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錬金経営術  作者: 鉄JIN
第一章
16/30

提案

『取材を拒否して雲隠れの社長ですが……』

 連日ワイドショーでは、アキトの話題で一杯だ。内容を見ればまるで犯罪者の様な扱いである。


 だが日本の騒ぎとは他所に、欧州各国の反応は違っていた。


 BBC(英国放送協会)の取材を受け入れたからである。

 元々中立性をうたっているが対外国的には、英国の国益を代表してプロパガンダ的な放送を行っている。英国に設立された企業それも世界をリードする可能性があれば、好意的な内容に収まるのは当然だった。


 特に世界に押されている分野。英国が失ったとされる自動車工業の再興は受け入れられた。外国資本に多数買収され、小規模な会社が現存する状況を変えようと(そう見せた)するアキトの姿勢は、不可能に挑戦する若者の情熱として受け入れられた。


「プロデュース成功ね!」

 復帰したクリスと並び出演した画像は、実に微笑ましかった。またクリス自身が闘病の情報を「どうせばれるなら」と視聴者に見せた事も良かった。


「国民車ですか?」

 アキトの提案にマクラレン・フィルが眉を上げた。


「ええ、エンジン型の車と違って、電気自動車は構造が簡単ですから」

 話の内容は英国での供給とは別に、自動車の生産を行う地域の話だ。


「ギリシャですか……」

 英国でのコア製造の前に、日本からの輸入で始めた自動車産業は、少しずつ進んでいた。

 モーターを提供することによって、低コストで作れるために新規の参入希望も多い。だが英国資本に限定したことから、批判も出始めていた。


「最初は英国と同じ車体でも構いません。こちらでも、もともと小型車の開発が主体ですから」

 現在優れた燃料コストを生かした小型車の開発が進んでいた。それをノックダウン生産で始めようと提案しているのである。

 ノックダウン生産とは現地での組み立て・販売方式の事だ。

 組み立て技術を学ばせて将来は独自に開発まで見越しているが、現状では大部分は英国に依存させる。バイバックなどの、単なる海外拠点を目指さない所がアキトらしい。


「ふむ、経済危機を飲み込もうと言うのですか?」

 マクラレンの危惧する所は当然だろう。


「そこまで考えていませんよ」


「おや? てっきりアキト君なら、そう考えるかと思いましたが?」


「ついでに発電も行って、コストを下げれば十分な勝算はあります」

 英国では触媒方式で発電所の建設が進んでいる。もっともアキト以外はコストで圧倒的とは言えないために|(現状の販売価格から)小規模な物だが。

 いずれ大量生産|(ソールズベリー近郊の魔素を使った)が進めば、大規模になる可能性も在る。


「一考の価値はありますね。EUに対する我が国の姿勢を見せるチャンスかもしれません」


「政治の事は勘弁してください!」

 アキトが釘を刺すがすでに手遅れだろう。


「ふふふ、遅いですよ」


 だがアキトのこの提案は、後に大きく欧州に影響を及ぼす。




        ※




「お義父様? これで良かったかしら?」


「ちょっ! なにさりげなく呼んでるの」

 賑やかなのはクリスと夏希だ。アキトの父親と現在は魔法薬の研究を行っている。

 秘密を知る者が限られて居るために、手伝いとよばれたのだ。


「ははは! 何でも良いさ」

 助手とは違って、華やかな雰囲気で自然と笑顔になる。その辺りはアキトの父親らしい。


 研究が進む魔法薬は現在、材料に既存の漢方素材のみで進められている。強すぎる効果を恐れたためと、やはり奇抜な━━薬の原料に思えない物━━原料を省いた事からそうなった。


 もちろん魔方陣を使うのは間違い無いが……。


「やはり効果は伸び無いか……」

 いま取り組んでいたのは薬の効果時間についてである。

 魔法薬の宿命か? 既存の薬と違って不思議な事が多かった。

 まず作成から消費期限が決まっていた事。

 アキトの話では異世界でも決まっていたらしい。魔法で作っていたために、魔法が切れると効果が失われるのだ。


 その期限が、一二時間で半減し二四時間経つと効果が失われた。


 また体の持つ生命力━━アキトはそう言った━━に依存するため、使用量が年齢で違ってくる。


 具体的には若いほど効果が出る。


 一五歳までを一とすると、年齢が上がる程使用量が増えるのだ。これは異世界でも力の強い人や高齢者などに共通する事で、その際は魔法を併用していたらしい。


 現在は魔法など使える医者はいないために、薬剤の分量を増やすしか手は無いのだ。

 そこでいろいろ試しているのだが改善はされていない。


「漢方材料で再現は出来たが、効果は落ちるな」

 改良を進めるうちに万能薬の効果は薄れ、現状ガンの治療薬に収まったのは不幸中の幸いか? 強すぎる薬は毒━━アキトを苦しめる━━にしかならないからだ。


 こうして世に出る事に成った薬の使用量に触れると。


 一五歳を一として見ると、二〇歳で約二倍。

 そこから一〇歳ごとに増え続けるが、驚くことに五〇歳を越えると使用量が激増した。


 五〇歳で一六倍が、一歳増えることに倍になるのだ。臨床治療で判明したこの事により、魔法薬は若年性のガン治療薬として世に出される。





 もちろんこれも問題となっていくのだが、アキトたちはまだ知らない。

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