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第八話

身長百七十五センチ、可愛らしい顔立ちの河野は、今まさに真剣な表情で弓を構えていた。

士郎はその距離を見て、思わず声をかける。

「ここじゃ遠くないか? もう少し前に出てもいいんだぞ」

しかし河野は眉一つ動かさず、

「すみませんが今、集中してるんで話しかけないでください」

士郎はその迫力にビビり、

「はい、すみません」

と即答した。

次の瞬間――

「うわぁ〜オン‼」

河野が謎の叫びとともに矢を放つ。

矢は空気を裂き、瞬きする暇もなく的のど真ん中へ突き刺さった。

士郎たちは目を丸くする。

「す、凄いな……河野君」

河野はキョトンとした顔で、

「これって凄いんですか?」

「凄いよ、ホントに……」

「……ホントですか? 僕、今褒められているんですか?」

「褒めてるけど……今なんか会話に時差がなかった?」

河野は片倉に向き直る。

「時差って何ですか?」

「時間のずれだね。今、河野君が反応するまでに時間があったから、そのこと言ってんだよ」

「それ意味知ってましたか?」

片倉は笑いながら、

「知ってるから説明したんだよ」

「あーそうですね」

と、なぜか納得していた。

◆河野の彼女、はる登場

「あっ、河野こんなところにいたの?」

可愛らしい声が響き、振り返ると、これまた可愛い顔をした少女が立っていた。

「あっ、はるちゃん」

河野が嬉しそうに言う。

少女は士郎たちに丁寧に頭を下げた。

「初めまして。私、河野の彼女の“はる”と申します」

「河野! お前彼女いるのか‼」

士郎が叫ぶと、河野は淡々と、

「はい」

と答えた。

◆はる、天羽家の面々を褒めちぎる

「申し遅れました。私は天羽家の城主、天羽長経の娘、天羽経丸です」

はるは驚き、深々と頭を下げた。

「あなた様が、あの可憐で戦に強く、この国を守り抜いている天羽経丸様ですか⁉」

「可憐だなんて……そんなこと言ってもらえて光栄です」

片倉が名乗ると、

「あなたが安房の国一イケメンで、戦に滅法強い天羽家最強の家臣、片倉様ですか?」

片倉は顔を真っ赤にして照れた。

「そんな褒めてもらえると照れますね」

◆士郎、まさかの評価

士郎は胸を張り、カッコつけながら名乗る。

「それがし、安房が産んだ英雄・外岡士郎。人呼んで安房の人気者外岡士郎。ちなみに妹は安房の天才・外岡凛です」

(さぁ、どんな褒め言葉が来るんだ……?)

期待に胸を膨らませる士郎に、はるは真顔で言った。

「もしかして……安房の国一ダサい男として有名な外岡士郎さんですか?」

士郎は盛大に転んだ。

片倉はゲラゲラ笑いながら、

「ピンポーン! せいかーい‼」

「おい片倉! “ピンポーンせいかーい”じゃねぇだろ‼」

はるは淡々と続ける。

「本物は噂よりも……」

「噂よりも?」

「ダサい男ですね」

全員が吹き出した。

◆はるの“愛”と士郎の悲鳴

河野が嬉しそうに言う。

「ねぇ経丸さん。この子、最近僕と一緒に暮らし始めた僕の自慢の彼女なんだ。めちゃくちゃ可愛いでしょ」

「どこが可愛いねん‼ めちゃくちゃ失礼な子じゃないか‼」

士郎は河野にヘッドロックをかけた。

「士郎さん、いきなりなんですか‼」

「とりあえず謝れ‼」

「なんだか分からないけどすみません」

はるは士郎を鋭い目で睨んでいた。

経丸は優しく微笑む。

「本当に可愛いお方ですね。河野さんは幸せ者ですね」

「うん、めちゃくちゃ幸せだよ」

はるは赤面しながら、

「バカ……」

と呟き、河野の頭を撫でた。

「河野は皆さんにご迷惑おかけしておりませんか?」

はるの質問に、士郎たちは一瞬固まった。

(納屋燃やしました、なんて言えるわけねぇ……)

しかし――

「実はここにあった納屋を燃やしちゃったんだ」

河野が自白した。

「お前が言うんかい‼」

士郎は叫んだ。

はるは真剣な表情で頭を下げた。

「申し訳ございません。この子、少し天然なんですよ」

(いや、納屋燃やすのは“天然”のレベルじゃねぇ……)

全員が心の中でツッコんだ。

士郎が河野にツッコむと、はるは士郎の足を踏んだ。

「足踏んでる‼ おい、それがしの右足踏んでるって‼」

はるは無視してミュージカル調で歌い出す。

「河野の〜責任は〜私の責任でもあ〜る〜〜〜」

「酒飲んできたんかあんた‼」

はるは両足で士郎の足を踏みつけた。

「痛ぁぁぁぁぁ‼」

士郎は倒れ込む。

はるは涙を浮かべる。

「自分のこともできないのに、私のことばかり考えてくれるから……」

「いやいや‼ 泣きたいのはそれがしだよ‼  足めちゃくちゃ痛いんだよ‼」

はるは無言で、もう一個石を取り出した。

「嘘ぉ……もう一個持ってたんか……」

はるが河野に抱きつく。

「怪我だけはしないようにね」

「うん、大丈夫‼」

河野は真剣な表情で言った。

「後、はるちゃんに伝えたい事がある」

「えっ、何?」

「僕、はるちゃんだけじゃなく、カブトムシやクワガタの事も考えてるから」

「それ言う必要ないセリフだろ‼  台無しじゃボケェ‼」

はるは士郎の足に石を落とした。

「いてぇぇぇぇぇぇぇ‼」

はるは士郎を無視して河野の頭を撫でる。

「私だけじゃなく、カブトムシやクワガタのことも考えてあげられるなんて……河野は本当に優しい子なんだから」

「全肯定過ぎるだろ‼」

はるは真剣な表情で士郎を見る。

「愛している人のこと全肯定なの当たり前じゃないですか。  私がこの世で一番の河野の味方なんですから。人間、肯定されないと生きていくの辛いんですよ」

士郎は思わず言った。

「すげぇわ……本当にすげぇわ……」

すると河野が経丸に向き直り、

「そういえば、家臣ってどういう意味ですか?」

全員が盛大にコケた。



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