crank in
都内某所 6月
「あつい〜!まだ6月でしょ〜!?日夏〜冷やして〜」
白とも灰色ともとれる色素の薄い長髪。
オフショルダー服は肌を大きく晒している。
その少し軽薄そうな女は自分よりも何個か年下の少女日夏の肩に顔を乗せてベッタリとくっついた。
「ちょっ!琴葉!触ってくんな!お前ベタベタして気持ち悪ぃ!」
肩につくかつかないか位の髪を首の後ろのあたりで縛り、うちわを扇いでいる日夏は心底煩わしそうに自分の肩に乗った琴葉の顔を手で押して退かそうとしていた。
「お腹空いたー」
気怠げは目をした少女、紗南は畳の上で寝転がりながら呟いた。
「日夏ちゃんー!エアコンー!エアコンつけよー!エアコンなきゃ死ぬってー!」
まさに女子高生といった風貌の少女、未来が暑さに耐えきれず騒ぎ出した。
「エアコン?つける?お前、どの口が言ってんだ?」
ただでさえ琴葉がくっついてきてイライラしてるのに次の怒りの種を撒かれた日夏は苛立ちを隠さずに口を開いた。
「元はと言えばァ!お前らがEURO見てサッカーやり出したせいだろ!外でやるならいいよ!家ん中でサッカーすんなよ!しかもリフティングじゃなくてシュート練習!頭イカれてんのか!?」
フラストレージも溜まり切って遂に爆発した。
が、それも仕方ない。
これから夏が始まるって時期に同居人がエアコンを壊した。
それも家の中でシュート練習していたなんて理由で。
怒るのも当然である。
学校から帰ってきたら家のエアコンが壊れていたなんて誰であろうと受け入れ難い現実であろう。
既にエアコンが壊れてから2時間の時が経過している。
その間、4人は団扇と扇風機と氷でどうにか耐えていたがそろそろ限界が近い。
4人ともそれを感じとっているが故に現状を打開する策を各々考えていた。
『速報です。東京都渋谷区にて刺殺事件が発生しました。渋谷区連続殺人事件の犯人と同一人物だとして警察は調査を続けているようです』
ニュースが聞こえた。
と同時に全員がコレだ!と思った。
「警察署って絶対涼しいよな?」
ヒトツヒトツゆっくりと