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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026


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第78話:虚空の廃都、弟の夢と遺された機神兵

上下左右の概念が完全に崩壊した暗黒の空間。

そこに無数に浮かぶ、巨大な岩塊と建造物の残骸たち。

第21層『浮遊廃都』は、これまで三月が踏破してきた迷宮の自然環境(洞窟、森林、湿地、火山など)とは決定的に異なっていた。

「……これ、どう見ても『人間の街』の残骸よね」

三月は、自身の周囲の重力を「上向き」に設定し、虚空に浮かぶ巨大なアスファルトの残骸――かつて高速道路だったと思われる巨大な道――の『裏側』に逆さまの状態で着地した。

彼女の視界に広がるのは、見慣れた迷宮の岩肌ではない。

ひしゃげた鉄骨、真っ二つにへし折られた高層ビル、そして重力を失って宙に浮き続ける無数の瓦礫。それらが迷宮の青白い魔素の光に照らされ、不気味な星空のように空間を埋め尽くしているのだ。

(拓也が文献で調べていた『消えた街』……。ダンジョンの深層には、かつて地上に存在し、迷宮に飲み込まれた都市の残骸があるっていう仮説。どうやら、あれはおとぎ話じゃなかったみたいね)

弟が目を輝かせて語っていた「迷宮学」のロマン。

しかし、実際にその跡地を目の当たりにすると、そこにあるのはロマンなどではなく、ただ純粋な「絶望」の痕跡だった。

これほど巨大な近代都市が、丸ごと迷宮の胃袋に飲み込まれ、物理法則すら歪められた深淵で永遠に漂い続けているのだ。迷宮という存在の底知れぬ悪意とスケールの大きさに、三月は改めて息を吐いた。

「帰ったら、拓也に教えてあげよう。あなたの仮説は正しかったわって。……もちろん、私が直接見てきたとは言えないけどね」

三月は小さく微笑み、『漆黒のロングコート』の裾をはためかせながら、逆さまの高速道路を駆け出した。

『俊敏(中)』による超絶な脚力と、『重力操作(微)』による体重の軽減。

彼女は跳躍するたびに自身の重力方向を切り替え、右に浮かぶビルの側面へ、左に浮かぶ巨大な岩塊の下部へと、まるで重力という糸を自在に操る蜘蛛のように、複雑な三次元空間を猛スピードで突き進んでいく。

やがて、廃都の中心部と思われる宙域に差し掛かった。

そこには、他の残骸とは比較にならないほど巨大な、ゴシック様式の大聖堂のような建造物が、真っ二つに割れた状態で浮遊していた。

その周囲には、異常なほど高濃度の魔素が渦を巻いている。

「……静かすぎるわね。さっきの翼鬼ガーゴイルみたいな雑魚の気配が、ここ周辺には一切ない」

三月が警戒を強め、『気配察知(微)』の感度を最大まで引き上げた、その瞬間だった。

ゴォォォォォォン……ッ!

大聖堂の残骸の奥から、重低音の機械的な起動音が響き渡った。

ステンドグラスだったと思われる巨大な窓枠を粉砕し、暗黒の虚空へと姿を現したのは、体長十メートルを超える巨大な「機械の天使」だった。

白磁のような迷宮鉱石で形作られた流線型の装甲。背中には六枚の光のスラスターが展開され、顔面には目も鼻もなく、ただ十字の赤いスリットだけが不気味に発光している。

『深淵の機神兵アビス・マキナ』。

迷宮がこの廃都を飲み込んだ際、防衛システムとして生み出したのか。あるいは、この街の住人がかつて作り上げた兵器が、迷宮の魔素によって魔獣へと変異したのか。

その正体は不明だが、放たれるプレッシャーは第20層の『中層の冥王』に匹敵、あるいはそれ以上だった。

【ターゲット・ロック。侵入者ヲ排除シマス】

機神兵の十字のスリットが明滅し、機械的な思念波が三月の脳内に直接響く。

次の瞬間、機神兵の六枚の光の翼から、超高熱のプラズマレーザーが一斉に掃射された。

「ッ!」

三月は自身の重力を「下」へと全開にし、足場にしていた岩塊から文字通り「自由落下」することで、レーザーの弾幕を間一髪で回避する。

しかし、機神兵のレーザーは単なる直線攻撃ではなかった。三月を追尾するように軌道を変え、さらに周囲の空間に数秒間「超高熱のプラズマの帯(残り香)」を停滞させる、凶悪な持続型範囲攻撃だった。

(自動透過の弱点である『持続的な環境ダメージ』……。あのレーザーを透過でやり過ごしても、実体化した瞬間にプラズマで焼き切られるわね!)

