ちゃんと読んで引用しよう
論文を斜め読みして引用している人は多い、そして論文とは逆の主張の支持するものとして引用してしまっている人がいる。まぁ、それでも手法の考案者ではなくその手法を用いた身内の研究だけを引用するという品の無いことをする人よりは誠実だろうけれども。
さて、博士課程の終わりのころ、私のせんせえの知り合いの方が日本の学会誌で特集号をやるからと、論文投稿のお誘いが来た。それに対して私は、なんとなく興味で古めかしい論文の再考証をしていて、まぁそうなるだろうという結果が得られて満足して放置していたものをまとめて投稿した。新規性があるかと言われたら怪しく、それに係るEditorとのやり取りで消耗するのが嫌で放置していたもので丁度良いだろうと思ったのだ。内容を雑に説明しよう、分子軌道法を用いてSchrödinger方程式を解くことは計算コストが非常に係る。八十年代では二十原子に満たないくらいな小集団を取り出して計算することすら、Hartree-Fock法しか用いることができず、基底関数セットも小さなものでしかできなかった。さて、私が注目している物質群の基本構造を抜き出した小集団計算が八十年代になされていて、そこに現れる特徴的な折れ曲がった架橋構造には基底状態では占有されていないd軌道電子が関与しているという結論になっていた。しかしながら精度の高い計算を行うと、過去の研究では基底関数が小さく、また動的電子相関の欠如などによってそう見えているだけで、折れ曲がった架橋構造を作るうえでd軌道の電子は必要がないという結果が得られた。
この論文、j-stageの論文の割には外人二キからの引用が多く件の学会でも表彰された。しかしながら、正しく引用しているケースは少ない。なんとd軌道が関与している説の根拠として引用されているのが全引用のうち半数ほどある(ちゃんと数えていない、それにしてもResearchgateで引用ありましたって連絡がくるとどんな引用をしているかを気になって確認しに行ってしまう)。それならば八十年代の論文か、そもそもCruickshankの論文を引けよと……。まぁ私も論文の細部まで読んでから引用しているかと言われたら怪しいのだが、とはいえ逆の主張の根拠として引用していることはないだろう。まぁ一度査読で君は私の論文のこの部分の解釈を間違えている、精確に言えば端折り過ぎて私の最も主張したい部分がずれている、と記名でコメントされたことが有るのだが。
今、論文を書いていない人は、これからは楛な引用をしないようにしようね。
今、不適切な引用をしている人は、やめようね!




