表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

「信じてる」 後編

 幻は疲れたのか、少しの間だけ休憩を取ることにしました。

 少年は心身共に疲労困憊でしたが、意識をわずかに外へ向けることができました。

 少年の目に留まったのは、ケータイでした。ケータイには一通のメールが届いてました。

「最近学校に来ないけど、どうしたの? 私、とても心配してるの。返事だけでもください。ずっと待ってます」

 それは、別れてしまった彼女からのメールでした。

 なんで彼女は別れた恋人である僕に心配するのか。僕に良いところなんてないのに、彼女にしてやれたことなんてないのに。

 少年はそう思いながら、緊張と恐怖で震える手を必死に抑えて電話をしました。彼女はすぐに電話に出ました。

 そして、少年が今苦しんでいることやつらいことを一方的に話しました。疑問をたくさんぶつけました。答えをたくさん要求しました。内にたまったわだかまりが爆発し、感情的になりました。

 幻は少年の声に気付き、少年を死なせるために容赦なく襲い掛かります。

 再び幻を見せられた少年は、また孤独感に苛まれます。息苦しい水の中にいるように一人、少年は閉じこもっていました。


 彼女は少年の暗さに驚きました。しかし、彼女の答えは幻を通り越して少年の耳へと伝わります。

「私はあなたの味方よ」

 少年の心が揺れ動きました。幻の中から彼女が現れたのです。

「完璧じゃないあなたが好きだった。ただ優しかった。一緒にいて楽しかった。だから、死にたいなんて言わないで。私がそばにいるから。ずっとあなたの味方だよ」

 少年の胸の苦しみが楽になり、澄みわたる空気が流れ込みました。

 少年の頭の痛みがスーッと消え、楽しかった思い出が鮮明に浮かび上がります。

 彼女からもらった幸せで、少年を満たしたのです。

 受け止めきれない幸せの分は、少年の涙となって流れ続けました。

「私は本気よ。すべて正直に言った。孤独でもいい。信じなくてもいい。でも、また今度一緒に歩こう。一人より二人の方が、安心できるでしょ?」

 彼女はそう言って、少年の手を引き、よどんだ水の中から出ました。

 幻は悔しそうな顔で少年たちをにらみます。

 少年のところまで追いつけない幻は、もやのようになって消え入りました。

 同時に、彼女も消えました。しかし、ケータイから彼女の声が聞こえます。

 少年は無事に現実へ戻ることができたのです。


 彼女にお礼を言いながら電話を切った少年は、彼女の言葉を強く心に刻み込みました。

 また奴らから襲われないように。強く生きられるように。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