虚無の宝庫と海魂の設計図
ブラッド・レイヴンがたどり着いた**『虚無の宝庫』は、金銀財宝で満たされた洞窟ではなかった。そこは、静寂に包まれた情報空間だった。船の周囲には、無数の古代文字、複雑な幾何学模様、そして世界の全ての知識を内包するかのような光のデータストリーム**が流れていた。
「これが宝庫?どこに金があるんだ!ただの図書館じゃないか!」ジーロは失望を隠せない。
「ここにあるのは、新世界の全ての歴史と真理よ。金よりも価値がある」キラは目を輝かせ、興奮気味に言った。彼女は位相変換機を使い、周囲のデータを読み取り始めた。
レンは静かに剣を構えていた。「私には、剣も、戦う相手もいない場所だわ。技術屋、あんたの領分ね」
ミンの視線は、空間の中心でゆっくりと回転する、巨大な七色に輝く結晶構造体に釘付けになっていた。彼の科学者としての本能が、そこにある知識こそが全てだと叫んでいた。
彼は時空蒸気機関の出力をその結晶に向け、波動安定器の増幅機能を使ってデータを抽出し始めた。
ゴォォォ…
結晶体が起動し、ミンの目の前に、古代語と複雑な数式が融合したホログラムが投影された。そのタイトルは、『海魂の設計図』。
「…見つけた!これが、この世界の力の源泉の構造だ!」ミンの声は震えていた。
投影された設計図は、海魂とは魔力ではなく、物理現象であることを明確に示していた。
「海魂は、水の分子構造(H₂O)と、大気中のエネルギー密度から派生する、極度に組織化された共鳴現象である…人の意識、特に感情の高ぶりが、脳の電磁波を触媒とし、このエネルギーを制御する…」
ミンは理解した。彼らが魔法と呼んでいたものは、ただの応用物理学であり、超能力者は、無意識のうちに原子レベルの物理法則を操作していたのだ。
ジーロはホログラムに顔を近づけ、困惑した。「待て。じゃあ、俺が風を呼ぶ力は、ただの**『空気密度の計算』なのか?俺の誇りは、ただの数式**なのか!?」
「ジーロ船長。これは誇りの否定ではありません。科学は、それを再現し、改善することを可能にする。あなたの力は、無限の可能性を持った現象だと証明されたのです」ミンは熱意を込めて答えた。
レンは、海魂の設計図を見つめ、静かに雷光蛇剣を握りしめた。「予測可能…予測できるなら、対策も、そして限界を超えた強化も可能になる。私の速度は、まだ上げられるということね」
キラは歓喜の声を上げた。彼女は設計図の膨大なデータの中から、星図とは異なる、最終的な座標を読み取っていた。
「ミン!この設計図には、この次元空間の安定化に必要な場所が示されている!それが、宝庫の真の出口よ!そして、その場所こそが、古代の技術の全ての力の源泉が隠されている**『世界のヘソ(中心)』**だ!」
ミンとキラは、時空蒸気機関と波動安定器を使い、海魂の設計図のデータを船のシステムにダウンロードした。彼らの科学は、今や世界の法則をその手中に収めたのだ。




