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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第二章:少年の探索者編

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第128話:原初の牙、指揮官の真骨頂

第四層――迷宮が拓也の干渉を排除するために生み出した、あの白亜の幾何学領域での戦いを終え、四人はさらに地下へと続く階段を下りていた。

「……どうやら、あの奇妙な白い階層はあれで終わりのようだな」

神宮寺蒼太が、階段の先に見えてきた荒々しい岩肌を見つめながら呟いた。

拓也も、ズキズキと痛むこめかみを押さえながら静かに頷く。第三層でバグを修復した結果、迷宮の免疫機構として現れた第四層。そこでの『解析』と『ハッキング』による死闘は、少年の脳に限界ギリギリの負荷をかけていた。

「ええ……。迷宮も、俺たちの排除方法を変えたみたいです」

「排除方法を変えた?」

風間蓮が怪訝そうに眉をひそめる。

「はい。第四層のように『規則正しいシステム(暗号)』で俺たちを囲い込めば、逆に俺に読み解かれ、利用されてしまう。……迷宮はその事実を学習したんだと思います」

階段を下りきり、第五層を隔てる重厚な石扉の前に立つ。

扉の向こう側からは、システム的なエラー音などではない、獣の咆哮にも似た荒々しい風の音が轟々と響いていた。

「俺の眼に視える扉の向こう側の魔力は、もう『読み解けるようなコード』じゃありません。ただ無秩序で、圧倒的で、純粋な……『暴力』そのものです」

拓也の言葉に、風間は長槍を肩に担ぎ直して不敵に笑った。

「へっ、上等だ。小難しい理屈を捏ね回す頭脳戦も嫌いじゃねえが、やっぱり迷宮ダンジョンってのは、血と泥に塗れたバケモノの巣窟じゃなきゃ面白くねえ」

拓也が重い石扉を押し開けた瞬間。

四人の視界を覆い尽くしたのは、荒れ狂う猛吹雪と、鋭くそそり立つ無数の氷柱が乱立する『極寒の氷雪地帯』だった。

「うおっ……! なんだこの寒さは!」

風間が身震いし、瀬戸玲奈が即座に杖を掲げてパーティ全体に保温の魔法を展開する。

ヒュオォォォォォ……ッ!

視界を遮るほどの吹雪。足元は滑る氷の床。

息をするだけで肺が凍りつくような過酷な自然環境が、探索者の体力と気力を容赦なく削り取りにきている。

(第三層の時みたいに、環境そのものを書き換えるような真似はもう無理だ。この吹雪には、システム的な法則性がない。完全に『自然の暴威』そのものだ……!)

ならば、どうする。

拓也は短剣を握り締め、荒れ狂う吹雪の奥へと意識を集中させた。

『深層言語・限定解析』の矛先を、迷宮のシステムそのものではなく、眼の前に迫る「物理的な脅威」――魔獣の筋肉の動き、魔力の流れ、そして刹那の未来を読むための【絶対の戦術眼】へと完全に切り替える。

「……来ます! 前方十メートル、吹雪の向こう側から、巨大な質量の魔獣が三体!」

拓也の鋭い警告が響く。

「構えろ!」

神宮寺が大盾を前に出し、重心を落とす。

直後、白い吹雪を突き破って現れたのは、体長四メートルを超える純白の巨熊――『ブリザード・グリズリー』の群れだった。

分厚い毛皮は氷の鎧のように硬化しており、巨大な爪からは触れるもの全てを凍らせる冷気が立ち上っている。

迷宮の免疫機構が『秩序』を捨て、純粋な『暴力と殺意』で拓也たちを圧殺しにきたのだ。

「グルォォォォォォッ!!」

鼓膜を破るような咆哮と共に、正面のグリズリーが神宮寺に向かって巨大な丸太のような腕を振り下ろす。

「『プロテクション』!」

神宮寺が展開した魔力防壁と、巨熊の氷の爪が激突する。

ガァァァンッ!! という重低音が鳴り響き、神宮寺の足元の氷が砕け散った。

「くっ……! なんという馬鹿力だ。先ほどの機械的な人形とは重さが違う!」

「神宮寺さん、耐えて! 風間さん、左へ回ろうとしている個体に牽制を!」

拓也は戦場全体を俯瞰し、魔獣の体内に渦巻く魔力と筋肉の収縮を完全に読み取っていた。

コードを書き換えることはできなくても、敵がどう動き、どこに力が集中しているかは手に取るように分かる。

(魔力波形が喉元に集まっている。正面の奴は、次に『冷気のブレス』を吐くつもりだ!)

