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錬金経営術  作者: 鉄JIN
第一章
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閑話 錬金術師の休日

 アキトは、久しぶりの休日を手に入れた。

 と言った所で、やることも無くぼーっとしていただけだが、最近の忙しさは過密な殺人的スケジュールだった。


 ここはアキトの私室である。

 特にこれといって特徴の無い普通のマンションの一室。3LDKなのは、帰国時に家族と使う事を考えていた。もっとも寝るためだけに使っている状況では、少々勿体ない気もするが……。


「……あー、掃除しないと」

 余談だが天才と呼ばれるアキトだが、家事はまったく出来ない。

 寝室以外は、週に二回ほど掃除して貰っている。頼めばここもキレイにしてくれるだろう。

 だが……。部屋の状態は酷かった。

 床には脱ぎ散らかした服が散乱し、読みかけの雑誌は積み上げられたままだ。


「めんどくせー……」

 手にとって動かして見たものの、数の多さに早速あきらめの境地に入る。

 後にするかとベッドに寝転んだ時点で、もう典型的な駄目人間でしか無い。


 こんな時に母が居ればと思うが、父親の世話をやくために一緒に海外に行っていた。

 アキトを見れば分かる通り、父親も駄目人間だった。

 愛する息子と夫を天秤に掛けて、迷いもせずにアキトを残していく決断をした辺りは絶望的に酷かった。

 なにせ下着も自分で用意できないレベルなのだからどうかと思うが、実はアキト自身も似たような者である。

 この辺りは遺伝子が良い仕事をしていた。


 だが捨てる神あれば拾う神ありである。





        ※





 佐倉夏希はアキトの秘書である。


 的確なスケジュール管理は負担を減らし、アキトが業務に最大限打ち込めるようにサポートしていた。機械的では無いそれは、状況ののすべてを把握した上でアキトの感情にも配慮した出来る秘書である。


 そして彼女は知っていたのだ……アキトの生活も。


 アキトの自宅を清掃する業者の情報を掴んだ彼女はこう考える。

(うふふっ、アキトくんって何でも出来るくせに片付け出来ないなんて。ここはお姉さんが一肌脱いで

……きゃっ! 脱ぐなんて……どうしよう? いきなり、あっ、だめぇ!)

 妄想である……。

 女も三十が近づくと色々あるのだ。


 今日はいつもより短めのスカートをはいて、胸元のボタンも三つ開けてある。

 金の鎖がきれいなネックレスが少しだけ覗けるようにだ。

 手には母親から強奪したお肉。今晩のすき焼きの材料を持ってアキトの元へ。

 かわいそうに佐倉家では、父親の誕生日を肉なしのすき焼きで祝いそうである。


(まっててね……)



 夏希が妄想全開で急ぐ頃。


 着物姿の美枝は、デパートの地下食を散策していた。もちろんアキトのためである。


「えーと……ワインも買おうかな?」

 手にはすでに人気の弁当をゲットしていた。特に数量限定で中々買えないと言う商品を手に入れた辺りは、気合いの程がうかがえると言うものだ。


 手荷物には白い割烹着を入れてさりげなく家事の出来る姿を見せようと、わざわざ訪問着に身を包んだ。悩んだ末に下着を着けたのは、着物の事を知らないだろうアキトに配慮してある。


(いくら下着の線が出ない方が綺麗だからって、はしたないって思われる方が駄目よね……いやん、どうしましょう? やっぱり白の方が良かったかしらん)

 などと意味不明の妄想を地下食で繰り広げながら、しっかりローストビーフも買っていた。


 ちなみに下着は黒のレースで揃えてある。紐も蝶結びし直したのは、どういう意味であろうか?

(いけない! 急がないと)

 昼時を考え急ぎ足でデパートを後にした。





 そして当然の如く。


 健康的な身体から伸びやかに覗くふともも。白いホットパンツはローライズで、見せパンは吟味してある。

 沙月は自分の魅力を理解していた。

 若さを全面に出した姿は、今だけの特権である。学生時代とは違って、背伸びのすること無く自然を心がけられる様になった。


「もう! ママ! 遅い!」

 母親をせかして急がせる。

 休みの日だと言うのに早朝から娘に起こされて、弁当造りをさせられた母親はさぞ迷惑であろう。


「はいはい、もう出来ました」

 それでも機嫌を悪くすること無く、娘のわがままに付き合うのだから出来た母である。


「ありがとうママ! すぐ出るね」

 アキトが、家庭の味に飢えていると考えて母親の協力を取り付けた。自分で作らないのは現代っ子まるだしだが、失敗するよりはアキトのダメージは少ないだろう。


 父親に近くまで送らせるため現在ガレージにて待機中である。


「行ってきまーす!」

 藤枝家に元気な声を残して沙月は飛び出した。





        ※





 ぼんやりとベッドに座って部屋の様子を眺めるアキト。

 もちろん本人が動かないので片づくわけは無い。



「どうしようかな……」

 思わず独り言が口こごる。

 その時……。


「うっ!」

 ぶるっと悪寒が走った。

 風邪かな? とアキトは思い「うん、あとにしよう」とまた布団の中へ……。


 休日は始まったばかりだった。

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