02話 アホ神様とテンプレ世界 01
くどいかなとか思ったり思わなかったり。
「ちょ……起……よ」
「もしもしー、起きてる?」
「ん?んん…」
目を覚ますとそこは知らない天井…ではなく見慣れない黒髪の割と綺麗な年上っぽそうな女性がいた。
「へ!?」
「ん?」
思わずビックリして変な声がでてしまった。
とりあえず落ち着こうと冷静になって1番新しい記憶から整理していく。
「確か…急いでて…撥ねられて…!?」
「撥ねられた?(ビクッ)」
そこで自分が撥ねられて意識が飛んだのを思い出した。
ただ不思議な事にどこも痛くも痒くもない。
体を見てみようと起こしてから…唖然とした。
「なんなんだよここは!?」
「もしもーし?無視しないでー、寂しくて死んじゃうよー?」
謎の黒髪が話しかけてきてるがそんなことはどうでもいいくらいに唖然とした。
なぜなら周りは白色一色の何も無い空間が広がっており、かろうじて影があるので床が認識できる程度である。
「おーい、返事してよ……やばい久しぶりの人間に無視されて涙が出てきた」
とりあえずここにいるという事は何かしら知ってる人であろうと思いつつ、心の中ではあまり関わりたくないと感じながらも情報を集める事にした。
「ここ…どこ?」
「はへ?」
あまりの動揺に思わず高圧的な感じの言葉になってしまった。そして声を掛けられた方は声を掛けられた事に逆にびっくりしていた。
「ああ、ごめん、ここはどこだか教えて欲しいなぁって。」
「ここですか?ここは簡単に言えば現世とあの世の中間地点とでも考えて下さい。所で、色々と謝る事とかあるのですがとりあえず名前教えてもらっていいですか?」
「ちょっと待て!あの世って俺は死んだのか!?」
「その件も含めて謝りたいことがあるのでとりあえず名-」
「のわぁー!なんてこった!今日は坂口とペットショップ行く予定だったのにー!」
「あのー…」
「何!?」
「名前…」
あまりに唐突な悲劇に(個人にとって)思わず悲鳴じみたものが漏れてしまっていたようだ。
「あぁ…ごめん話し遮っちゃって、で、名前だっけ?俺は大森 小吉って名前、君は?」
「へぇー、小吉君ですか。私の名前は………です。」
「?なんて名前だって?」
「あ!忘れてました!人間さんには神の情報は理解が出来ないんでした!」
てへぺろ!みたいな感じで言ってきた。ただ物凄いムカついただけだった。
ん?今こいつ神って言ってなかったか?
「神?君が?」
「はい!神です!………といいます。」
「なんか頭痛くなってきた…」
「大丈夫です!この空間では体調は万全に保たれます!」
「違う…気持ちの問題…」
あかん、こいつアホだ…。とりあえず聞くこと聞いて早く終わらせよう。
「まぁ神だとかどうとかは置いといて、なんで死んだの?あの運転手に助けてもらったと思うんだが…」
「あぁ…そのことなんですけど……大変申し訳ありません!私がやりました!」
なんの脈絡もなくなんかいきなり自首してきた!?てかどういう事!?もしかして俺撥ね飛ばしたのこいつ!?
「……なんかよくわからんから1つずつ順を追って説明して」
「はい…まず私がアマ○ンで初回限定版のゲームを注文します。」
「ゲームって…」
「家が神社なので流石に届けてもらうのはまずくてコンビニ受け取りにしました。」
「神社って…コンビニって…」
「で、昨日は訳あって取りに行けなくて、今日の朝一番に取りに行こうと思ったら寝坊してて…」
「こんなアホと一緒の行動って…」
「でさっきコンビニで受け取ってあまりにも早くやりたいが為に大急ぎで帰ってる途中で…撥ねてしまって……っは!でも!赤で飛び出す小吉さんが悪いんですよ!」
「そこに気がつくとは鋭いな。だけど救急車とか呼んでくれたんだろ?」
「あの…そのことなんですが………逃げました…」
「は?」
「凄く怖くなって逃げてしまいましたぁ!うわぁーん!」
なんか泣き出したぞ!しかも轢き逃げじゃないですかヤダー!負傷者救護義務違反じゃないですか!?
