虚無の宝庫への跳躍と次元の逃
星見の島での戦いを終えたブラッド・レイヴンは、キラが解読した位相変換機のデータに従い、**『虚無の宝庫』へと向かっていた。宝庫は物理的な場所ではなく、この世界とは異なる『次元の狭間』**にあることが判明した。
「ミン、宝庫の入り口は、この海域の時空間の乱れが極限に達する、次の日の正午ちょうどよ。一秒でもズレたら、私たちは永遠の虚無に落ちる」キラは緊張した面持ちで、位相変換機に手を添えた。
その時、水平線に異様なほどの巨大な影が出現した。海軍の最高戦力、ゼッタイ元帥率いる**『絶対封鎖艦隊』だ。数十隻の軍艦がブラッド・レイヴン**を半円状に取り囲んだ。
「終点だ、血鴉号!科学の悪魔は、これ以上世界を乱すことは許されない!」ゼッタイ元帥の海魂の力は、周囲の空間そのものを絶対的な剛性で固め始めた。
「まずい!ゼッタイ元帥の**『空間固定』の海魂だ!次元の狭間への位相シフト**が、物理的にロックされます!」ミンが叫んだ。
「逃げ場はないぞ、海賊ども!降伏しろ!」ゼッタイ元帥が号令をかけると、艦隊の全砲門が一斉に火を噴いた。
「キラ!宝庫への座標は確定しているのか!?」ジーロが叫んだ。
「ええ!この固定された空間から脱出できる唯一の座標は、虚無の宝庫の次元の入り口そのものよ!時間が来るまで、ミンのシステムを最大出力で守って!」
レンとジーロは、迫りくる砲弾に対し、決死の防御に出た。ジーロは風槍斬を放ち、砲弾の軌道をわずかに逸らす。レンは雷光蛇剣で、船を狙う大型砲弾を精密に迎撃した。
「ミン!あと十秒だ!」レンは全身に傷を負いながら叫んだ。
ミンは、位相変換機の最終計算を急いでいた。「ゼッタイ元帥の空間固定を破るには、時空蒸気機関の出力を限界まで引き上げ、時空結晶に過負荷をかけるしかない!この次元の時定数を強制的に歪ませる!」
「五秒!」
ミンは覚悟を決めた。彼は時空蒸気機関のリミッターを解除し、コアの古代エネルギーを位相変換機へと一気に流し込んだ。船全体が、これまでにないほど強く、青白い光を放ち始めた。
「キラ!瞬間位相ジャンプのタイミングを合わせてくれ!」
「了解!正午、カウントダウン開始!3!2!1!…今よ!」
キラが叫んだその瞬間、ミンは位相変換機のレバーを叩き込んだ。
ドゴオオオオオオン!!!
ブラッド・レイヴンは、ゼッタイ元帥の空間固定を文字通り引き裂き、閃光と共に消滅した。
海軍の攻撃は、血鴉号がいた空虚な海面を叩いた。ゼッタイ元帥は、そのありえない現象に、怒りよりも深い恐怖を覚えた。
「消えた…!次元を、力で…!」
一方、ブラッド・レイヴンの乗組員は、船内の照明が消え、耳鳴りがするほどの静寂の中にいた。船は、周囲が星のように輝く、無数の情報で満たされた、広大な次元の図書館のような空間に浮かんでいた。
「ここが…虚無の宝庫」キラは畏敬の念をもって呟いた。
「成功だ、技術屋!」ジーロの歓声が響いた。
ミンは、安堵と共に、虚無の宝庫に満ちる古代の知識という、彼にとって最高の宝を見つめた。科学が、ついに世界の秘密の入り口をこじ開けたのだ。




