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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第二章:少年の探索者編

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第121話:鉄壁の再構築、極限の指揮官

迷宮の第二層は、第一層の単調な岩肌の坑道とは異なり、複雑に入り組んだ地下遺跡のような様相を呈していた。

あちこちに崩落した石柱が転がり、発光苔の青白い光を遮る深い影が、死角となって探索者の歩みを阻む。

空間全体に漂う魔力の澱みも一段と濃く、ただ呼吸をするだけで肺の奥が焼けるような重圧感があった。

しかし、その閉鎖的で陰鬱な空間を進む新生パーティの歩みには、一切の躊躇いがなかった。

「……分岐路、右は罠です。魔力の流れが不自然に途切れています。左の通路へ。三十メートル先に熱源反応が三つ、待ち伏せています」

先頭を歩く神宮寺の背後で、如月拓也が静かに、だが確かな声で指示を飛ばす。

彼の瞳の奥では『深層言語・限定解析』が常時起動しており、遺跡の構造、魔力の滞留、さらには壁の向こう側に潜む魔獣の呼吸のタイミングまでが、青い光のコードとなって網羅されていた。

「了解した。左の通路だな」

日本の最高峰を誇る盾使いである神宮寺蒼太は、15歳の少年の指示に一切の疑問を抱くことなく、大盾を構えて迷いなく左の通路へと踏み込んだ。

直後、待ち伏せていた影が暗闇から飛び出してくる。

第二層の難敵――『アーマード・リザードマン』。

硬質な黒い鱗に覆われた二足歩行の爬虫類型の魔獣であり、手には迷宮内で拾い集めたとみられる錆びた大剣や戦斧を握りしめている。

知能が高く、三体が完璧な連携を組んで前衛の神宮寺をすり潰そうと、重い得物を同時に振り下ろしてきた。

「来るぞ。……『プロテクション』!」

神宮寺が重厚な詠唱とともに、半透明の強力な魔力防壁を展開する。

これまでの彼であれば、三体同時の重撃を真正面から受け止め、強靭な筋力と魔力で「耐え凌ぐ」のが定石だった。

だが、その防壁が形成されるコンマ数秒前。

拓也の脳を駆け巡る解析スキルが、神宮寺の魔力展開プロセスにおける「微小な非効率」を完全に読み取っていた。

「神宮寺さん! 魔力の起点を盾の中心から右下へ十センチずらして! 防壁の角度を左へ十五度傾斜させます!」

「――ッ! 御意!」

極限の死線の中。

普通であれば、長年染み付いたプロの型を瞬時に崩すことなど不可能だ。

しかし神宮寺は、先ほどの風間の一撃を間近で見ていた。拓也の『目』が、自分たちプロのさらに先、迷宮のシステムの限界値を見通していることを完全に信じ切っていた。

神宮寺は拓也の指示通り、瞬時に魔力の重心を右下へとずらし、盾の角度を僅かに傾けた。

ガァァァンッ!!

三体のリザードマンが振り下ろした大剣と戦斧が、青白い防壁に激突する。

しかし、いつもなら鼓膜を破るような衝撃音と、神宮寺の足元を削るほどの重圧が発生するはずのその瞬間。

「……なっ!?」

神宮寺自身が、最も驚愕の声を漏らした。

重撃の運動エネルギーが、防壁に「受け止められる」のではなく、傾斜した魔力の表面を滑るようにして完全に『逸らされた』のだ。

衝撃を逃がされた三体のリザードマンは、全力で振り下ろした反動を殺しきれず、無様に体勢を崩して前のめりに倒れ込む。

神宮寺の腕には、衝撃の余波すらほとんど伝わっていなかった。

「魔力の均等展開は、防御力は高いですが反動も真っ向から受けます。相手の攻撃ベクトルの合流点に合わせて防壁の厚みと角度を変えれば……衝撃はゼロに等しくなる」

拓也の早口の解説が終わるよりも早く、好機を逃さぬ神風が吹き荒れた。

「へっ、最高の崩しだぜ、指揮官殿ッ!」

アタッカーの風間蓮が、神宮寺の脇をすり抜けるようにして神速の踏み込みを見せる。

先ほど拓也によって魔力回路の『淀み』を調律され、自己の限界を突破した風間の槍術は、もはや第二層の魔獣の動体視力で捉えられる次元に無かった。

閃光。

ただ一振りの槍の軌跡が、体勢を崩した二体のリザードマンの硬質な鱗を紙屑のように貫き、その命を瞬時に刈り取る。

「チッ、一匹残ったか!」

風間の槍が届かなかった最後の一体が、仲間の死に激昂し、後衛にいる拓也と瀬戸を目掛けて血走った眼で跳躍してきた。

鋭い爪が、拓也の喉元へと迫る。

しかし、少年の瞳に恐怖の色は微塵も無かった。

(軌道は解析済み。筋肉の収縮率から計算して、奴の着地点はここだ)

