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錬金経営術  作者: 鉄JIN
第二章
26/30

新たなる始動

お久しぶりです。改定はまだまだですが更新しました。

とりあえず、話を先に進めることにします。

応援いただけると嬉しいです。

 二〇一〇年六月、アキトが日本を離れてすぐに新政権が発足していた。

 特に実績も無く短命に終わった嶋山政権の後を受けて、出来たのは官成人内閣である。

 市民運動家出身の官総理は、さっそく韓国への謝罪を盛り込んだ談話を発表するなど、実にぶれない姿勢で国政に挑んだ。


 野党からは「市民運動といえば聞こえが良いが左翼の塊だ」「学級崩壊から廃材政権ですか?」などの声が上がったが、支持層には耳障りの良い政策はウケ、マスコミがそれを支援したことによって支持率は高かった。


 この時点で本人がどう考えていたのかは想像でしかないが、権力を握って舞い上がった素人が取った舵取りは、実に危うい方向であったのは間違いないだろう。


 ここから日本は経済失速に突入していく。


「円安になれば、輸入から内需拡大に繋がり易い。歓迎だ! しかも、自国通貨が強くなる。これは良い事だ」

 恒例の財務大臣の会見は急速な円高に対する質問から始まった。

 この発言は一面の真実は突いている。

 だが一ドル一二〇円が九〇円を切り、株価が下落する現在早急な対策が求められていた。


「しかし大臣。エネルギー分野で革新的技術を持った焔氏からはそっぽを向かれていますよね?」

 途端に財務大臣は顔をしかめた。


「EUは英国の牽引もあって好調ですが? どう思われます? 特に欧州危機を免れた存在として、焔氏が高く評価されている事について一言!」

 次々と記者達から質問が浴びせられる。

 不機嫌にノーコメントを繰り返し会見を打ち切った財務大臣の表情は暗い。


 経済に出口の見えない日本と違って、アキトの積極的支援に国家単位で出た英国は着実に成果を挙げていたのだから。


 クリーンで安いエネルギーを背景に世界は動き出していた。流れは欧州から一部アジア地域まで続き、アフリカを巻き込むのも時間の問題だろう。

 取り残されているのは日本を含む、中国、韓国そしてアメリカだ。


 時に日本は絶好のチャンスを無駄にした国として世界の笑いものになった。

 無意味な規制に課税を目論み、中韓で起こされた裁判には対応にちゅうちょした。


 英国が激しい批判を繰り返したのとは対照的である。


 止めは勝手に外郭団体を作り、触媒技術を差し出せと言った事だろう。これで信頼関係は決定的に破談し、海外への脱出となったのだから。

 母国でありながら四面楚歌の現状で外資転換は生き延びる道。けれど民政党政府は売国企業とまで呼ぶ始末だった。



「くそっ! どこに行っても、ホムラホムラホムラだっ!」

 水道政経塾出身の野村義彦は熱心な水道哲学の推進者だ。もっともかなり間違った解釈をしているのだが。


「おいっ! お茶!」

 荒々しく秘書に命じる姿は、TVの前とはかなり違っていた。





        ※※※




 B・ブリティッシュホムラ社は南欧の自動車生産を皮切りに、それまで経済基盤の弱かった欧州各国に進出した。

 見方を変えれば英国の新たな植民地政策に見えるかもしれないが受け入れられた。


 ギリシャの成功がそれを上書きしたのだ。

 デフォルト回避した上に財政健全化の道筋が立った。英国資本で雇用と生産を設けたことは、ユーロ単一では無くポンド圏に組み込んだ事になる。


 欧州各国──ドイツ、フランス──からの反対に対して、かなり強引ではあったが唯の融資ではなく産業の底上げをしたB・ブリティッシュホムラ社を非難する声は低い。


 各国は次は自国にと思っていたからだ。


 ただし予想外に欧州の自動車販売のシェアが七.五%に達した事から今後の妨害も予想される。

 シェアを喰われたのがドイツとアメリカだったからである。







        ※※※


 では取り残されたアメリカの反応はどうか?



「制裁を加えるべきだ!」

 赤ら顔でいきり立つ男はデトロイト出身の政治家だ。ジム・ロットニーは自動車産業をバックに当選している。


 ここは国防の議論から始まり諸事まで担当する上院軍事委員会の席上だ。


 現在の議題はアキトの持つコアについて。

 英国で建造中されている潜水艦性能が、当初よりはるかに高いことが予想された。


「すでに既存の潜水艦の改装により明らかにされていますが脅威であることは間違いないでしょう」

 英国海軍は退役間直の原潜を改装して、実験に着手していた。速度の向上も驚く事ながら、静寂性は群を抜いていたのだ。


「原潜並みの連続潜行に電気推進で低コスト。我が国への技術供与は不可能なのか?」

「現状はどちらとも言えません。開発者のアキト・ヒイラギは米国籍を持っていますが、英国が手放すとは考えられませんね」

「だから、ホムラを何らかの手で規制、もしくは制裁を」

「ジムの意見はさておき、英国だけが独占するのを見逃すのは無理だな」

 こう言ったのは民主党の一人、大統領にも近く実力者だった。対するジムは共和党である。


「では、協調を探ると共に対策を促すで良いだろうか?」

 彼はそう意見をまとめ上げると席を後にした。







        ※※※


 そして……現在のアキトは。


「おばあさま、お久しぶりです」

「まあまあ、アキトちゃん。よく来てくれたわ」

 世界の思惑など何処吹く風とばかりに祖母を訪ねていたのだ。

 もちろん今のアキトには一人で好きに出歩けるほど簡単では無い。当然護衛がついている。SASの精鋭から組織された特殊部隊と、SIS秘密情報部の腕利きが固めていた。身分は在外公館の職員だ。


「お変わりないですか?」

 祖父の残した邸宅は、会社所有だったために苦労したが手に入れてある。

 あれこれと世話を焼く祖母に苦笑しながら「ご相談があるのですが」と話を始めた。

「あら? アキトちゃんが相談って何かしら?」

 楽しそうに首をかしげる祖母。


「実は今度財団法人を設立しようと思うのですが、力を貸していただけますか?」

 そうアキトが切り出す。


「まあ! 何をするの? 面白そうだわ」

 途端に目を輝かせて身を乗り出す祖母。世話好きで社交的な祖母はアキトの説明を聞くと俄然やる気を見せたのだ。

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