表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/35

科学の傑作と新時代の剣

ブラッド・レイヴンの機関室は、臨時でミンの作業場と化していた。雷光石を熱源とし、魔法蒸気機関の動力パイプを加工設備として利用する、異例の光景が繰り広げられていた。熱と油、そして雷光石から発せられる青白い光が室内に満ちている。

「静かにしろよ、レン。この作業は海魂を使う儀式よりも精密なんだ」ミンは眼鏡をかけ直し、集中力を高めた。

レンは黙って作業を見つめていた。彼女の**蛇剣じゃけん**は分解され、部品がテーブルに並べられている。

「なぜそんなに複雑なんだ?魔導士なら、海魂で素材を強化するだけだろう」レンは懐疑的な目を向けた。

「違います」ミンはきっぱりと言った。「あなたの蛇剣の真の問題は、あなたが持つスピードが、従来の素材の摩擦抵抗と関節の耐久限界を超えていることです。特に、あなたが高速で振動させる時、各連結部にかかるGは、通常の鉄では耐えられません」

ミンは雷光石の微細な結晶を、元の連結部の間に挟み込んだ。

「雷光石は、その電気伝導率と共振特性を利用して、関節部の摩擦を電気的振動に変換し、打ち消します。そして、チタン合金とナノベアリングを組み込むことで、この剣は音速でしなっても、磨耗しない究極の武器に生まれ変わる」

ミンは、圧縮された魔法蒸気の熱を利用して、自作のチタン部品を蛇剣の骨格に融合させていく。その手つきは、荒々しい機関士ではなく、まるで外科医のようだった。ジーロは、その様子を船長室の扉から見て、ただ感心するばかりだった。

数時間後、作業が完了した。

レンは、新しく生まれ変わった蛇剣を手に取った。見た目は以前とほとんど変わらないが、全体が洗練され、連結部に埋め込まれた雷光石の結晶が、微かに青い光を放っている。重量が以前よりも軽くなり、彼女の手に吸い付くようだ。

「これが…あんたの科学の力か」

「理論上は、以前の三倍の速度でしなり、摩擦音はゼロになります。後は、あなたがそれを使いこなすだけです」ミンは誇らしげに言った。

レンは甲板へ上がり、試しに剣を振るった。

ヒュッ!

空気が切り裂かれる音はしたが、従来の蛇剣が発していた、金属が擦れるような甲高い摩擦音は完全に消えていた。彼女が全速力で剣を振るうと、剣は残像を残しながら、まるで水のように滑らかにしなる。

「速い…!こんな感覚は初めてだ…!私の体の一部になったようだ!」レンは歓喜の声を上げた。以前は、速く動かすほど武器に抵抗を感じたが、今は、彼女の意思が直接剣の動きに反映されているかのようだ。

「これが摩擦抵抗ゼロの恩恵です。あなたの直感を、物理法則が後押ししている」ミンが説明した。

その時、ミンは自身の腕にも目をやった。彼は蛇剣の改良で余ったチタンと、機関の古い圧力計の部品を組み合わせて、小さな多機能リストバンドを作り上げていた。それは、小型の方位計、魔力感知計、そしてワイヤードリルを兼ね備えた、彼自身のささやかな武装だった。

レンはミンの顔を真剣に見つめた。

「借りを作った。これで、あなたたちの船に残る理由ができたわ。この剣で、私は真の正義を証明する」

「いいえ、レン。私たちはもう仲間です」ミンは穏やかに笑った。

ジーロが舵輪を叩いた。「よし!これで俺たちの海賊団は完璧だ!技術、剣、海魂!さあ、新世界へ向けて、全速前進だ!」

ブラッド・レイヴンは、ミンの科学とレンの剣という新たな力を搭載し、アゼオスを縦断する壮大な航海へと乗り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