05話 異世界に放り出されて…
途中で章の管理についてあたふたしながら試行錯誤してました(^_^;)
クケケケケケ!
ガルルルルル!
鬱蒼と繁る森の中の木漏れ日の下で謎の動物がいがみあっている。
前者は橙の羽毛に黒い羽毛のまだら模様で、鶏冠のある体長1m程の凶悪そうな顔付きの鶏。
後者は全身を黒い煤けた毛皮に覆われて口から火が漏れているオオカミ。
ガアァァ!
突如オオカミが鶏に飛びかかった。静から動への切り替えが唐突で、慣れた者でなければ、決して避ける事は叶わないだろう。
クコッ!
鶏は避ける事はせずに頭を下げてタイミングを合わせて盛大に振り抜いた。
ゴキィっ!!
普段生活していれば聞くことはないだろうやばい音がして、オオカミの首が有り得ない方向へ曲がり、飛ばされてから数回痙攣し、動かなくなった。
恐らく息絶えたのだろう。
その様子を草場の影から小吉は見ていた…。
なんだここ…最初からveryhardなんですけど…。
なんて考えているとお食事中のヤクザ鶏さんと目が合った。
無言で見つめ合う2人?…。
脳がフル回転し導き出された答えは…。
逃ぃげるんだよー!!
全速力で反対方向にダッシュした!
やっぱりスライムとか弱っちいのを相手に練習するべきだったと盛大に後悔しながら後ろをチラ見してさらに後悔した。
コケエェェ!!
物凄い目付きでロックオンされてる…。
しかも距離は広がらない上に足をとられて、いつ転ぶかなんて分かったもんではない。
「うわぁ!追ってきてる!」
当たり前だ、ここは弱肉強食の魔物のテリトリーなのだから…。
「も、森を出なきゃ…!」
足をとられてないように細心の注意を払いながら走る小吉。
と、地響きが聞こえる気がする…。
ズン!ズン!ズン!ズン!
ギァガァァ!!
なんかトレインしてる!?
またもや後ろをチラ見して後悔した…。
「なっ!?」
なんかティラノサウルスみたいなイメージのデカイ化け物がいた…。
ティラノサウルスモドキは大きくて、牙が鮫のように多重構造になっている口を開けると足元の鶏をパクっ!と一口で平らげた…。
食事に夢中な今のうちに死角になっている木の洞に飛び込んだ!
…………ズン!ズン!ズン!
ヤバイ…近づいて来てる!
てか、足みえてる!
…………ズン!ズン!ズン!ズン!
……
………
良かった…帰ってったようだ…。
とりあえず慎重に洞から顔をだして、周りを警戒し、何もいない事を確認してから安堵の息を漏らした。
「ふぅ…。」
とにかく、まずはこの森を抜ける事と戦いを覚えるのが先決だな!
さっきは生き延びる事を最優先に動いていた為気がつかなかったが、走るスピードと集中している時の体の動きは前の世界のソレを遥かに凌ぐものだったのを思い出した。
なるほど!と思い小吉はバルトからの体についての説明を思い出していた。
「特注するに当たって、小吉さんの魂に完全に馴染むように作りますので、格段に動きが良くなります。具体的には通常の人の3~4倍程です。さらに前の世界になかった魔力の使い方を覚えれば、さらにそこから10倍くらいの力が出せるようになります。」
つまり俺がこの世界の人と同じ条件で戦ったとき、相手の4分の1~3分の1の力があればいい事になる。
ただ、元が分からない今、過信は禁物である。
「今出来る事といっても限られてくるからな…。魔力の使い方なんて練習出来なかったからな…。」
実は体の作成中に魔力はどんな風に扱うのか、等を聞いていたのだが、前の世界の魂のままなので魔力は全く使えなくて、簡単だから現地で覚えればいいと言われた…。
ただ、ある程度の説明は受けている。
魔力には「生存魔力」と「自由魔力」があり、前者は字の如く生きるために必要な魔力であると同時に、強さの基準ともなる魔力である。もちろん消費して使う事はできるが文字通り命を削るので使う人はまずいない。
後者は自由に使っても問題ない魔力で、言わばMPの様なものである。休憩したり、寝たりすれば自然と元に戻るのである。
そしてそれを使った魔法やスキル等にも分類があり、「既存魔法」と「想像魔法」と「身体強化」があり、「既存魔法」は詠唱したりして発動するもので消費する魔力は少なくコストに優れている分応用が聞かない。
「想像魔法」は、使う人の想像力に左右されて扱いにくい上に消費魔力が著しく高い。だがその分効果は既存魔法よりも良くなる傾向にあるし、想像したものを現実で起こすため応用がとても広い。中堅どころの魔術師が使っても1回で生命の危機に陥るため殆ど使われる事はない。
「身体強化」は魔力を使って筋力や瞬発力を上げる事である。一番オーソドックスではあるが、これは経験や素質等に左右されやすい為上手く使える人材はとても重宝されるらしい。魔物等は本能的に防御や攻撃に使うらしい。
「身体強化さえ出来ればいいんだがなぁ…。試してみるか…」
早速思いっきり力を入れたり、何かを感じとってみようと試みるも何も起こらなかった。
もしかして才能がない!?何て思って落ち込んだが出来る人に聞こうと気を取り直した。
