雷雲の島と協働作業
ブラッド・レイヴンは、常に黒い雷雲に覆われた**『雷雲の島』の岸辺に錨を下ろした。この島には、大気中の魔力と電気が凝縮した特殊な鉱物、『雷光石』が豊富に存在するという。ミンは、レンの蛇剣を改良し、自身の科学技術**の力を完全に引き出すために、その石を必要としていた。
島の空気は常に湿気を帯び、微かに硫黄の匂いがする。ミンが持つ精密な電子機器や方位磁石は、島の強烈な磁場によって機能停止していた。
「島の魔力が強すぎる。俺の海魂の風の制御も乱れそうだ。船は俺が守る。探索はお前たち二人で行け」ジーロは警戒心を表に出しながら指示した。
「分かったわ」レンは素早く頷き、腰に蛇剣を巻き付けた。彼女はミンを一瞥した。「あんたは足手まといにならないように注意しろ。私の正義の邪魔はさせない」
「ご心配なく。私は足手まといではなく、**『戦略的資源』**です」ミンは冷静に言い返し、道具袋を肩にかけた。
二人は島の奥深くへと進んだ。島の地形は険しく、苔むした岩と、雷光を浴びて青白く光る奇妙な植物が茂っていた。
「レン、君の動きは本当に精密だ。まるで計算された軌道を描いているようだ」ミンは歩きながら話しかけた。
「口を閉じろ。私はお前のような計算屋とは違う。私の動きは経験と直感だ。お前はただの数字と理論の奴隷だろ」
「いいや。理論は予知だ。私は君の直感を、より確実な勝利に変えることができる。それこそが、私たちが協力する意味だ」
その時、地面が激しく振動した。洞窟のような岩の裂け目から、巨大な**雷電蜥蜴**が姿を現した。体長は五メートルを超え、全身が硬い鱗で覆われ、その鱗の間からは青白い電気がスパークしていた。
「雷光石の番人だ!下がれ、ミン!」レンは即座に臨戦態勢に入り、蛇剣を構えた。
レンは驚異的なスピードで飛び出し、蜥蜴の弱点である首元を狙ったが、蜥蜴の反応は彼女の予想を上回った。蜥蜴は全身の魔力を解放し、電気のドームを発生させた。
バチッ!
レンはドームの外側で弾き返され、地面に叩きつけられた。全身に痺れが走り、蛇剣を取り落としそうになる。
「なんて出力だ…純粋な魔力に加えて、周囲の電気をも取り込んでいる!」レンは苦悶の声を上げた。
ミンはすぐに状況を把握した。この雷電蜥蜴は、島の雷光石と共鳴し、無限に近い電力を引き出している。剣や魔力で打ち破るのは危険すぎる。
「レン!動くな!雷光石を地面に流す!」
ミンは叫び、道具袋から取り出した銅線の束を、洞窟の入り口近くに露出していた雷光石の鉱脈に急いで接続した。そして、その銅線のもう一方の端を、湿った大きな岩に結び付けた。
「理論の出番だ!」
雷電蜥蜴は最後の、最大の電撃を放とうとチャージを開始した。蜥蜴の体が黄金色に光り輝く。そのエネルギーは致命的だ。
ミンが最後の接続を完了した瞬間、蜥蜴の放った巨大な雷撃は、レンを直撃する代わりに、ミンが作り出した**『人工的なアース(接地)』**へと一気に吸い込まれていった。
ドォオオオオン!
岩が爆発し、電撃が安全に大地へと放出された。魔力を失った雷電蜥蜴は、全身の電力を使い果たし、動かなくなった。
レンは息を呑み、ミンを見た。彼は顔に煤をつけ、しかし満足そうな表情を浮かべていた。
「…あんた、本当に何者なの?それは海魂じゃない…」
「ええ、レン。これは電気工学と物理学です。私は敵の力ではなく、敵の構造を破壊します」
レンは蛇剣を拾い上げ、ミンのそばに横たわる、静まり返った雷電蜥蜴の死骸を見下ろした。彼女の口元に、微かな笑みが浮かんだ。
「分かったわ。あんたの理論は、私の正義に使える。さあ、雷光石を回収するぞ」
二人の協力関係は、確固たるものとなった。




