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「えっ?! もう0時!?」
しばらくゴロゴロしていた私は、何気なく開いたスマホのロック画面に表示された時間に飛び起きる。
明日も平日なので普通に仕事だ。
何もしてない時間って何でこんなに経つの早いんだろ…。
急いでメイクを落としたら素早く布団に潜り込む。
「おやすみなさい」
そうして私の誕生日は、なんとも呆気なく幕を閉じた。
翌日、課長は上機嫌でいつも通り定時出社。
課長に頼まれた仕事はカナ先輩が手伝ってくれたおかげか珍しく怒られることはなかった。
それからも変わらず毎日残業の日々。
こんな日々がずっと続くんだろうなとぼんやり思っていたそんなある日。
私の大好きな先輩、鞘村カナエ先輩の寿退社の知らせ。
私は驚きつつも心の底から祝福した。
それからの日々もあっという間に過ぎ、カナ先輩は引き継ぎを終えると皆んなに惜しまれる中笑顔で退社して行った。
もちろんカナ先輩の仕事を引き継いだのは私で、また目まぐるしい日々を送っている。
カナ先輩は最後まで私のことを心配してくれた。それが何だか申し訳なくも嬉しかった。
一番仲の良かった先輩がいなくなって寂しかったけど、そんなことを考える暇もないくらい仕事が忙しくていつの間にかカナ先輩がいないことにも慣れてしまった。
私は相変わらずコンビニ弁当とお酒を楽しみに一日を過ごしている。
そんな”いつも通り”の日々が続いていた数ヶ月。
「ん…ぃっ、頭いたい…」
目が覚めた瞬間、激痛と共に頭痛が響く。
ガンガンと叩きつけられるような痛みに、自然と顔を顰めてしまう。
寒気も止まらない。
「これ…絶対熱ある…」
社会人になって体調を崩したのは初めてかもしれない。
「風邪ってこんなにしんどかったけ…?」
戸棚の引き出しから体温計を取り出し熱を測ってみると、37.5度の熱があった。
熱を出すのなんて何年ぶりだろう。
「今日は会社休もう…」
起き上がるのも精一杯の中、痛む頭を抑えながら課長に電話をかける。
『はい、平塚です。どしたこんな朝早くに?』
3コールの後、課長が電話に出る。電話越しの声が頭に響いて辛い。
「あ、おはようございます…依です。ちょっと今日体調が悪くて…、会社をお休みさせていただいてもよろしいでしょうか?」
『は?熱あるの?』
課長の声に少し棘が入る。
「はい、ちょっと…」
『何度?』
「え?」
『だから何度あるの?』
心なしかイラついているような気がする。
「えっと、37.5度です…」
『はあ?そんなの微熱じゃん大丈夫大丈夫』
その言葉に一瞬思考が働かなくなる。
『というか、俺なんか若い頃は38度あっても会社行ってたぞ。37度でしんどいってのは甘えだからな。はあ…これだから最近の若い奴は…』
私が反論しないことをいいことに、課長はその後も好き勝手に文句を垂れる。
『それ以前に体調管理は仕事のうちだからな?自分の体調も管理できないのは社会人としての自覚が足りてないんじゃないのか?』
「そんな…ことは…」
課長の声がぐるぐると頭の中を回る。
『とにかく、仕事はちゃんとこいよ』
その言葉を最後に一方的に電話は切られた。
課長が電話を切った後からガンガンと頭痛が激しくなる。
それでも重い体を必死に動かして簡単に身支度をした。
気休めにしかならないだろうが、念のため、痛み止めを一錠。と言っても、生理痛用の痛み止めだけれど。




