10話 テイマーズギルド
そろそろ冒険したい…
ちょっと短いかもしれません…。
俺達が次の目的地に選んだのはテイマーズギルドだ。
テイマーズギルドというのは、魔物使いや精霊使い、死霊使い等の何かを使役して戦う職業の為の特殊なギルドだ。
「こんにちはー。新しく魔物使いになった者ですがーーー」
「なんでよ!?そんなに金が大事なの!?もういい!アンタ達を頼った私が馬鹿だった!…あんたそこどいて、通れない」
大きめのフードからはみ出てる薄い緑の長髪と綺麗に整った顔が特徴の軽装備の女性がこちらへ来てドンッ!と突き飛ばしてきた。
(にゅ!?)
まだ頭の上で惰眠を貪っていたまんじゅう形態のマニが驚きの意識を上げた。
なんだあれ?地味に力強かったんだけど…。
「君!大丈夫か?すまないね…彼女、ここ最近事情があってちょっと情緒不安定になっているんだ」
駆け寄ってきた若く黒髪の男性の手を借りて起き上がった。
マニの方は駆け寄ってきた別の女性に回収されていた。
「初めて入った所でこんな手厳しい洗練受けるのは初めてですよ」
冗談混じりに笑いながら言った。
「きゃ!」
ん?マニを抱えてた女性が小さく悲鳴を上げた。
「もう!なんなんですか!?あの女性は!?人の快眠を邪魔するなんて非常識も甚だしいですよ!」
うん、お前、人じゃないからな。
「あれ!?精霊!?さっきまでスライムだったのに…」
女性が困惑の声を上げる。
「あぁ、マニはスライムだよ。スキルで姿が変わるだけ」
「おっ!凄いな!これはいい人材を見つけたかもしれないな!俺はサルナル。よろしくな!」
サルナルさんはこちらに握手を求めてきた。
「あっ、丁寧にどうも。俺は小吉です。以後、よろしく」
俺もそれに応えてあげる。
「私はミツルです。よろしくおねがいしますね。あと、マニちゃんもよろしくね!」
「はい!ウチのダメダメなご主人様がお世話になります!どうかよろしくおねがいします!」
おい待て、保護者は俺だぞ。
「何はともあれ、こんな所で立ち話もなんだ。こっちで話そうか」
そう言われたので、サルナルさんについていって近くの椅子に腰掛けた。
マニは相変わらずミツルさんに抱き抱えられている。
「さっきは簡単な自己紹介しか出来なかったから、もう1度きちんと自己紹介するよ。俺はサルナル・フロント。ランクBの魔物使いだ。」
「私はミツル・プライムです。ランクB+の精霊使いです。」
サルナルさんはオールバックの髪に快活とした印象が特徴で、ミツルさんはクリーム色の髪におっとりとした目、大きい胸が特徴の美人な人だ。
ミツルさんの方がランク高いんだ…。
「丁寧にどうも、俺は大森 小吉。あっ!小吉の方が名前だからね。」
「名前が後の文化は聞いたことがないな…。」
「私は知ってますよ。場所は分かりませんが、そういう国の出身者が知り合いにいますよ」
いわゆる東の国的なやつだろうか?
いずれ行ってみたいな。
「そうなのか?まぁ、世界は広いんだからそういうのもあるんだろうな…。それはそうと、今日はどんな用で来たんだ?」
「はい、同じ魔物使いとして先輩からアドバイスとかを教えて貰おうかと思ったからきました。あと、マニの攻撃が体当たりしか無いので他にバリエーションが増やせればと思ってます」
「そうか、分かった。喜んで引き受けよう!魔物使いは数が非常に少ないからな。教えるなら俺が適任だろう!」
「なら、マニちゃんは私がどうにかするわ!さっ!行きましょ!マニちゃん!」
そう言うとミツルさんはスタタタと走って行ってしまった。
…マニのやつ大丈夫か?
