芹沢日夏というクラスメイト
芹沢日夏という少女は学校で有名であった。
友達のいない私の耳にも入る程度には名が知れ渡っているのだから、相当のものだろう。
何せ彼女は噂が絶えないのだ。
入学当初からとんでもない美少女がいると話題になっていた。
それが1年の春の事である。
そろそろ話題も尽きるかと思い始めた頃、今度は出席日数が少ない事で話題になった。
学校にあまり来ないのは裏で危ない事をしているからだとか、何処ぞの家のお嬢様だから学校に籍だけ置いているだけだとか。
色々な憶測が飛び交っていたが、事実かどうかは1年経った今でもわからなかった。
そしてまたその数日後、新たな噂が立ち始めた。
それは芹沢日夏が魔法少女であるという噂だ。
こんな噂を聞いたところで普通の人ならば、馬鹿な話だと一蹴するだろう。
しかし、うちの学校では事実なのではないかと信じる者の方が多かった。
何故なら芹沢日夏が不思議な力を使う所を見たという生徒が多数いたからである。
ある生徒は手から火を出していたと言い、ある生徒は家の屋根を凄いスピードで走っていたという。
極め付けに怪物と戦っている姿を見たという者まで現れた。
この噂の中心にいるのが芹沢日夏でなければ、真面目に話されることもなかっただろう。
だがしかし、芹沢日夏にはアホらしい噂さえも真実なのではないかと思ってしまうほどの一種のカリスマ性があった。
さて、そんな様々な憶測が飛び交う不思議な美少女、芹沢日夏について何故私がこんなにも長々と話したのか。
答えは簡単だ。
今、私はその芹沢日夏と2人きりでいるからだ。
否、少し違う。
2人きりでいるという表現は間違っている気がする。
正確に言えば私と芹沢日夏が同じ教室にいる、だ。
私の通う高校、私立青ヶ咲学園は休みが多々ある。
夏休み程長いわけではないのだが、それでも1週間ちょいの休みが2ヶ月に1〜2回ある。
そんな連休中、学園は解放されており自由に使うことができる。
そんな訳で家に居たくない私は教室で1人自習に励むのが連休中の日課だった訳なのだが、連休のちょうど真ん中、折り返しである今日は教室に私以外の生徒がいた。
その生徒こそが件の芹沢日夏だった訳である。
既に同じ空間を共有して3時間近く経っている。
私はどうしても彼女の事が気になって勉強に集中することが出来なかった。
6列ある内の真ん中の列、その1番後ろが私の席だ。
教室全体が見渡せる席でもあり、意外と気に入っている。
そして窓際後ろから2番目の席に座っているのが芹沢日夏である。
彼女の方が前に座っているおかげで私がいくら凝視しても気づかれる事はない。
ここ1時間くらい見ているが、彼女は何をするわけでもなく、ただただ席に座り外を眺めたり、ぼーっとしている。
何でこんな所にいるのか、つい聞きたくなってしまうが私にそんな勇気はない。
「ねぇ、ずっと何してんの?」
そんな私の思いを知ってか知らずか、突如振り向き、こちらを見た芹沢日夏は質問を投げかけてきた。
「え、あ、勉強です」
「へえ」
私の回答が面白かったのか、彼女はニヤリと笑って席を立った。
そのまま帰るのかという私の考えとは裏腹に芹沢日夏は距離を詰め、私の隣の席へと座った。
その座り方は普段の上品な姿とは違い少し荒々しく、周りの目を気にしない様な所作だった。
「あの、何か用ですか?」
「確か小鳥遊さんだよね?」
「はい…」
苗字を覚えられていた事に喜びを感じながらも、この先何が起きるのか想像がつかず不安の私の目を見ながら彼女ば言った。
「私、小鳥遊さんにちょつと興味が湧いてさ。この休み期間中だけでもいいから、私と話さない?」
彼女が私に対して大した感情を持っていないのは手に取るようにわかる。
それでも学園のマドンナに興味を持たれた事実に私はどうしようもなく喜んでしまったのだ。
前話と繋がってないかもしれないですけど、まあその内補完するので新章を楽しんでください。
学園、恋愛、バトル、人間関係みたいな話をします。
何話になるか分かりません。
キャラに愛着が出来たら長くなるかもしれません。
途中で飽きたら、雑に畳むかもしれません。
けど多分、雑に畳んでもそのうち書き直します。
追記
次話ほとんど完成してるんですけど、新しい作品作りたくなったのでまたちょい更新遅くなるかも