「神宮寺さん! 敵の喉元に魔力が集中しています、二秒後にブレスが来ます! 盾の角度を上へ三十度傾けて、冷気を上空へ逸らして!」

「二秒後……ッ、承知した!」

拓也の完璧な予測コール。

神宮寺が盾の角度を微調整した直後、グリズリーの口から絶対零度の吹雪ブレスが放射された。

まともに受ければ盾ごと凍りつく一撃だったが、傾斜した防壁によって冷気は上空へと綺麗に受け流され、神宮寺への被害は完全にゼロに抑えられた。

「今です! ブレスを吐き終えた瞬間、敵の胸部の筋肉が弛緩します! 風間さん!」

「待ってましたァッ!!」

左の個体を牽制し終えた風間が、氷の床をスケートのように滑りながら神速で踏み込む。

拓也の眼が的確に見抜いた、ブレス直後の『装甲の弛緩』。

風間の長槍が、そのほんの数センチの隙間を違わず貫き、正面のグリズリーの分厚い氷の鎧を粉砕して心臓を的確に穿った。

「ギャガァァァッ!?」

一体が断末魔を上げて崩れ落ちる。

だが、残る二体が怒り狂い、今度は後衛の拓也と瀬戸を目指して同時に跳躍してきた。

「瀬戸さん、三歩右へ! そのまま前方へ魔力弾の牽制を!」

「はいッ!」

拓也の指示通りに瀬戸が移動すると、その直前まで彼女が立っていた場所を、巨熊の爪が抉り取った。

拓也自身も、魔獣の着地軌道を先読みし、最小限の動きで氷柱の影へと滑り込む。

(デタラメな腕力と速度だけど、動きの『予備動作』は確実に存在する。……俺の頭と、プロの力なら、全部いなせる!)

「風間さん! 右の個体、着地の衝撃で一瞬だけ右前足の関節が浮きます! そこを払って体勢を崩して!」

「へっ、見え透いてんな!」

風間の槍が巨熊の関節を的確に払い、巨体がバランスを崩して氷の上に倒れ込む。

「神宮寺さん、倒れた個体の頭部へ盾による重撃シールドバッシュを! 瀬戸さんはその瞬間に、最後の一体の視界を光魔法で奪ってください!」

盾の重撃が巨熊の頭蓋を砕き、同時に瀬戸の閃光が最後の一体の目を眩ませる。

戦場を支配する、流れるような戦術の連鎖。

拓也は自らも短剣を構え、視界を奪われて暴れる最後の一体の死角へと飛び込んだ。

(筋肉の収縮、重心の移動……今だ!)

巨熊が盲目に腕を振り回したその隙を縫って、拓也の短剣が、硬化した毛皮の隙間――首元の動脈へと深々と突き刺さった。

ドスゥゥゥンッ……。

圧倒的な暴力を誇っていた三体のブリザード・グリズリーが、ものの数分で完全に沈黙し、純度の高い魔石へと変わった。

「……ふぅ。やれやれ、相変わらず冷や汗をかく暇もねえくらい完璧な指示だぜ」

風間が槍についた血を払いながら、白い息を吐いて笑う。

「敵の筋肉の動きや魔力波形を読み取り、それを『私たちの動き』に完璧に翻訳して伝えてくれる。……拓也殿の戦術眼は、もう熟練のプロすら遠く及ばない領域にあるな」

神宮寺も大盾を下ろし、頼もしげに拓也の肩を叩いた。

小細工なしの、純粋な身体能力と魔力による暴力。

しかし、どんなに理不尽な魔獣が現れようとも、拓也の『解析』による完璧な状況把握と、それに応えるプロたちの圧倒的な武力があれば、死線すらも一方的な蹂躙へと変わる。

「……三十五層に比べれば、まだ序の口です。姉ちゃんは、こんな暴力が何十倍にもなった地獄を、たった一人で歩いていたんだから」

拓也は、氷の上に落ちた魔石を拾い上げながら、猛吹雪の奥へと鋭い視線を向けた。

『バグ』や『ハッキング』で迷宮を騙すのではない。

凡人の執念と、極限まで研ぎ澄ませた戦術眼。それこそが、彼が天才の姉の背中を追うための、最大の武器だった。

「行きましょう。どんなバケモノが来ようと、俺が全てを読み切って、皆さんの刃を届けます」

吹雪が荒れ狂う原初の迷宮。

少年指揮官と日本の最高峰たちは、さらなる深淵を目指して、その過酷な雪原を力強く歩み始めた。

純粋な戦術司令塔として覚醒した拓也と、プロたちの熱い共闘はここからさらに加速します。

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