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WyckoffのCrystal Structures

子供のころに図鑑を眺めたりするのが好きだった人が年齢を重ねた後に何かそれらしいものが読みたいなとなったときにおすすめなのがWyckoffのCrystal Structures (Interscience Publishers Inc.) 全三巻だ。Ralph Walter Graystone Wyckoffは合衆国の科学者でX線結晶学の開拓者だ、Wyckoff位置は彼の名に因む。その組成の物質がとる結晶多形たちが列挙されている図鑑的な本で格子定数と対称性それから原子位置がずらりと書かれおり、構造などについて短い解説がつけられている。それに加えて、結晶の絵も記載されており娯楽要素も大きい。眺めているだけで娯楽としての楽しさもあるし、この組成の結晶ってこういう構造を取るんだ、と新しい知識を得る喜びもある。

しかしながらこの本は入手性が低い、Internet Archiveにスキャンした電子ファイルが存在しているが暇つぶしにパラパラ読むという用途には適していないだろう。私はこの本を在職中に死んだ教員の部屋から拝借してきた。ちょうど私が現職に勤め始めたときに突然解析学の演習の担当が降ってきた、その時に授業の資料はあるから大丈夫と瘦身の教員が私の部屋に来て紙束を渡してきた。数か月後にその彼は亡くなった、元々は太っていた方らしいが私が着任した頃には病気で痩せてしまっていたようだ。教員の退職時あるいは死亡時の片づけの際に本棚を漁るのは楽しい。年々、多くの学術書が増えてくるが古書のほうが解説本としては優れている場合が多いように思う、学術分野の基礎のブラックボックス化が進んでしまっているからだ。みんなも退職する教員の部屋の本棚は入念に漁りつくそう。


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