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錬金経営術  作者: 鉄JIN
第一章
12/30

練金魔術師アキト

今回は短いです……すみません。

 アキトは魔法薬作成の前に準備を行っていた。

 これは錬金術師なら誰もが使う技法である。

銅板に真銀ミスリルで魔方陣を刻むのだ。


 アキトが行う錬金術は、魔力を行使して物体を変質させていく魔術と言って良い。

 たとえば、銀に魔力を溜めると真銀に変わった。魔力には金属を変質させて特性をもたらす事が出来たからだ。

 ミスリルと呼ばれるこの物質は魔術との相性が優れていて、アキトの作った触媒でも、もちろん使われていた。


 普段魔術師が魔法を行使する場合、意味ある音や形で魔素を使って世界に干渉する。

 どちらも同じ物で音は呪文、触媒は魔方陣を形にしたものだった。


 だから真似た物でも魔素が存在すれば、多少の効果は現れた。研究者が後追い実験で、反応を確認出来たのもこれが理由であった。


 なぜならこの世界には魔素が存在したのだから。

 特にソールズベリー近郊は魔素に溢れていた。


「この地で助かった」

 アキトが集められた素材を眺めながらつぶやく。すべてが揃ったわけでは無いが、とりあえずの作業は進められそうだ。


 最初に手を付けたのは、魔素を集めるための器作りだった。

 魔力とは、魔素を変質した物だったからである。世界にある魔素を集めて魔力に変える。



 世界には魔力溜まりと言う場所が存在している。ミステリーサークルが良い例だろう。あれは魔素の吹き出しによって作られた。人為的な物とされていたが、無意味ないたずらなどでは無い。

 実はストーンヘンジも同じ理屈で作られた器の一つ、魔力溜まりで魔術を使う目的で作られた。人為的か自然に出来たかの違いだが、濃い魔素が溜まる場所で間違い無い。


 この事から魔術師が存在した事が分かるだろう。

 過去歴史に埋もれていった中には、魔術を使える人たちが存在したのだ。

 理解出来ない事を悪とされた時代、宗教的な事情で表の世界から消されたが魔術師は存在していた。



 ソールズベリー近郊は魔素の多い地域だが、実は日本でも良く見かけられる場所に有ったりする。

 多くは神域や古墳に使われている事から、誰かは理解していたことがよく分かるだろう。


 前世で魔術師は、魔素の事を生命力の一つだと思っていた。世界を作る素とも考えていた。


 アキトが魔法を使うときも、体内の魔力と世界に漂う魔素を合わせて使っている。豊富な魔素が漂う、魔力溜まりを使え無ければ今回は苦労しただろう。

 体内魔力は手軽に使える反面限界があったからである。



 水晶を手に取る。不純物の無い透明な物だ。

 一つ一つ魔力を込めると、驚いた事に粘土の様に形を変えることが出来た。


 体内の魔力を少しずつ流すと、アキトは何かを吸い取られるように感じて来た。


 吹き出た汗を拭いながら、疲れては来たがクリスの事を思って、今夜は限界まで続けようと思った。





        ※





 魔法薬の工程は数百にも上る。これは素材のせいであった。

 まず使える素材に変える工程がいるのだ。

 アキトはこれを簡略化するために、銅板に真銀で魔方陣を書く。工業化の理念を取り入れたのだ。

 この上に水晶で出来た器を載せると、魔素を取り込み魔法を起動させた。後はそれを順番どうりに繰り返せば良い。

 現在は手作業で載せているが、機械化すればアキトが居なくても作れる。


「うん、上手く行ってる」

 アキトは満足そうにうなずくと、記憶の中のレシピが埋まるように素材を並べていく。青い光が輝く度にそれは揃って行った。





        ※





 そのころ日本では……。


「排除は完了しました」

 良くある町中の貸しビル。ごく有り触れた外資系の商社と言った所に見えるが、働く人員はすべてCIAに雇われていた。


「ご苦労。引き続き監視してくれ」

 答えているのはアメリカ本国から送られてきた東洋系の男である。


「中国、ロシアに続いて今回は韓国ですね? もっとも企業の雇った産業スパイ辺りなのか、手間が掛からなくて助かりましたけど」

 見た目は普通のどこにでも居るような中年のオヤジだが、会話は普通では無かった。

 カウンターテロまで対処できる一級のエージェントは、何時ものように小さな町工場の監視に入る。

 彼らはアキトの工場を監視していた。本国からの指令は刺激をしない監視と調査が最優先で、邪魔をする者の排除も許可されていた。


「しかし……日本の企業を俺達アメリカ人が守る必要が有るんですかね?」

 モニターを覗きながら同僚にぼやく。


「さあ、本国が何を考えているか知らないが、命令には従うだけさ」


「まー、何でも良いんですけどね。そういえば、相手はアメリカ国籍も持ってるからおかしく無いんですよね?」


「そうだな、ステーツで生まれたって聞いたな」


「でも……。この間の連中はCIAの奴だったじゃ無いですか? なんで身内でドンパチやってるんです?」


「ははは! そりゃ、上に聞いてくれ。まー命令の出所が違えば任務も違うさ。おっと! また誰か来たな! ナンバーを照会しろ! 偽造だとは思うがな! がははは!」





 こうしてアキトが守られているのを、もちろん本人達は知らなかった。

週末は待望のGWだ!

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