任務遂行中
「現場の状況は全ての先生が拘束されています。戦闘の許可をください。」
「……わかった。くれぐれもミスをしないように」
「ありがとうございます。」
はぁやっぱりボスとの会話は緊張する。何年もスパイをやってきてるけど一行に慣れない。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、まずはターゲット(不審者)を見つけださないと。
私はイヤホンを付けたまま立ち上がった。
「先生がいないってことは私がどうにかしなきゃだね♪」
一般人にとってこれは大変なこと。でも幼少期から色々な実践訓練を積んできた私にとっては朝飯前すぎる。
寝癖がふわふわと揺れながら歩く。でも、視線だけはまるで獲物を狙う冴えた目をしていた。
すると、暗い廊下の奥から人影が見える。どう見たって生徒では無い。
いたな。
素早く身構え、ポケットからはボールペンを取り出した。もちろんボールペンの中身は改造したスティンガー。
「……じゃあいっちょやりますか!」
心の中の軽い口調で私は影に向かって一気に走り出した。
相手は私がこの場にいることにも気づいていない。
余裕。
でも一応大人を拘束するだけの腕はある。
まぁ容赦なく行けば済むこと。
ターゲットの背後に周り、一気に空中で回転しながら首をスティンガーで突きつける。
「動くな」
どこまでも冷たい声。これがホントの私。
相手もただ者じゃないと察したらしい。今更気づいても遅いのに。
「お前、普通の生徒じゃないな……」
「そうだけど何か?笑」
ああ、ターゲットが馬鹿みたいな顔で私を見上げてる。滑稽。
ここからが本番。スティンガーを持つ手に少し力を加える。
首にスティンガーの冷たい金属が当たって相手の喉がピクリと動いた。
「名前。所属。目的。……ぜーんぶ教えて」
「はっ教えられるわけないだろ。どうせこんなのただの脅しだ。お前には俺は殺せない。」
……はぁやれやれ。弱いやつが言うあるあるのセリフ。
「こっちはそーゆーの慣れてんだよ?君が何人目だと思ってる訳?」
その瞬間ターゲットが何かを察したような怯えた目になった。
……遅い。あなた、もう詰んでるのに
「ごめん、時間ないから早く終わらせるね」
私はスティンガーの先を少しだけ動かすー
と見せかけて肘で後頭部を的確に撃ち抜いた。
バタッと倒れるターゲット。気絶。よし、無傷。
「やっぱり朝飯前だな〜」
イヤホン越しに、ボスの静かな声が聞こえる。
《ターゲットの制圧を確認。直ちに回収班を向かわせる。引き続き校内の安全を確保しろ。》
「りょうか〜い♪」
私は小さく返事をしてスティンガーをポケットにしまった。
……さーてと次のターゲットはどこかな〜