割に!ガハハハハ!」
「実際頭いいわ!クレイトンよりわ!」
しばらく2人でアホさを露見しているとそこに控えめな声が聞こえた。
「あ、あのぉ…。そろそろ話しを元に戻していいですか?」
「「あぁ、スマンスマン(ゴメンゴメン)」」
その後は各ギルドの説明や、他のクラスの説明を聞いた。
何より金が無い今、安くて安全な宿を紹介してもらった。
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現在、宿の予約等の用事が済んだ為ちょっと早い昼食の真っ最中である。
クレイトンは豪華な3キロくらいの見ただけでお腹いっぱいになりそうなステーキを食べている。
自分は少し硬いパンをスープに付けて食べている。
「で、これから小吉はどうするんだ?」
「とりあえず金を稼ぐ事にするよ。今の手持ちじゃ大分心許ないからね」
と言いつつ手持ちの金をチェックする。
この世界の金のシステムは貨幣で、下から
銅貨 100円
銀貨 1000円
金貨 10000円
翠貨 100000円
白貨 10000000円
黒貨 1000000000円
という感じの基準になっている。
白貨と黒貨は国家間の取引等に利用されるのでお目にかかる事はまずない。
で、手持ちは……銀貨2枚と銅貨6枚だな…。
ちなみに、宿は2食付きの宿が銀貨2枚である。
今回泊まる所は1日1食付きの宿で、銀貨1枚だ。
「そうか、頑張って稼げよ!俺はもう行くからなんかあったら連絡しろよ!」
そう言って立ち上がったクレイトン…。
ん!?あれだけあったステーキどこいった!?食うの早!?
「あ…あぁ。何から何まで本当にありがとな!」
クレイトンは後ろ手で手を振りながら店を出ていった。
俺もパンを口に詰め込み、スープで流し込んで店を出た。
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今、俺は街を出て近くの森に来ている。
もちろん、冒険者ギルドで仕事をもらってきた。
仕事内容はキャタピラーという魔物の討伐&素材納品だ。
キャタピラーは森に住んでいる体長1m程の大型の芋虫で動きはとても鈍く、口から粘着質の糸を吐き出すらしい。言わば初心者用の仕事だ。
ただ、先にやりたいことがあった為ちょっと広い開けた場所へ来ている。
「ここなら丁度いいな」
ここでポケットから液体の入った小さな瓶を取り出した。さっき買った魔力を回復する薬だ。
深呼吸をして集中する…。
使いたいスキルの詠唱が頭に浮かんできた。
「魔力の奔流よ、今ここに集い、我の下僕たる形を成せ!魔召喚!」
スキルの発動と同時に物凄い勢いで力が抜けるのを感じ、夜の海で孤立した様な底知れない恐怖感に襲われた!
薬がある事も忘れていて震えていたが、滑り落ちた瓶の音で我に返り、急いで薬を飲んだ!
自由魔力が底を尽くと本能的に体の危険を感じると頭にあったので買っておいたのが功を奏した。
魔法陣がゆっくりと形成されて……多層魔法陣と呼ばれる物が完成し、複雑に動き出した!
ペッ!
そして変な音を出しながら上に何か吐き出した魔法陣は、跡形もなく崩れた…。
………えっ?…だけ?
プニ!
「うぎゃぁ!」
頭に何かが落ちてきて、驚きのあまりについつい払い落としてしまったものをみた。
ぷよんぷよん
水ようかんみたいな透明感で、綺麗なまんじゅうの様な形の、拳4つ分程の大きさのぷにぷにがある。
ぷよん!
うわっ!動いた!?
ん?これ怒ってるのか?
まんじゅうからは理不尽な事に怒ってるような「意思」が感じられた。
その後は喜びのような「意思」とワクワクしてるような「意思」が感じられた…。
もしかして…!
「アナリシス!」
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名前:まんじゅう(仮)
クラス:クリスタルスライム
主人:大森 小吉
生存魔力:16058
自由魔力:6519
筋力:104
体力:98
素早さ:169
知性:6
抵抗:71
~スキル~
・捕食
対象を捕食する。
・弾力変化
弾力を変える事ができる。
・硬質変化
固くなったり柔らかくなることができる。
・自己再生
自身の失われた体を再生する。
ただし元の状態以上にはならない。
~ユニークスキル~
・メタモルフォーゼ
姿形を変える事が出来る。
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やはり使役しているモンスターだ!
驚く事に俺の魔力の2倍近くの魔力を持っている!
ステータスも知性以外高いが……残念ながら見た目からは強そうに見えない…。
マスコットみたいな見た目だし…。
あと、まんじゅう(仮)って…確かに最初にそう思ったけど…なんかゴメン…。
最初は心なしか、胸を張っているような態度で、威張るような、見せびらかすような意思を示した。
そして最後の名前の部分で落ち込んだ…。
ようやく冒険の始まりですよ!
※誤字の改善
(2014/8/28)