三月は瞬時に状況を判断した。

今の彼女の戦場は、地に足のついた平面ではない。上下左右が存在しない虚空だ。

「なら、避けるだけよ!」

落下しながら、三月は『磁力操作(微)』を起動した。

空中に浮かぶ大量の鉄骨や車輪の残骸。それらの金属に対して「強烈な牽引力」を発生させ、自身の身体をゴム紐で引っ張るようにして、虚空での急激な方向転換を連続で行う。

重力操作による落下の加速と、磁力操作による三次元軌道の強制変更。

三月は、まるでピンボールのように複雑なジグザグ軌道を描きながら、迫り来る無数の追尾レーザーを紙一重で躱し続ける。

「ギィィィィンッ!」

機神兵が苛立ったように光の翼を羽ばたかせ、今度は自身の両腕から巨大な光の剣を発生させ、三月に向かって猛スピードで突進してきた。

その巨体からは想像もつかない、空間を圧縮するような凄まじい突進速度。

「図体ばかり大きくて、直線的な動きね」

三月は空中で不敵に笑うと、背中のホルダーから『双極の魔刃・黒月』を抜き放った。

そして、向かってくる巨大な光の剣に対し、逃げるのではなく、あえて「真っ向から」突っ込んだ。

脳内で『多重並列処理』が極限まで加速する。

左手に『氷結の魔力回路(真)』。右手に『爆熱の魔力回路(微)』。

極寒と超高熱の魔力が同時に『黒月』の漆黒の刀身へと注ぎ込まれ、真紅と蒼碧の血管が爆発的な輝きを放つ。

激突の直前。

三月は自身の重力を「ゼロ」にし、空気抵抗すらも魔力で相殺することで、機神兵の突進速度を上回る神速の踏み込みを虚空で実現した。

「吹き飛びなさい」

すれ違いざまの一閃。

三月の振るった『黒月』が、機神兵の光の剣を根元から叩き斬り、そのまま白磁の巨大な胴体へと深々と食い込む。

相反する極大エネルギーが交錯し、刀身から『熱衝撃波サーマル・ショック』が爆発的に解放された。

ドガァァァァァァァァァァンッッ!!!

急激な温度変化による真空状態と絶対破壊のエネルギーが、十メートルを超える機神兵の強固な装甲を内側から完全に粉砕した。

「ピ……ピガァァァァァッ……!?」

電子音のような悲鳴を上げながら、機神兵の巨体が真っ二つにへし折れ、周囲の虚空へと白磁の破片を撒き散らしながら機能停止していく。

巨大な残骸が漂う中、三月は重力操作で姿勢を立て直し、ふわりと大聖堂の破片の上へと舞い降りた。

機能停止し、光の粒子となって崩壊しつつある機神兵の胸部。そこに、ひときわ強い光を放つ青白いエネルギーコアが剥き出しになっていた。

「強大な魔獣、それに機械だとしても……『魂』があるなら私の餌よ」

三月は冷徹な瞳でコアへと歩み寄り、左手を突き入れた。

すでに抵抗力を完全に失い、瀕死の残骸と化した存在から、固有スキル『魂喰い』が容赦なくその根源を引きずり出す。

(……! これは……知識?)

いつものような獣の咆哮や暴力的な衝動とは違う。

三月の脳内に流れ込んできたのは、無機質で膨大な「空間データ」だった。

この機神兵が何百年もの間、この浮遊廃都を巡回し、記録し続けてきた三次元の地形情報。そして、空間の座標を正確に測るための演算能力。

光が収まり、三月の身体に新たなスキルが刻み込まれる。

『空間把握(中)』の獲得。

自身の周囲、半径数百メートルに存在する物体、地形、動くものの座標を、視覚に頼らず脳内で「完璧な3Dマップ」として瞬時に構築・把握する能力。

上下左右が崩壊し、死角だらけのこの深層において、これ以上なく強力な探索・索敵スキルだ。

「……なるほど。これで、後ろから来るレーザーも振り向かずに避けられるってわけね」

三月は小さく呟き、『黒月』を鞘に納めた。

器が拡張され、並列処理の演算速度もさらに一段階引き上げられたのを感じる。

ふと、三月は足元の瓦礫の隙間に、何かが埋もれているのを見つけた。

それは、機神兵の残骸からこぼれ落ちたのか、あるいは大聖堂の中に保管されていたのか。

『気配察知(微)』にも魔力反応がない、ただの物質。

三月が瓦礫をどけてそれを拾い上げると、それは赤茶けて錆びついた、一枚の金属製のプレートだった。

表面には、擦れてほとんど読めなくなっているが、確かな『日本語』でこう刻まれていた。

『――東京都 新宿区――』

「……嘘でしょ」

三月の瞳が、驚愕に見開かれた。

拓也の言っていた「消えた街」の伝説。それが単なる古代文明や異世界の街ではなく、自分たちが住んでいるこの日本、その首都の一部が、かつて丸ごと迷宮に飲み込まれていたという絶対の証拠。

「ダンジョンって、一体何なの……?」

底知れぬ深淵の暗闇を見つめながら、三月は背筋に冷たいものが走るのを感じた。

迷宮は単なる魔獣の巣窟ではない。人間の世界を侵食し、飲み込み、自らの糧として拡大し続ける「巨大な捕食者」なのかもしれない。

だが、三月はすぐにその金属プレートを漆黒のロングコートのポケットへと深くしまい込んだ。

「……今は、考えるのはやめましょう」

迷宮の正体が何であろうと、彼女の目的は変わらない。

第30層の最深部に到達し、この狂った世界の全貌を暴くこと。そして、地上で待つ家族の平穏を、自らの力で永遠に守り抜くこと。

「待っててね、拓也。あなたが欲しがってる真実は、お姉ちゃんが全部持って帰ってあげるから」

三月は決意を新たに、新たなるスキル『空間把握(中)』を展開した。

脳内に完璧に描かれた廃都の立体マップを頼りに、彼女はさらに深く、暗闇の底へと向かって虚空を蹴り出した。

第21層『浮遊廃都』での本格的な戦闘と、驚愕の事実が判明するエピソードを描きました。

機神兵との無重力ドッグファイトでは、三月がこれまでに得た『重力操作』『磁力操作』『黒月』の力をフル活用して立ち回る姿を表現しています。そして、新たに『空間把握』を得たことで、彼女の三次元戦闘はさらに隙のないものとなりました。

「消えた街」の正体が現実の都市だったという謎。この迷宮の真実に迫る展開にワクワクしていただけましたら、ぜひブックマーク登録や、評価ボタンでの応援をよろしくお願いいたします! 皆様からの反応が、何よりの執筆の励みになります。次回の更新も楽しみにお待ちください!

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