飢えた痩せこけた狼は「ノー」という答えを受け入れない
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
その日は、決戦の日だった。
ミカミはチエミの家の前に立ち、深呼吸を繰り返していた。
(今日は「彼氏」として正式に紹介される日だ……!)
インターホンを押す。
ドアが開く。
小市。
無言。
視線が鋭い。
「……入れ」
その一言で、空気が凍る。
◆
リビング。
チエミの母はにこやかにお茶を出してくれるが、緊張は隠しきれていない。
小市は腕を組んで座っている。
まるで最終面接官。
「本日は……娘さんと真剣にお付き合いしていることを――」
「ちょっと厨房へ来い」
小市が立ち上がる。
カナッペを取りに行くという名目だった。
ミカミはすぐに言う。
「お手伝いします」
◆
キッチン。
冷蔵庫の低い唸り音だけが響く。
小市は背を向けたまま言った。
「……お前のことは、ずっと見てきた」
ミカミの背筋が伸びる。
「お前は無責任だ。未熟だ。自分の将来すら真剣に考えていない」
振り返る。
鋭い目。
「チエミには、もっと安定した男が必要だ。お前では足りない」
ミカミの胸に、鈍い痛みが走る。
「……俺は本気です」
「本気? 本気で将来設計を立てているのか? 本気で家族を守れるのか?」
沈黙。
小市は小さく目を細めた。
「……それに、妙なんだ。お前の顔、どこかで――」
記憶の奥に何かが引っかかっている様子だった。
◆
二人がリビングへ戻る。
緊張は限界に達していた。
その瞬間。
ミカミは突然立ち上がる。
「チエミ」
「え?」
そして――
彼女を強く抱き寄せ、堂々とキスをした。
それは日本の一般的な家庭ではあまり見られない、あまりにも大胆で情熱的なキスだった。
「ちょっ……ミカミくん!?」
チエミは真っ赤になる。
母は硬直。
小市の脳内で何かが爆発する。
「な――――ッ!?」
その光景を見た瞬間。
小市の瞳が見開かれる。
「思い出した……!!」
指を震わせながら叫ぶ。
「お前……あの転校生だな!? 五十年前の!!」
母は「え?」と言ったまま気絶した。
ドサッ。
小市は頭を抱える。
「うわああああああああああ!! なんなんだこれは!!」
。。。
ミカミはなおも堂々としている。
小市は震える声で叫ぶ。
あなたは邪悪だああああ。雑誌を盗んだ時点で気づけばよかった!
「俺が盗んだんですか、小市さん?」
ミカミは静かに言う。
「それとも……あなたの邪悪の心の中にあった衝動が、俺にそうさせたんですか?」
「やめろぉぉ!!」
小市は顔を真っ赤にする。
「まずは雑誌! そして今度は娘を……!! お前は制御不能だ!!」
私。。。私は通報する!!」
「俺が先に通報します!!」
「私が先だ!!」
◆
二人は同時に家を飛び出した。
「刑務所行きだぞ!」
「行くのはお前だ!」
全力疾走。
住宅街を駆け抜ける二人。
向かった先は――
老人ホーム。
◆
そこには、奇跡的にまだ健在な元教師・国沢がいた。
白髪、しかし目は鋭い。
二人は同時に叫ぶ。
「先生!!」
「聞いてください!!」
国沢は静かに目を閉じる。
「……やはり来たか」
沈黙。
「いつか、お前たち二人がここへ来る日を、私は知っていた」
二人が固まる。
「待っていたぞ」
老人ホームの廊下に、不穏な静寂が落ちた。
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