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“無能令嬢”

「言われた事さえ出来ないの!?本当にお姉様ったら役ただずなのね!」



そんな罵倒を私に言い放ったのは血の繋がった、実の妹である。



本来であれば実の姉になんてことを、と騒ぎになりそうだがこの家ではそれが当たり前だった。



冷たい態度をとる両親。

汚れた物を見るかのような視線を送る姉。

居なかったように空気扱いの兄。

あからさまに見下している妹。



そしてこの家に仕えるもの達ですら嘲笑うかのような態度をしてくる執事やメイドたち。



私ーアリアナ・ディーファスは伯爵家の次女としてこの世に生を受けた。



しかも、創造神としてこの国で崇められている光の女神ティア様から力を授かった一族の分家である。



そのため、ディーファス家に生まれたものは代々治癒の力を持っていた。



本来なら優遇されるべき家系の人間。

そんな私が冷遇された日々を送っているのには主に2つの理由がある。




1つ目は治癒の力が極端に弱いこと。

長女である姉は生まれ持った美貌と治癒能力で“攻撃の加護”をもった一族の候爵家への嫁ぎが決まっている。

長男の兄はこの家を継ぐことが決まっており、

三女である妹は姉兄の中で最も“治癒の加護”を強く受け継いでおり、公爵や王族との婚約の話も上がっている程だ。




そんな優秀なる子供たちの中で唯一治癒の力がほとんど無い次女。



1度瘴気に晒されて枯れそうになっていた花を治癒した事があったがそのレベルであり、両親からは呆れられてしまった。




そんな私の社交界での呼び名は“無能令嬢”




由緒ある家系に生を受けながら、その力を殆ど継ぐことなく誕生した無能な令嬢。




そんな私が居るだけで家族としては不名誉な事だった。





さらに私への冷遇が酷くなったもう1つの理由が生まれ持った痣にあった。




私は生まれつき、胸元に十字架のような痣がある。



光の女神ティア様を祀るこの国、聖ピューアライト国の人間からすると魔物の生みの親である闇の男神ダイト様の写し身である吸血鬼が好む十字架と薔薇は禁忌の物とされていた。





私はどちらも綺麗でステキだと思うのだけど..。






この国では十字架の製造、薔薇の花を育てること、どちらも他国から持ち込むことが禁止されている。






無能な上に生まれ持って十字架の痣を持つ令嬢。




それが私がこの国で冷遇されている理由だった。




そんな私はこの家でメイド以下の扱いを受け、妹の癇癪を宥める、所謂ストレス発散の標的となっていた。




「貴方のせいでせっかくの紅茶が不味くなるじゃない!!なんだ貴方なんかが私の姉なのよ!」


「ちょっと!?紅茶がドレスにかかったじゃない!何しているのよ!!」




理不尽な理由で怒鳴られ、叩かれ、折檻され。

傷だらけの身体では痛みでろくに紅茶を運べもしない。



しかし、家族はそれを分かった上でやっている。

痛みで失敗したら、またストレス発散ができる口実を作るために。




私を空気の用に扱う兄が1番マシだろう。

まぁ、「僕にアリアナなんて妹はいない」と言われた時はショックだったが。




それでも終わりの見えない痛みを与えられるよりかはマシかもしれない。





そんな絶望と地獄の中に私は居た。









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