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いつものアラーム音で目が覚める。
「ん…もう朝か…」
昨日一日しっかり寝たおかげで体調はもうすっかり良くなっていた。心なしか、頭もスッキリと冴えている。
いつの間にか心のモヤモヤもどこかに消えており、久しぶりに気持ちよく起きれたかもしれない。
うん、今日は何だか良い日になりそう。
よーし、今日からまた仕事頑張るぞー!
「よし、起きよって…ん?あれ?えっなんで?」
体が、動かなかった。
起こそうとするのにピクリとも起き上がらない。
先程までのやる気は消え失せ、突然のことに動揺する。
「えっえっなんで、どうして」
顔と手は動かすことができるのに、何故か胴体だけが微動だにしない。
どれだけ力を入れてみても、手を使って起きあがろうとしても、まるで金縛りにあったかのように動かなかった。
それからしばらく格闘したけれど、全くもって動かない体に次第に諦めが心を占めた。
このままでは埒が明かないので私はとりあえず課長に休みの連絡をする。
手が動かせてよかった…。
でないと無断欠勤するところなので心底安堵する。
「でも、このままじゃご飯も食べれないってことだよね…」
そう考えて血の気が引く。
このままもし体が動かなかったら…最悪、死。
「さすがにそれはないか…」
一旦落ち着いて冷静に考える。最悪このまま動かないとしても手は動くので救急車は呼べる。だから死ぬことはない。…多分。
「それにしても、今日も会社お休みすることになっちゃたなぁ…」
課長からの返信はまだ来ていないけど、今日は出勤はできないだろう。
体が動かないという緊急事態なのに私はそれほど自分が焦っていないことに気づく。
あんまり焦っていないのは、会社を休める安堵の方が勝つからだろうか…?
そんなことをぼんやり考えていると課長からメッセージの返信が来た。短く「了解」だけの返信。それだけなのに深い安堵を覚える。
「よかった…」
思わず溢れた本音を言った瞬間、
「あ、動いた」
あんなに動かなかった体はいとも簡単に起き上がる。
いったい何だったんだろう…?
…でも、体が動いたから会社には行かないといけないだろうか。
課長の返信をしばらく見つめて考える。
…いや、せっかく休みになったんだから今日もお休みさせてもらおう。そして、明日からまた頑張ればいいよね。
そう自分に言い聞かせて、私はメッセージを閉じた。
とりあえず、寝起きなのでまずは顔を洗いに行こう。
その前にキッチンでお水を一杯。
それからお風呂場に向かった。
部屋が暗かったので明かりをつける。
「………何これ?」
…今日はいったいどうしたというのだろうか。もしかして夢?幻覚?
朝から色んなことが起き過ぎて頭の中が混乱する。
それにしても…
「なんで、こんなもの…」
洗面台の鏡に写った私の顔には、顔を覆い隠すほどの大きな紙が一枚、貼られてあった。




