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旧敵と科学の逆転劇

ブラッド・レイヴンが順調な航海を続ける中、ミンが改良した魔力感知計が、異常な速度で接近する物体を捉えた。

「船長、レーダーに反応あり!高速です、海軍の特務艇だ!」

水平線に現れたのは、通常の巡視艇とは異なる、洗練されたシルエットの軍艦だった。甲板に立つ人物の姿を見た瞬間、レンの顔色が変わった。

「あれは…カイ司令官!私を賞金稼ぎの道へ引きずり込んだ男だ!」

「知っているのか?」ジーロが尋ねた。

「彼は元、私の訓練教官よ。海軍の**『潮流操作ちょうりゅうそうさ』**の能力者。水の流れと圧力を自由に操る!私の動きを完璧に把握している!」

カイ司令官は船に近づくと、手を海に向けた。途端に、ブラッド・レイヴンの周囲の海水が唸りを上げ、巨大な局地的な渦潮へと変化した。船は身動きが取れなくなり、激しい水圧に押し潰されそうになる。

「ジーロ船長!風の力は効かない!この水圧だと、私の風槍斬は威力を失います!」ジーロは苦悶の表情を浮かべた。

「その通りだ、嵐のジーロ。私の潮汐操作は、お前たちの全ての力を無効化する!」カイは高笑いした。「レン、裏切り者め。お前の蛇剣など、この水圧下ではただの鉛玉だ!」

レンは改良された雷光蛇剣を構え、渦潮の壁を突破しようと試みたが、強力な水流と水圧が彼女の動きを鈍らせる。彼女の超高速の動きは、水という環境によって完全に封じられていた。

「くそ…私が動けない!ミン!何か方法はないの!?」

ミンは渦潮の動きを解析しながら、冷静に答えた。「カイの潮汐操作は、周囲の海水の安定性と均一性に依存している。しかし、魔法蒸気機関のコアは、海水の温度と密度を瞬時に変えることができる!」

「どういう意味だ?」

「ジーロ船長!魔力蒸気機関の高圧ボイラーを、最大出力で強制排水させます!狙いは、渦潮の中心だ!」

「正気か?塩分濃度の低い純粋な超高温の蒸気を海中に噴射すれば、水が破裂するぞ!」

「そうです!その破裂が、カイの魔力の秩序を破壊します!レンの動きを妨げる抵抗も一瞬消滅する!」

ジーロはミンの狂気的な発想に一瞬ためらったが、彼の目に宿る確信を見た。

「よかろう!だが、船底のパイプが持たないかもしれんぞ!」

「私が何のために機関士をやっているんですか!レン!チャンスは一瞬です!蒸気噴射後、摩擦抵抗がゼロになる!全速力で突っ込め!」

ミンは機関室に急ぎ、レンは甲板で覚悟を決めた。

ミンは全身の力を使い、船底の緊急排出口を、カイの渦潮の中心へ向けて調整した。そして、ジーロの海魂の力を借りて、魔法蒸気の圧力を極限まで高めた。

「開放!」

ドゴォオオオオオオン!!!

渦潮の中心から、超高熱の蒸気が海水を突き破り、白い爆発を起こした。海水は急激な温度変化により沸騰し、カイの魔力の制御する水の均一性が一瞬で崩壊した。渦潮は消え失せ、水圧がゼロになった。

レンは、その一瞬を逃さなかった。彼女は解放された水面を疾走し、その驚異的なスピードは、彼女を狙うカイの目にも捉えられなかった。

「終わりよ!」

雷光蛇剣は、カイ司令官の防護服を切り裂き、その魔力の源である腕に正確な高周波麻痺を与えた。カイは苦痛の表情を浮かべ、海に沈んでいった。

船は自由になった。

レンは甲板に戻り、ミンの顔を見つめた。

「…あんたは、本当に悪魔だわ。科学とは、こんなにも恐ろしいものなの?」

「いいえ、レン。これは自由のためのツールです」ミンは静かに言った。

ブラッド・レイヴンは、その強力な科学力と新たな絆によって、アゼオスの海をさらに深く、そして速く進み始めた。

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