漢文が役に立つ機会
何かと槍玉にあがりがちな高校で習う漢文および古文だが意外と研究者同士での交流で役に立つことがある。私が東大でポスドクをしていたとき理研の人がやっている大型計算機のプロジェクトにも参画していて客員研究員を兼ねていた。理研は発展途上国との研究交流にも力を入れていたようで、それで博士号を取ったばかりの私はベトナムのハノイに送り込まれることになった。
ベトナムは食文化が日本に近く、その点については暮らしやすいところだ。茶を飲む文化で、米食だ。料理の味としてはあっさりとした中華料理といったところだろう。常食していたのは鯰の醤油煮込み定食と、野菜炒飯だった。外に連れていかれて食べておいしかったのは、魚を煮た鍋を米麺にかけて食べる料理だ(名前は分からない)。ビールは薄い味でさっぱり飲める、ハノイ市内に点在する湖畔で氷の入ったジョッキにビールを注いで飲むのは最高だ。ちなみに大学の近くで皆でフォーを食べたときは、パクチーは別で籠に盛られて出てきていた、日本にあるベトナム料理店では平気で入れて出してくるが、あれは現地の人の間でも好き嫌いが分かれているのだろう。
さて、ベトナムは漢字文化圏だった。最近の光栄の三國志では士燮や趙氏貞が出てくるのでなんとなく知っている人もいるのではないだろうか。しかしながら現在は失われている、ただ、意外と今のベトナム語も元の漢字と意味が割と想像できるものだったりする。私が訪問していた大学はHanoi University of Science and Technologyで、現地の人はダイ・ホッ(ク)・バッ(ク)・コァみたい発音していた、これは漢字で書くと大学科工だろう。
私みたいな外国人は、週末は北ベトナムの観光地を連れまわされる。ハロン湾やホアルー遺跡などである。さて、ホアルーが都になったのは十世紀のことで、まだこのころは漢字が用いられていた、そのため遺跡には漢文が多く残っている。私を連れてきた博士課程の学生に対して書かれている漢文の意味を英語で教えると喜ばれた。漢文は東方におけるラテン語とも言うべきもので、いまだに西洋文化圏では時折ラテン語が用いられているのを思うとそれと同じく学んでおいて損はないだろう。
さて、観光に行くとして北ベトナムは過ごしやすいところだ。そしてさらに面白いものが見れる、それは共産主義国家特有のプロパガンダ看板だ。北朝鮮はそもそも入国が難しいが、ベトナムはそれほどではない。ハノイ市内からは外国人からの見栄えも考えてか真っ赤な看板は排除されている。そこから観光地で向かう途中の道路では多くのプロパガンダ看板が私たちを歓迎してくれる、真っ赤な背景、太陽のところには当然のように胡志明の肖像、そしてそれに対してAKを掲げる男女たちの絵という典型的なやつだ。そして共産主義国家らしく田舎では警察が横暴なようだ、その時に知り合った現在大学講師をしているだろう一人はFacebookによくベトナムの警官が市民に暴力を振るう盗撮動画をアップロードしていた。共産趣味の方々はぜひ一度観光に行くといいだろう。




