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総出撃

 リナたちが反重力システムを起動してから間も無く四分経過する。

「リュージチーフ、ブーメランディバイダー間に合いました。持って行ってください」

 整備班の男性スタッフが声をかけて来た。丁寧な言葉遣いだが、俺より十は歳上のベテランだ。

「助かります。無理言ってすみません。リナたちはきっちり仕事をこなすでしょうから、俺たちの出る幕はないかもしれませんが」

 彼が用意してくれたのは、前回、黒VMAP撃墜のために使い捨てにしてしまった武器である。本来ならば次の俺たちの「当番」までに間に合えばいいはずのところ、無理を言って今回のバックアップ任務に間に合わせてもらったのだ。

 実のところ、間に合わなくて当然とさえ思っていた。本当に頼りになるスタッフだ。

「なに。ほんの少しでも、前線で命を張るチーフたちの支えになれば。それが俺たち整備班の戦いですよ」

 聞く者に安心感を与える、落ち着いた声だ。彼は喋りながら、VMAPに武装を装着してくれている。

「我の提案は生かしてもらえたかの」

「ご要望通りに」

「待て、クソガキ。提案だと」

 こいつ、装備に注文をつけていやがったのか。隊長が黙認しているのをいいことに好き放題しやがって。いや、それはいい。

「クソガキ。仕様を変更するなら俺に報告しやがれ」

「若干ですが、コンパクト化したんですよ」

 出撃間際だ。空気を読んだ整備スタッフは、謝罪や余計な言葉を挟まずに教えてくれた。

「これにより、次回以降は二本装備できるようになります。威力は変わらないんで、取り回しは楽になるかと。実はもう一本、間も無く完成します。ああ、そいつは試作品だと思ってもらえばいいんで、安心して使い潰してやってください」

 俺はヘルメットを取って頭を下げた。今この瞬間、親父のことも参謀のことも頭の片隅に追いやっている。

 母親の仇、能腆鬼。私怨はどうしても胸の奥で燻り続けている。だが、それすらも無理やり片隅に追いやってみせる。

 こうしてバトンを繋いでくれる仲間がいるのだ。その期待には応える義務がある。

 整備スタッフと固い握手を交わすと、クソガキが歓声を上げた。

「をを。年の差カップリング。リュージも隅に置けないのうあだだだだ」

「お前が学習しない奴だってのはわかってはいるんだがな」

 今回、第三班のバックアップ出撃は俺たちが反重力システムを起動してから五分後に設定されている。悪いが、今回は死にたがりのお前らに出番を回してやる気はない。

 出撃十秒前。俺は再びヘルメットを被ると、整備スタッフに向けて親指を立てた。

「マキ、ハジメ。準備はいいか」

 肉声とイヤホンからの声、両方から聞こえるのは迷いなき肯定の返事。

「第二班、バックアップ任務。……五秒前。三、二、一、出撃」

 腹に響くエキゾーストノート。俺たちは三本の矢と化して閑散とした街なかへと飛び出して行った。


 走り出して間も無く、隊長からの通信が入る。

『敵一体、撃滅。しかしもう一体はゆっくり遠ざかっている』

「了解、ペースを上げます」

 ブーストボタンに手をかけたタイミングで、隊長が制止の声を上げた。

『黒VMAP隊だ。 たった今PPレーダーが三機を捉えた』

 ちっ、鬱陶しい連中だぜ。

「まるでリュージが出るタイミングを待っていたかのようじゃな」

『アキラ。三班は一班のバックアップ。リュージ。二班は黒VMAPを迎撃』

 やれやれ、ご指名かよ。高くつくぜ、クソッタレども。

「初めての総出撃か。総攻撃の予行演習じゃな。思う存分ジャミングしてやるぞよ」

『隊長。一班の新人たち、結構ギリギリだぜ。リュージにはこのまま一班のバックアップに向かわせることを提案する』

 アキラが通信に割り込んだ。言葉の内容はともかく、奴の意識が黒VMAPに向かっていることが手に取るようにわかる。

『てめえらのジャミングは街全体に及ぶ。俺たちによるバックアップにも影響が出るんだぜ』

 自分たちが黒VMAPと殴り合うのならば、ジャミングは必要ない。だから俺たちにやらせろ、というのがアキラの主張だ。

『ふむ、一理ある。ではアキラ、三班が敵VMAP隊を迎撃。リュージはそのまま一班をバックアップせよ』

「了解」

 優先順位を見誤ったりはしない。黒VMAPとの再戦に拘るつもりは毛頭ない。今はリナたち第一班の仲間が最優先だ。

「マキ、ハジメ。加速ブースト」

『了解』

 今度こそブーストボタンを押す。

 一気に高回転まで噴き上がる。路面に切りつけるタイヤの音もあいまって

、暴れ馬が嘶くのに似た音が街なかに轟いた。

『おや、リュージ。相手をしてくれないのかね。今回はせっかく三機ともパイロット付きで遊びに来てやったというのに』

「失せろ、声真似野郎。二度と話しかけるな」

 こいつ今、パイロットつきだと言いやがったか。……いや、どっちだろうと関係ない。心理的な揺さぶりに応じてやる義理はないのだ。

『ははは。嫌われたな、声真似さんよ。てめえらの遊び相手は俺たちだぜ。最初で最後の火遊びって奴だがな』

 そっちは任せた。ここからはバックアップに集中だ。待ってろよ、リナ。

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