「というかここはどこだよ?もっといい所沢山あったろ!?とりあえず高いところから見てみるか…」
元よりも高い身体能力のおかげで難なく気の上に登る事に成功した小吉は遠くに森が2つに分断されている所を見つけ、街道ではないか?と予想をつけた。
「良かった…。なんとかなりそうだ…。あそこまでは2キロって所か?身を守る物がいるな…」
そう言って小吉は自分の持ち物等をチェックする。
薄手のTシャツに、前にチャック、後ろにフードのついた上着、元からゆったりとした格好が好きなので大分余裕のある大きめのポケットがついた長ズボンという格好だ。色は地味な色で、モテそうにない感じだ。ただ、今においてそれは好都合で、隠れやすい色合いになっている。
ズボンのポケットには割れたスマホと財布、胸ポケットには坂口から貰ったインクのないボールペンがある。
「流石にこれはマズイな…。何か武器になる物でも………。あっ!そうだ!」
そう言って地面に降り、近くの手頃な木の枝(直径10cm長さ1mくらいの手にしっくりはまる真っ直ぐな枝)を掴み、折れなないか試した。
「なんだこれ!?無茶苦茶硬い!?」
折るのは諦めて、近くの石を割って鋭くなった角を使って叩いた。
ようやく折れた棒を石を使い先端を軽く整えて、
「まぁ無いよりかマシだろ。」
自分に言い聞かせるように呟いて街道?の方え歩き出した。
途中何度かヤクザ鶏やデカイ蜂、紫の歩くキノコに遭遇したが、なんとかやり過ごす事が出来た。
だが今、目の前にはさっきのオオカミがいる…。
オオカミは何か異変を感じたようで、鼻をひくつかせてこちらに近寄ってきている!
そして不意に立ち止まったオオカミは……いきなり走り出した!
「!?」
慌てて走ろうとするも、トップスピードに達したオオカミに追いつかれ…飛びついてきた!
「くッ!」
喉笛を狙ってきたようで、咄嗟に棒を両手で掴み、手と手の間の部分でガードした!
ガルルル!グルゥ!ガルゥ!
オオカミは突如口に押し込まれた棒を噛み切ろうとしている!
…!?やばい!このままでは棒が負ける!
咄嗟に右側へ受け流し、棒の左側で頬の辺りを殴りつけた。
「うらぁぁ!!」
僅かに怯んだ隙をついて腹を思いっきり蹴り飛ばした。
その隙に立ち上がり棒を構えなおす。
内臓にダメージが入ったのか少し動きが鈍くなっている。
「せいっ!」
棒を振りかぶり、遠心力がのった先で頭を殴りつけた!
ガッ!
クリーンヒットしたらしく、脳震盪でも起こしたのかオオカミは倒れた。
ただ、まだ息はあるようでトドメを刺すには至らなかったようだ…。
相手を苦しませない為にもトドメを刺そうと近づき振りかぶった…瞬間!
ガルルル!ドン!
横からもう一匹の新手が来て突進をかましてきた!!
その衝撃で棒は飛んでってしまった!
「なっ!?」
咄嗟の判断でオオカミの口を両手で押さえ付けた!
オオカミも必死で振り解こうともがいているがこっちもかなり必死である。
その時…
「伏せろ!」
ヒュッ!…ド!ド!ド!
オオカミの首と体に矢のような物が刺さっていた…。
「大丈夫か!?あんた!?遠くから声が聴こえたから来てみれば…丸腰じゃないか!?しかも見ない服装だな?」
助けてくれたと思われる人物は、いい感じのヒゲを生やした30代後輩と思われるおっちゃんだった。体格はデカイ方で、軽さを重視したような軽装備に、腰に剣を挿し、右手には弓が握られている。
「えっ?いや…これには色んな事情が……。とりあえず助かりました。ありがとうございます。」
そう言って棒を回収した。
「いや、礼には及ばんよ。誰かが危ない時は助けるもんだろ?」
常識等は、体を作った時に入れてもらったので分からない事もないがとりあえず情報を頂きたいし、上手くいけば近くの街まで連れてってくれるかも。
「俺はクレイトン、ランクB-のハンターだ!所で、あんた名前は?なぜそんな格好でこんな危ない所にいるんだ?」
「名前は小吉です。田舎から出てきた者で冒険者としての登録をしに行く途中で迷ってしまいました…。あと、俺の住んでた場所では着るものに関しては異常に発達してるから少し新鮮かもしれませんね」
「こんな上質な服装の村があるんだなぁ…。流通させたら飛ぶように売れると思うぞ!」
「褒めてもらうのは嬉しいですけどあんまり技術を外に出したがらないんで無理だと思いますよ…。」
出したがらないんじゃなくて、出せないんだけどな(笑)
「そうか…それは残念だ。んで、あんたこれからどうするんだ?街まで行くなら俺が護衛ついでに送ってやろう!ただ少し荷物運びを手伝ってもらうが」
その言葉を待ってました!
「いいんですか!?是非お願いします!」
「そうか!じゃあそうと決まれば近くにある俺の猟師小屋までいくぞ!」
「はい!宜しくお願いします、クレイトンさん!」
良かった…これで安全に街までいける。
安堵でほっと胸を撫で下ろす小吉だった…。
次回ようやく職業とかスキルとかの説明ができます!