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剣と科学、そして海賊の正義

ブラッド・レイヴンの船室で、レンは怒りに満ちた目でジーロとミンを睨みつけていた。彼女は海賊船にいること自体が耐えがたい屈辱だと感じていた。

「私をすぐに降ろせ。私は海賊ではない、賞金稼ぎだ!お前たちのような無法者を捕まえるのが私の仕事だ!」

ジーロは甲板の手すりに寄りかかり、肩をすくめた。

「それは残念だな。お前は優れた剣だ。この船に必要な力だ。なぜそんなに海賊を憎む?もしかして、お前の故郷を襲ったのは海賊か?それとも、その正義の信念は、世界政府のプロパガンダに毒された結果か?」

レンの表情が凍りついた。彼女は短く、感情を押し殺した声で答えた。

「私の村は、海軍が海賊と呼ぶ者たちによって滅ぼされた。力なき者を蹂艙じゅうりんする者が、私の敵だ。だから私は賞金稼ぎとなり、この世界に秩序をもたらすと誓った!」

ジーロは笑みを消し、静かに反論した。

「秩序だと?世界政府の**『秩序』とは、弱者から搾取し、都合の悪い真実を隠蔽するシステムのことだ。俺たちは確かに海賊だが、その鎖を断ち切るために、自らの命を懸けている。それは、政府という名の巨大な暴力団に立ち向かう、別の形の正義**ではないのか?」

レンは黙り込んだ。彼女の正義は単純明快だったが、ジーロの言葉は彼女の心に複雑な波紋を投げかけた。彼女は目の前の男が、酒場で出会った野蛮な海賊とは全く違うことを理解していた。

その時、ミンが口を開いた。彼の声は落ち着いており、感情的ではなかった。

「あなたの蛇剣は素晴らしい。しかし、無駄が多い。その関節の部品は、定期的に交換が必要でしょう?今の素材では、高圧な環境下での耐久性に限界がある。あなたの動きの俊敏さが、かえって武器の消耗を早めている」

レンは驚いて彼を見た。自分の武器の秘密を、初対面の者が、それも一目で言い当てたのだ。

ミンは続けた。「私は、あなたの蛇剣を、私の世界のチタン合金とナノベアリング技術を使って改良できる。そうすれば、あなたの戦闘効率は二倍、いや三倍になる。あなたの正義を貫くための**『剣』**を、私がさらに強靭にすることができる」

それはレンにとって最も魅力的な提案だった。彼女の目的は、単に海賊を捕まえることではなく、圧倒的な力を持って世界を変えることだった。

「私の海魂は風を操る力だが、ミンの科学は、この世界に存在しない**『物質の海魂』**だ。俺たちが組めば、海軍の将校も、四皇も、誰も俺たちを止められない」ジーロが追い打ちをかけるように言った。

その時、船外から鋭い汽笛の音が響いた。

「船長!まずい!巡視艇が三隻、桟橋に停泊しているぞ!彼らは酒場の騒ぎで、特定の賞金稼ぎを探しているようだ!」見張りの声が緊張を伝える。

レンははっとした。彼女は酒場で血の爪海賊団を壊滅させたばかり。今、港に留まれば、海軍に捕まり、彼女の全ての努力が無になる。海軍は必ずしも正義の味方ではないことを、彼女は知っていた。彼らに捕まれば、彼女は賞金稼ぎではなく、騒動の首謀者として扱われるだろう。

レンはジーロとミンを交互に見た。海賊の船だが、今は最も安全な逃げ場だ。そして、ミンの言葉は、彼女の心の奥底にある**『強さへの渇望』**を刺激していた。

「…分かった」レンはついに口を開いた。「トウカツ港から出るまでだ。あなたたちの海賊船に乗せてもらう。その代わり…ミン、本当に私の蛇剣を改良できるのか?もしそれが嘘だったら、私はまず、あなたたち二人を捕まえて、海軍に突き出す」

ミンは微笑み、自信に満ちた目で答えた。

「約束します。さあ、ジーロ船長。全速力でこの港を出ましょう。私たちは、次の冒険へ向かうのです」

ブラッド・レイヴンの魔法蒸気機関が唸りを上げ、二人の男と一人の女、という異色の海賊団は、追っ手を振り切るべく、大海原へと船出した。

[終わり]

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