「一応7分くらい後に冷静になって戻ってきてみたんですけどすでにご臨終でした…ですがこのことが他の神にバレたら神の資格が剥奪されちゃうかもしれないんです!」
「知るか!平日の昼間からゲームのために轢き逃げしたニート神様なんか居なくなっちまえー!」
「そんな事言わずに話しだけでも聞いてくださいぃ!」
「知らんわ!帰る!レポート出して坂口とペットショップ行くんだよ!」
こんなアホらしいことなんかやってられん!俺は帰るぞ!そう憤慨しつつどことなく歩き出した。だがアホ神は足に捕まってズルズルと引っ張られている。
「どこ行くんですか!歩いても意味ないですしもう戻れませんよ!」
体がピシッっと硬直したのを感じた…
「戻れないってどういうことかなぁ…?」
「ヒッ!?あの、怒らないで下さい?」
「オコッテナイヨ」
「怒ってるじゃないですかー!?」
「ハヤクオシエロ!」
「はいぃ!(ビシッ)小吉さんの肉体は壊れてしまい、魂を入れる器が無いんです…なので完全に戻る事が出来ません…」
「なっ!?あんた神様だろ!?なんかこう魔法的なのないの!?」
「そういうのはもっと格が上の神しか出来ないんです!私みたいな下っ端はせいぜい豊作にするとか雨雲作るとかしか出来ないんです!」
「終わった…人生詰んだ…」
「その辺りは安心して下さい!私に任せて下さい!」
「お前だから安心できないわ!」
話してる中でどんどん信頼度がジェットコースター並に急降下してるのでもう任せたくない感がハンパじゃない。
「記憶を引き継いでの転生が可能です!」
その声が掛かるまでは…
「詳しく!」
「今の魂をリセットせずに別の世界でもう一度人生ができるようにします!」
おお!これって俗に言う異世界でチート的なので無双ってやつではないですかな!?どうせ何も出来ないなら食いついてやろうではないか!
「ちなみにどんな世界でやり直せるんだ?ていうかそれが出来るならもう一回同じ世界でやり直しとかできるんじゃないのか?」
「それは出来ません。同じ世界に短時間で複数回入ってしまうと魂が消滅してしまいます。もし入りたいならあと500年程待ってもらう必要がありますよ?ちなみに私は話し相手が出来るので大賛成です!」
「500年お前の相手!?それは嫌だな…」
「さり気なく恨んでますね?他の世界にならすぐに入れると思いますよ?そうですね…今の世界から約40000年くらい先まで発達した文明の世界とかその逆とか…魔法がある世界とかもありますよ?」
「魔法……それだよ!それ!剣と魔法と魔物の世界!」
「流石この世界の人ですね…迷わず選んできましたよ…」
「スキルとかレベルとか職業とかギルドとかある世界がいい!」
「欲張りですねぇ…死んだとき天国行けませんよ?」
「轢き逃げ…負傷者救護義務違反…資格剥奪…」
「全力でサポートする所存であります!」
「よろしい!で、具体的にどうするの?」
「はい!それは私のコネを使って別の世界の神様に交渉します!あてならもうビックリするくらいありますよ!」
コネそんなにあるの?こいつ下っ端だよな?大丈夫か?
「ま、まぁなんとかしてくれれば黙っといてやろう」
「はい!頑張ります!保身の為に…」
おい…最後悪い顔してたぞ…こういうのが居るから世の中良くならないのではないか?あっ…もう関係ないか………そう思ったらなんか悲しくなってきた…
「なぁ…」
「なんですか?」
「最後の別れって出来ないか?」
「出来ますよ」
何当たり前の事言ってんのみたいな顔でこっちみてる…殴りたい…
「ちょ!そんなグーで振りかぶらないで下さい!暴力反対です!」
全速力で轢いたやつが何を言う!と思ったが自分も悪いので自重した。
「とにかくお別れしたいのでしたら4人まででお願いしますよ」
「固定されるんかい!?超簡単に出来ますよみたいな事言って縛るんかい!?ま、まぁいいや、順番に行くか…」
「では誰から行きます?親ですか?おじいちゃんかおばあちゃんですか?」
「じいちゃんとばあちゃんはもういないから…親には先立つ不幸をお許し下さい、他の世界で元気にやりますって言っといて…」
「随分と淡白ですねぇ…まぁいいですけど。他にはあります?」
もうこれはあいつしかない!自慢しまくってやるぞ!
「じゃあ坂口に頼む」
「分かりました!坂口さんですね!」
そう言っていきなり飛ばされた。
異世界に飛ぶまでもうちょいかかるかも…