アンドアイウィルオールウェイズラブユー
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
― 月の目 ―
それは、いつの間にか始まっていた。
ミカミとチエコ先生は、正式に付き合い始めた。
放課後の保健室。
カーテンを半分閉め、午後の光を柔らかく遮る。
「少しだけよ?」
とチエコが言う。
だが二人はほぼ毎日のように、診察用ベッドで並んで昼寝をした。
ミカミは彼女のために詩を書く。
白衣の中の小さな宇宙
あなたの呼吸は春の波
触れれば消えそうな光が
ぼくを人間に戻してくれる
チエコは微笑む。
「大げさね」
「本気です」
◆
その噂はすぐに広まった。
そしてチエミの耳にも届く。
彼女は平然を装った。
別れてから、友達として接しようと努力してきた。
「ねえ、本当なの?」
廊下で、さりげなく聞く。
「チエコ先生と付き合ってるって」
「うん、本当だよ」
ミカミは素直に答える。
「へえ……よかったじゃん。うまくいってるの?」
「うまくいってる……」
一瞬、迷う。
「たぶん、私の理想の女だと思う」
空気がわずかに揺れる。
「そうなんだ。よかったね。ほんとに」
チエミは笑う。
だが心の中では――
(あなたの理想の女?)
(それ、私に何度も言ったよね?)
(私があなたの理想の女だったよね?)
(私があなたの子どもの母親になるはずだったよね?)
表情は崩れない。
(だが良いでs。あのビッチと付き合い続けなさい!。うまく行きませんように。すぐ別れるように。あのビッチと愛し合いたいときはいつでも、あなたが勃起不全に悩まされることを願いますように)
だが口から出るのは優しい言葉だけ。
◆
「チエミは?誰かと会ってるの?」
ミカミが尋ねる。
一瞬。
実はチエミさんは未だ独身女性です。
本当のことを言えばいいのに。
だが言えない。
「うん。彼氏があるよ。今夜デート」
嘘。
完全な嘘。
ミカミの胸が締めつけられる。
「よかった……」
そう言い聞かせる。
「あなたが幸せなら、それでいい」
だが心の奥では。
自分は地に堕ちた天使のようだと思う。
神から追放された存在。
いや――
女神から遠ざけられた存在。
(僕は、君にふさわしくなかった)
涙をこらえながら言う。
「よかった……君は幸せになるべきだ」
チエミはうなずく。
「あなたもね」
心の中では――
(あなたが私を幸せにしてた)
(なのに今さら、その月みたいな目で私を見るの?)
(戻ろうよ)
(あの女なんてやめて、逃げようよ)
◆
「じゃあね」
「うん」
二人はすれ違う。
距離は数メートル。
だが心の中では――
抱きしめ合っている。
唇が重なり、呼吸が混ざり、
あの頃のまま、恋人同士のまま。
現実では、ただ歩いて離れていく。
それぞれ別の方向へ。
けれど脳裏では、何度も何度もキスを繰り返していた。
言葉にできなかった想いだけが、静かに残った。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。




