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迷宮海域と羅針盤の少女

ブラッド・レイヴンは、新世界の中でも特に悪名高い**『迷宮海域めいきゅうかいいき』**に突入した。ここは島の位置が常に変わり、潮の流れが一日で数十回も反転する、地図が一切役に立たない場所だ。

「なんて無秩序な海だ!」ジーロは舵輪を握りしめ、顔をしかめた。「俺の海魂でも、この風の乱れは予測できん!」

船の機関室では、ミンが時空蒸気機関と波動安定器を最大限に稼働させていた。しかし、この海域の磁場と次元の歪みはあまりにも複雑で、彼の予測を上回っていた。

「船長!この海域の物理法則は、数秒ごとに変化しています!時空結晶の出力をもってしても、完全な安定化は不可能です!このままでは、私たちは空間の渦に飲み込まれます!」ミンは焦りを滲ませた。

彼らが絶望的な状況に陥ったその時、周囲の霧の中から、驚くほど小さな一人乗りのヨットが現れた。そのヨットは、信じられないことに、荒れ狂う波をまるでダンスを踊るかのように軽やかに乗り越えていく。

ヨットの甲板には、巨大で古びた真鍮製の六分儀ろくぶんぎを構えた、一人の若い女性が立っていた。彼女の髪は潮風に乱れ、目は鋭く、その瞳は海のエネルギーの動きを正確に捉えているようだった。

「驚きだ…通常の航行術では、ここを抜けることは不可能だ。彼女は、この海のパターンを読んでいる」レンは感嘆した。

「おい!お前!ここで何をしている!この海域は危険だぞ!」ジーロが叫んだ。

女性はちらりとブラッド・レイヴンを一瞥すると、すぐに六分儀に目を戻した。

「放っておいて。私は**『虚無の宝庫きょむのほうこ』へと続く隠された航路を探している。あなたたちの船が立てる不規則な波動が邪魔だ」彼女はキラ**と名乗った。彼女の態度は冷たく、完全に独立していた。

「虚無の宝庫だと?そんなものがあるのか!」ジーロの目が輝いた。

ミンは、彼女の航行方法に興味を抱いた。「彼女は、単なる星や羅針盤ではなく、この海の魔力の流れを直感で読み取っている…まるで生きた波動安定器だ」

その時、海域の磁場が最大に乱れた。巨大な水の柱が突如としてヨットの真横に出現し、船を叩き潰そうとした。

「まずい!予測不能な水柱だ!」

キラは辛うじて六分儀を操作し、船を回避しようとしたが、物理的な力には勝てない。

ジーロは即座に反応した。彼は風の海魂で水柱の側面をわずかに削り、威力を殺した。そして、その一瞬の隙に、ミンが波動安定器の出力を調整し、キラのヨットの周囲に一時的な安定領域を作り出した。

水柱は、ブラッド・レイヴンの船体を濡らしただけで、キラのヨットは無傷で済んだ。

「…私の直感と計算は完璧だった。しかし、あなたの船の防御がなければ、私は終わっていた」キラは初めてミンたちに真剣な視線を向けた。

ジーロは、チャンスを逃さなかった。「キラ。俺たちの船の船員になれ!お前は**『方向』を示せる。レンは『剣』で障害を排除する。そしてミンは、お前の直感を科学で『真実』に変えることができる!俺たちは、お前の求めている虚無の宝庫**まで、確実に連れて行ってやる!」

ミンは手を差し出した。「あなたの航行術は芸術です。私はそれを数学で証明したい。私の波動安定器は、あなたが読むパターンを乱す全ての物理的な脅威から、あなたを守ることができます」

キラは、彼らの異質なチームワークと、ミンの科学の可能性に心を動かされた。虚無の宝庫への航路は、あまりにも危険で、一人の力では不可能だと知っていたからだ。

「いいでしょう。私の名前はキラ。羅針盤のキラと呼んで。ただし、宝庫に着いたら、ルート上の全ての地図と古代の遺物は、私のものよ」

新たな航海士を迎え、ブラッド・レイヴンは、新世界の深い迷宮へと乗り込んでいった。

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