トウカツ港と賞金稼ぎの少女
ブラッド・レイヴンは、霧と硫黄の匂いが立ち込めるトウカツ港に入港した。この港は、新米の海賊と落ちぶれた賞金稼ぎ、そして世界政府の監視を逃れた無法者たちが集まる、アゼオスで最も危険で活気のある場所の一つだ。船着き場には、奇抜な装飾を施された船や、錆びついた軍艦の残骸がひしめき合っている。
「これがトウカツ港か…まるで地獄の縁に立つ市場みたいだ」ミンは眼鏡の奥で目を見開いた。
「悪くないだろう?」ジーロは楽しそうに笑い、コートの襟を立てた。「ここには**『剣』が必要だ。機関士のお前と船長の俺**だけでは、この先の大海原は乗り切れない。俺の背中を任せられる、優秀な戦闘員を探すぞ」
二人は港の奥地にある、**「サビた樽亭」**という名の、最も騒がしい酒場へと向かった。
酒場の扉を開けた瞬間、熱気、酒、汗、そして血の匂いがミンの鼻を突いた。テーブルや椅子はひっくり返り、多くの男たちが殴り合い、奇妙な歌を歌っている。まさに混沌だった。
「この手の場所では、強い奴は目立つ」ジーロは人混みをかき分けながら言った。
その言葉の通り、酒場の中央で、一人の小柄な人物が暴徒たちと対峙していた。それは、黒髪を高い位置で結い上げ、引き締まった体躯を持つ若い女性だった。彼女の獲物は異様だった。通常の剣ではなく、節くれだった金属の板が無数に連なり、鞭のようにしなる蛇剣。
「お前ら、『血の爪』海賊団の賞金は、このレンがいただく!」
少女レンは鋭い叫び声を上げると、地面を踏みしめた。彼女の蛇剣が空気を切り裂き、海魂の力ではない、純粋な身体能力と剣術によって、三人の大男を一瞬で地面に沈めた。彼女の動きは俊敏で、まるで海流に乗った魚のようだ。
「ちくしょう!一人じゃ無理だ!あいつは海軍の訓練を受けている!」海賊の一人が叫んだ。
しかし、残りの海賊たちは彼女を囲み、鈍器や斧を振り上げた。レンは疲労の色を見せ始め、包囲網を突破することができない。
「いい**『剣』**を見つけたな、技術屋」ジーロはニヤリと笑った。
「あのままでは囲まれてしまいます。助けに行くぞ!」ミンはすぐさま動いた。
ジーロがまず動いた。彼は手を振り上げ、小さな風の刃を発生させ、レンを襲おうとしていた海賊の足元に正確に着弾させた。
ザシュ!
「うわあ!」海賊たちは驚き、怯んだ。
その隙に、ミンは周囲を見渡した。彼の視線は、酒場の天井近くを走る、細い魔法蒸気の配管に釘付けになった。それは、酒場の暖房に使われている配管で、微かに亀裂が入っている。
「ジーロの力は敵を驚かせる。だが、俺の技術は混乱を生む!」
ミンはテーブルを飛び越え、懐から万能レンチを取り出すと、配管の亀裂部分を一気に叩き割った。
キーーーッ!!!
高圧の蒸気が、配管の破損箇所から音速で噴き出した。それはまるで白い竜巻のようになり、酒場の中央を蒸気と熱で満たした。視界は瞬時にゼロになった。海賊たちはパニックに陥り、目を押さえ、武器を落とした。
「何だこれ!目が見えない!」
ジーロは蒸気の中からレンの手を掴んだ。
「行くぞ、剣!お前には俺たちの船に乗ってもらう!」
レンは驚き、すぐに抵抗しようとしたが、彼女を包み込むジーロの圧倒的な海魂の圧力と、この奇妙な白い爆発に完全に動揺していた。
蒸気が晴れる頃には、ジーロ、ミン、そしてレンの姿は酒場から消えていた。残されたのは、意識を失った海賊たちと、天井の配管から勢いよく噴き出す蒸気だけだった。
ブラッド・レイヴンの甲板に連れてこられたレンは、警戒心 Max で二人を睨みつけた。
「あなたたち…何者?あの白い煙は、どういう魔術?」
ジーロは豪快に笑いながら、差し出されたラム酒の瓶を受け取った。
「魔術じゃない。こいつの科学だ。そして、俺たちは海賊だ、レン。そしてお前は、今日からこのブラッド・レイヴン号の剣になる!」
ミンはレンにそっと手を差し伸べた。
「私はミン、機関士です。あなたの剣術と私たちの技術があれば、誰も成し遂げられなかった海賊団を築けます。一緒に海に出ませんか?」
レンは、自分を救った風の魔力と蒸気の爆発という、あまりにも異質な組み合わせの二人を、じっと見つめ返した。彼女の海賊に対する憎悪と、彼らの提案への好奇心が、激しくぶつかり合っていた。




