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朦朧とする意識の中出勤。
結局、定時ギリギリ前の出勤になってしまった。でも今日だけは多めに見て欲しい。
課長はいつも通り定時出社だった。私が出社していることを確認した課長は、特に何の感情も表すことなく普段通りに朝礼を始める。
朝礼が終わり仕事が始まるけれど私は全然仕事に手をつけられなかった。
体は熱いのに寒気が止まらない。頭痛は薬のおかげか少しはマシになったけれど、それでも些細な動作で痛みは増す。
パソコンの画面もブレて全然見えなかった。
熱、上がってる気がする…。
気がつけば、お昼の時間になっていた。
お昼までの記憶は全くなく、どうやって過ごしたのか全然わからない。
「やっと…お昼か…」
「うわ依さん、顔色ものすごく悪いよ?」
私が休憩室に移動しようとした時、近くにいた社員の一人が私の顔色の悪さに気づいて、慌てて心配そうに覗き込んでくる。
「熱あるんじゃない? 私体温計持ってくるから依さんは座ってて!」
そういって私を席に座らせると、さっさと駆けて行ってしまった。
その数分後にその人は息を切らしながら体温計を手に戻ってきた。
私は言われるがまま体温計を脇に挟む。
数秒した後ピピっと測り終えた音が聞こえた。
「うわっ38.7度!? 高熱じゃない!!」
体温計の体温表示を見てその人は大きな声で驚く。
その声に、周りがなんだなんだと私たちを見てくる。
もちろんその声は大きかったので社内に響き、少し離れたところにある課長の席にも届いたらしく、
「なんだ、どうした?」
周りが心配そうに私たちの様子を伺っている中、課長が側にきて私たちに声をかける。
「あっ課長! 依さん熱があるみたいなんです! 今日は早退させた方がいいかと…」
その言葉に周りからも少し声が上がり始める。
「そういえば依さん、出社した時から顔色悪かったかも…」
「え、じゃあ体調悪いのに出社したってこと?」
「依さんいつも頑張ってるから体調崩しちゃったのかもね…」
私は意識が朦朧としており、周りの声にまで耳は傾けられなかった。
が、課長の耳にはしっかり届いていたのだろう。
「依そんなに体調悪かったのか?!早く言ってくれれば休み出したのに」
「…え?」
…熱のせいて幻聴でも聞いているのだろうか。
「気付けてやれなくてすまなかったな。今日はもう帰っていいから、しっかり休めよ」
「…?」
やっぱり熱のせいでおかしくなったのかもしれない。
それとも夢を見ているのだろうか?…朝のも熱の幻聴なのかな…?
どちらにしろ熱のせいで頭が働かない。
それをいいことに課長は自分の良いように振る舞う。まるで部下思いの良き上司のように。
「誰か依のこと病院連れてってやってくれないか? タクシー代は俺が持つから」
…これは朝の課長と同一人物だろうか?
それから私は言われるがまま社員の人に寄り添ってもらって病院へと行った。
薬をもらいそのままタクシーで家へと帰る。
正直、今は課長のことを気にしているどころではなかった。




