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錬金経営術  作者: 鉄JIN
第一章
25/30

決断

 国会は愚者の集まりと言ったのは誰の言葉だったか。急遽行なわれた臨時国会は紛糾していた。


「良いですか! あなたは人の命を弄んでいるんですよ!」

 テレビで良く見る女性議員の発言が飛ぶ。

 市民運動から政界に進出した彼女は、たびたびセンセーショナルな発言で話題になる。

 庶民派の顔をした浪花のおばちゃんとして人気を博していた。

「日本にだって! 沢山の患者さんがいるんですから、それを見捨てて。エゴ! エゴです!」

 彼女の夫がテロリストとして公安にマークされていたりもするが、今回こうしていきり立っているのは理由があった。


 拒否も出来るとはいえ、最近の自身と会社を取り巻く現状に、応じることに決めたアキトと言えば。

「どうなんですか!?」

 膝元議員の問いかけに対して「はい。日本国内での許認可申請に予定はございません」

とつれない返事だ。

 すかさず飛ぶ野次。


「な、ななっ! なんでなんですか!」

 泡を吹いてもアキトの答えは変わらない。


「みなさん勘違いしているかもしれませんが、ガンの治療薬は万能ではありません。効果時間の短さから考えて、ソールズベリーから八時間圏内で使われなければなりません。日本での使用は現状で不可能なのです」

「だっ……だから日本で開発と生産をすれば」


 アキトは周りをゆっくりと眺めるように視線を送り。

「お断りします。将来的にはどうなるかは分りませんが、現状で不可能です」

 これは事実であった。

 開発者が父親一人で二カ国に渡っての生産開発など無理な話だ。しかも魔素の問題もある。豊富な魔素を得られる場所の確保は出来てはいなかったからだ。


「まっ! 待って!」

 膝元議員は必死だ。

 彼女の有力後援者の家族が必要としていたからだ。八十二歳の老人であったが……。

 なんとか英国で治療をと願っても若年者(三〇歳未満)を対象にしている薬だ。

 国会議員の特権など通用しない英国。それも民政党になってから冷ややかな──特にアキトがらみ──関係では無理も通せない。

 だから絶対に日本で生産をと頑張っていたのだ。


 国会での参考人招致と言う糾弾会は終わった。その夜のニュースは一斉にアキトの非難に始まり、技術の独占を禁止しろと言う発言まで目に付いた。


 そして一夜明けて。

 B・ブリティッシュホムラによる株式会社HOMURAの買収が発表された。



        ※


 早苗を筆頭に並ぶ経営陣と言っても何時ものメンバーだが。

「特に問題ないよ」

 相手をするのは工場の従業員に対してだ。

コアの生産は中止して輸入する。それ以外は今までと変わりないし、若干給料は上がるみたいだ」


 そう、アキトは従業員に迷惑を掛けた事に対して対価──給料──で応じた。具体的には二割程度のアップだから馬鹿には出来ない。

 勿論ソールズベリーでの大量生産でコストが大幅に下がったためでもあるが。


「マジっすか!」

 さっきまで不安だった従業員の顔も明るくなる。すべて女性なのは何時ものことだが……。

 なぜか従業員の採用はすべて女性なのだ。日本では男性ばかりだと騒ぐ人権団体だが、これが女性だと問題にならない。

 もっともパワフルなこの会社のお姉さまたちに囲まれて、働こうと考える男性は少ないと思うが。


「しかし……アジアじゃ無くてもコストって下がるのね」

 沙月に疑問はもっともだけれど、錬金術に必要なのは魔素のある環境なのだ。

 今後、進出する際には抱負な魔素を求めてに成るだろう。



「しかし……思い切ったね?」

 江田島習作はアキトの思い切った戦略に感心していた。

 自分なら日本を離れて海外で起業するなど考えられない。


「あはは、苦労しそうですけどね」

「いや、これは英断だよ! 敵の多いこの国なんて捨ててやれ」

 融資の邪魔から許認可の遅れ、挙句は厚顔無恥な要求と、最近のアキトに対する国の対応を知っているだけに怒りも湧く。


「捨てるなんて勘弁してください。この国は僕の祖国なんですから」

「その考えはあっぱれだ! なに、数年で今の政権も変わるだろう。それまで余所で力を蓄えて置いてくれ! それまでは俺が頑張るから」

 B・ブリティッシュホムラの支援を受けた江田島の会社は堅実に経営していた。


「お願いします」

 日本での代理店としてメンテナンスその他、江田島に頼る部分は大きかった。

「おう、任せとけ! がはははは!」




「そんで、これからどうする?」

「まずは仲間を増やしますよ。うーんとね」

 アキトの進む道を支えてくれる仲間はたくさんいる。

 でも……。アキトにはまだまだやる事はたくさんある。もっと必要だろう。


 日本と言う狭い世界を抜けて、今後どう進むのだろうか。

とりあえず第1部終了とします。


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