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羅針盤の指示と位相空間

ブラッド・レイヴンは、キラの指揮の下、新世界の深部にある**『巨人岩礁群きょじんがんしょうぐん』へと進んでいた。この岩礁群は、海面から突き出す巨大で鋭利な岩の塊で構成され、通常の海図には「通行不可」**と記されている死の迷路だった。

キラは船首に立ち、通常の羅針盤を完全に無視していた。彼女が頼りにするのは、古びた六分儀と、彼女の直感が読む海のエネルギーの流れだけだ。

「ジーロ船長、右舷に五度。風の抵抗が最も弱い**『空間の歪み』**を追って」キラは短い指示を出した。

「右舷に五度だと?そこは岩にぶつかるぞ!」ジーロは驚いたが、彼女の瞳の確信を見て、即座に舵を切った。船はギリギリのところで岩を避け、通常の航海ではありえない速度で岩礁の間を縫った。

「信じられない…彼女は空間そのものを読んでいる!」レンは感嘆した。

「私の直感は、この海域の物理法則のズレをパターンとして認識できます。しかし、私の直感が完璧でも、船の物理的な大きさは変えられません」キラは冷静に言った。

彼らはやがて、旅の最大の難関に直面した。それは、巨大な二つの岩壁が、船の幅とわずか数センチしか違わない間隔でそそり立つ、**『絶望の狭間ぜつぼうのはざま』**だった。潮の流れは激しく、船は押し流されそうになっている。

「無理だ、キラ!この船は通れない!」ジーロが叫んだ。

「いいえ、通れます」キラは即座にミンを見た。「ミン。左舷の岩壁に、一点集中で**『逆位相の位相シフト』をかけて。船が岩に接触する0.5秒間だけ、岩の物質的な結合**を緩めて!」

レンは驚愕した。「岩を分解するつもりか!?」

「分解ではない!岩の位相をわずかにこの次元からズラすだけです。そうすれば、船が通り抜ける一瞬だけ、岩は**『存在しないも同然』になる」ミンは事態の緊急性を理解し、即座に波動安定器**の出力を最大に上げた。

これは、彼がこれまでに試みた中で最も精密で危険な科学的賭けだった。

「座標確認!船長、私の一斉射撃の合図で、風の力で船を押し込んで!」

ミンは全精神を集中し、時空蒸気機関のエネルギーを安定器のレーザー照準に注ぎ込んだ。岩壁に、青白い位相エネルギーの光線が放たれた。

「行け!」

ミンの合図と共に、ジーロは全身の海魂を舵に込め、船体を絶望の狭間へと押し込んだ。

レンは息を呑んだ。船体が左舷の岩壁に接触した瞬間、船体と岩壁の間から、時間が歪んだかのような歪な光がほとばしった。船はまるでゴムでできているかのように、岩壁を透過して通り抜けた。

わずか数秒の出来事だったが、ブラッド・レイヴンは無傷で狭間を突破した。

「成功だ…!」ミンは安堵のため息をつき、崩れ落ちるようにコンソールに寄りかかった。

ジーロはキラの背中を見た。「キラ。お前の直感と、ミンの科学が合わされば、この新世界に、俺たちの行く手を阻むものはない!」

レンは、目の前で起きた物理法則の超越を見て、キラの航海術とミンの科学への信頼を決定的にした。

「科学は、魔法をも凌駕する真の力なのね」

キラは静かに笑った。「これが、私がブラッド・レイヴンを選んだ理由よ。さあ、次は**『虚無の宝庫』**の入り口よ」

新しい四人の海賊団は、新世界の秘密を解き明かすための冒険を続ける。

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