とりあえず大変かもしれません
ここはどこだ。そしてどうしてこうなった。
ガンガンと痛む頭は、今の状況が紛れもない現実だと大げさなほどに主張を繰り返し、花音は嫌でも現実を直視する羽目になった。
「私…」
廊下を走る2人組を見た。関わり合いになりたくなくて背を向けたのも覚えている。そしてそこから、地面の感触が無くなって…。
「あ…階段落ちたんだっけ?」
そうだった。頭痛はその時にぶつけたものだろう。納得。では。
Q.何故頭上に青空が見えているのでしょう?
A.此処が明らかに外だからです。
「………」
現実逃避終了。
「何処だ此処ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」
殿吹花音は混乱の絶頂にあった。
志望校のオープンキャンパスに来て早々変な少年と目が合ったかと思いきや、よく分からない赤い髪の青年を見つけ、挙句の果てには階段から足を滑らせた。さらに目を覚ませば眼前に広がるのは鮮やかな青色の空。これで混乱するなという方が無理である。
「ど…どうしたらいいんだろ…」
頭を振って起き上がり、花音は泣きそうな表情のまま自分の姿を確認した。
泥や枯葉がついてちょっとボロボロになった制服。
足元は桜宮学院の校章が入ったスリッパ。
肩にかけていたトートバックは汚れているが中身は無事。
「とりあえず…携帯、繋がるかな…」
ポケットから携帯を取り出し開くが――――圏外。
「ですよね!」
分かり切ったことだった。
ガササッ
「!?」
ビクッと肩を揺らす花音。此処は見渡す限り森林だ、何が出てきても可笑しくない。
ガサッ
ガササッ
音は少しずつ近づいてくる。かなり大きい。
「ひいぃ…!」
ガサリ
ガサリ
…………ガサッ