「瀬戸さん、俺の右足にだけ、瞬発的な魔力強化を!」

「はいッ!」

瀬戸玲奈の杖から放たれた支援魔力が、拓也の右足の筋肉をピンポイントで爆発的に強化する。

拓也は跳躍してくる魔獣の軌道を数ミリの誤差もなく見切り、強化された右足で鋭く地を蹴って、自ら魔獣の懐へと飛び込んだ。

「ハァッ!」

すれ違いざま。

アーマード・リザードマンの強固な鱗が唯一途切れる、首関節のわずか一ミリの隙間。

拓也が握り締めた銀光の短剣が、その絶対の死角へと吸い込まれるように突き刺さり、魔獣の延髄を正確に切断した。

ズシン、と重い音を立てて、最後の一体が光の粒子となって崩れ去る。

静寂が戻った第二層の坑道で、拓也は短剣についた体液を払い、小さく息を吐いた。

「……ハァ、ハァ……。少し、短剣を差し込む角度が浅かった。次はもっと最適化します」

自己評価を呟く少年の背中を、プロの探索者たちは信じられないものを見るような目で見つめていた。

「……冗談じゃないぜ」

風間が槍を肩に担ぎ、呆れたように天を仰ぐ。

「俺たちの技術の無駄を完全に削ぎ落として、限界以上の火力を出させるだけじゃ飽き足らず、神宮寺のオッサンの絶対防壁すらもノーダメージ仕様に再構築しやがった。おまけに、自分の戦闘の動きまでコンマ一秒の最適解で動いてる」

「ええ……拓也殿の指示通りに支援魔法を展開すると、私自身の魔力消費量も、普段の半分以下に抑えられています。まるで、迷宮の魔力そのものを味方につけているような……」

瀬戸もまた、自身の杖を見つめながら震える声で同意した。

ただの秀才の迷宮学徒だった少年。

それが、『深層言語・限定解析』ということわりの力と結びついた結果。

彼は今、この最高峰のパーティをただの「強い集団」から、「迷宮のシステムすらも上書きする無敵の軍団」へと変貌させようとしていた。

神宮寺が、大盾を下ろして拓也の前に歩み寄る。

その表情には、年端もゆかぬ少年に対する過保護な庇護欲などはもう一切なく、一人の絶対的な『指揮官』に対する深い敬意が刻まれていた。

「拓也殿。君は以前、自分にはお姉様のような絶対的な武力はないと言っていたな」

「……はい。姉ちゃんは、俺なんかがいくら計算しても届かない、別次元の天才ですから」

拓也は、Fランクの絶望から泥を舐めて強くなった三月の本当の苦労を知らないまま、神格化された姉の背中を想って静かに答える。

「だが、君が私たちに与えてくれるこの『最適化』は、間違いなく君にしかできない戦い方だ。たった数時間の連携で、私は自分の盾が、今までで一番軽く、そして強靭に感じている」

神宮寺の確かな賛辞に、拓也は少しだけ照れたように俯き、そしてすぐに顔を上げた。

「俺は、凡人です。だからこそ、頭を使って、理屈を捏ねて、皆さんの最強の力に縋り付くしかないんです。……姉ちゃんが囚われている深層に、一秒でも早く辿り着くために。俺は、迷宮の全てを解析し尽くします」

「いい覚悟だ。ならば私たちも、君のその頭脳にどこまでも応えてみせよう。……行くぞ、指揮官殿。第二層の踏破は、すぐそこだ」

神宮寺が力強く頷き、風間が不敵に笑い、瀬戸が優しく微笑む。

天才である姉に追いつくための、凡人の執念。

それは武力による蹂躙とは全く異なるアプローチでありながら、確実に、そして急速に、迷宮の深淵を恐怖させるほどの『力』となって結実し始めていた。

四人の足音は、もはや迷いなど一切なく、暗闇の奥深くへと真っ直ぐに続いていくのだった。

第121話をお読みいただきありがとうございました!

拓也の『深淵の調律者チューナー』としての能力が、風間の攻撃だけでなく、神宮寺の防御、瀬戸の支援、そして自身の戦闘行動の全てを完璧に「最適化」するプロセスを描写いたしました。

プロたちを率いて迷宮のシステムすら凌駕していく拓也の成長、引き続き楽しんでいただければ幸いです!

もしよろしければ、ページ下部より**【評価やブックマーク】**での応援をよろしくお願いいたします!

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