二発の弾丸
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
チエミと別れてから、数週間。
ミカミの心には、ひとつの名前が焼き付いていた。
トビ。
憎悪はもはや理屈ではない。
それは執念だった。
彼にとってトビは――
白鯨。
倒すべき存在。
理解不能な宿敵。
この数週間、ミカミは何度もチャビーにヨーグルトを食べさせていて、チュビのガジェットを“無断で”拝借し、トビに暗殺を試みていた。
重力反転装置。
確率改変リモコン。
時間停止ペン。
だが――
なぜか失敗する。
爆発は花火になる。
重力は自分にだけ効く。
時間停止は三秒で解除される。
まるで宇宙そのものがトビを守っているかのように。
(これが……プロットデバイスか……)
◆
ある日の歴史の授業。
教師が語る。
「クリストファー・コロンブスは、単なる探検家ではありません。大量虐殺に関与した歴史的人物です」
教室はざわつく。
ミカミは真剣にノートを取る。
(なるほど……)
コロンブス。
侵略。
暴力。
歴史の影。
彼は妙に集中していた。
◆
次の時間。
数学。
担当は――トビ。
「では、この微分方程式を……」
ミカミは机に肘をつき、詩集を開いている。
「ミカミ君、授業を聞きなさい」
トビはどこか投げやりだ。
ミカミは顔も上げずに言う。
「拷問だな、これは」
「……は?」
「興味もない話を、興味もない人間から、二時間も密室で聞かされる。地獄か?」
教室が静まる。
トビは眉をひそめる。
「個人的感情を持ち込むな」
ミカミはゆっくり顔を上げる。
「これ、マジで最悪だ」
一拍。
「お前最悪だ、トビ。顔も最悪。殴りたい」
教室、凍結。
誰かが小さく「やばい」と呟く。
だがミカミは止まらない。
立ち上がる。
「なあ、みんな」
クラス全体を見渡す。
「もし俺が二発の弾丸を持っていて、クリストファー・コロンブス、ペリー提督、そしてトビと同じ部屋にいたら――」
全員、息を止める。
ミカミは満面の笑みで言った。
「トビを二回撃つだろう!!」
一瞬の沈黙。
そして――
「ええええええ!?」
「アウト!!」
「ライン越えてる!!」
「今のはダメだろ!!」
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。