その後、俺はサルナルさんから色んな情報をもらった。
例えば、迷宮という場所(正確には迷宮という名のモンスターらしい)のモンスターは契約が出来ない事。
契約した魔物は魔物を倒す他に、主人の魔力を貰い強くなっていく事。
魔物使いが使う事でより効果が期待できる既存魔法。
魔物に対する薬や毒。
等を教えてもらった。
「…なるほど。大分参考になりました。やはり来て正解でした、ありがとうございます」
「いや、例には及ばんよ。これからも時たまでいいから顔を出してくれよ!なんせ、この街に魔物使いは数える程しかいないからな!」
わははは、と笑うサルナルさん。
……要するに寂しいんだな…。
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一方別れたマニ達はギルド裏手の大きい広場に来ていた…
「ひゃ!どこ触ってるんですか!?ミツルさん!」
「じっとしてて…マニちゃん小さいんだからこうしないと魔法の適性が分からないの…」
ミツルの胸に体がすっぽり入る形でマニは抱きしめられていた…。
なんと言うか…とても百合百合しい光景になっていた…。
「むぐ!…ぷはぁ!胸がデカイ人なんか滅んでしまえばいいのです!」
「おかげであなたの適性が分かったわよ。あなたは大体の魔法は使えるけど、水と土と闇が特に強いわ。私は闇に関しては分からないから水と土を教えてあげる」
この世界には火、水、土、風、光、闇、聖の魔法が既存魔法として残っている。その中でも闇を扱える者は飛び抜けて珍しく、希少価値は高い。
…
……
………
「マニちゃんは飲み込みがいいわね。私も楽が出来て嬉しいわ。それに適性以上の効果ねこれなら上級魔法も余裕で使えるんじゃない?」
「試してみますね。吹雪まといし龍の爪よ、その化身を現し、我が敵を砕け、ブリザードランス!」
虚空に6本の氷の槍が形成され、前方に作っておいた、高さ8m横幅10m奥行15mとかなり大きめの土の山に向かって発射された。
ドドドドドドン!
盛大に土飛沫を巻き上げて山が粉砕された。
「……あまり普通の魔物には使わないでね」
「はい…気をつけます」
こうして魔法特訓は終了した…。
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「にしてもマニ達遅いですね…」
「そうだな…ただ、どこいったか分からない以上行き違いにならないようにここに居るのがいいと思うがな。こんな暇ならどこに行くかくらい聞いとけばよかったよ…」
「いや、結構強引に行ったからあのタイミングで聞けるとは思えませんけどね」
「確かにそうだな…。ミツルの奴はたまに物凄く頑固になるからな……帰ってきたら一言文句言っーーー」
ドドドドドドン!
「な!?何事だ!」
「建物の近くからじゃないですか!?」
「音と揺れからみて広場の方だ!確認に行くぞ!」
…
……
………
「…!ミツル!何が起きた!?」
「ちょっとマニちゃんに魔法を教えてたのですが、威力が強すぎてしまって…」
「馬鹿!そんくらいセーブしとけよ!」
「私じゃないわ。マニちゃんよ」
えっ!?何!?マニがやったの!?
「すみません…私がやりました…」
「マニちゃんは悪くないわ。誰も初めて撃った魔法があんな威力だなんて思わないもの」
「でも…」
「それよりもあなたの大好きなご主人様の役に立てる事を喜ぶべきじゃない?」
「そうですね…よし!ありがとうございました!師匠!」
勢い良く頭を下げたマニ。
綺麗な斜め45°である…。
「うむ!免許皆伝である!今後も怠けずに励むのだぞ!」
えへん!と胸を張るミツルさん。
…眼福である。
大分シュールな光景だ。
…
……
………
「なぁ小吉…」
「何ですか…?」
「戻って飯食いに行こうぜ…」
「いいですよ。なんかこの辺で美味い店紹介してくださいよ…」
その後、何故か居場所を特定された俺達は置いて行った事をそれぞれ叱られた。
その結果、俺達にはなんとも言えない友情が芽生える事となる。
((てか、俺ら悪くなくね?))
マニを攫って行った時のミツル。
シュタタタタ!
(きゃー!マニちゃんと二人っきりぃ!ひゃー!)
サルナル(そう言えばあいつ可愛いものに目が無いんだった…)
次回から冒険に入りますよ!




