表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/32

5

 

「キミちゃんどう?仕事終わりそう?」


 隣のデスクからカナ先輩が心配そうに覗いてくる。


「な、何とか…」


 濁した回答にカナ先輩は納得いかない顔をする。


「貸して、少し手伝うよ」

「えっでも…」

「いいのいいの、たまには先輩に甘えないと」


 その優しさに涙が出そうになる。


「ありがとうございます」




 カナ先輩が手伝ってくれたおかげで残業は2時間で終われた。

 いつもより早く残業が終われることができて少し安心。



 いつものコンビニに寄り、いつも通りコンビニ弁当にお酒を一缶。今日は自分のお祝いにお菓子コーナーにあるカットケーキを一つ。

 今日はコンビニ袋をもらって帰宅した。



 いつもなら温めないコンビニ弁当をレンチンする。


 湯気をあげるお弁当を前にまずはお酒を一口。その後ほかほかのお弁当を一口。


「うん、美味しい…」



 想像とはだいぶ違う誕生日になってしまったけど、今日もお酒とご飯がおいしい。それだけで幸せだ。


「26歳の誕生日おめでとう、私…」


 一人きりの部屋に時計が秒数を刻む音が虚しく響く。




 そういえば去年の誕生日も残業だったけ…。

 確かあの時は有給とってたのに呼び出されてそれで結局仕事して…



「…、_____。」



 ブブッ



 鞄からスマホの鳴る音が聞こえる。

 取り出してみるとスマホのロック画面に3件のメッセージの表示。

 それは、友達と母からのお祝いメールだった。



 《川上真麻(まあさ)

『やっほ〜よっちゃん! 誕生日今日だったよね?? 26歳おめでとう〜!!!!

 私らもあと4年で三十路だね…。よっちゃんは相変わらず社畜してんの?笑 仕事も大事だけど、自分のことも大事にしなよ〜!!

 また機会があったら集まろうね!

 今年もよっちゃんにとっていい一年になりますように!


 P.S.

 私結婚することになりました♡こんな時に報告してごめんね汗

 結婚式は必ず呼ぶからその時は仕事ちゃんと休んでこいよ〜〜!笑』




「真麻ちゃん結婚するんだ…おめでたいな〜」




 《下浦祐子》

『誕生日おめでとう! 誕生日プレゼント送っておいたからちゃんと受け取ってね!

 希実子元気にしてる? 最近全然会えてないからちょっと心配…。もし会えそうだったら近々会おうよ!

 直接誕生日も祝いたいし! また空いてる日があったら連絡して!

 久しぶりに居酒屋でも行こ(^^)

 返信は返せる時でいいからね!』




「さすが祐子…お姉ちゃんみたい、あはは。私も久しぶりに会いたいな」



 コンビニ弁当を食べ終えてケーキの蓋を開ける。

 シンプルなショートケーキを付属のフォークで一口。



「ん、おいし」



 久しぶりの甘味に浸りながら《お母さん》と書かれたメッセージを開く。



 

『希実子、誕生日おめでとう。26歳だね。子供の成長は早いな〜としみじみ感じてます。

 仕事は相変わらず忙しいのかな? 若いうちにしっかり稼いで貯金しておくのよ。希実子は強い子だから大丈夫。

 でもたまには実家にも顔を出しに来てね。お父さんも待ってます^ ^

 それと…彼氏はできたのかな?その報告も待ってま〜す^ ^』




「…彼氏か〜〜〜〜」


 ベッドにうつ伏せでダイブする。


 生憎いい人は一人もいない。

 そう考えた途端とてつもなく寂しくなってくる。


「私だって彼氏欲しくないわけじゃないけど…」


 正直仕事が忙しすぎて恋をしている暇がない。

 それに社会人になると出合いの場も驚くほどなくなる。

 大学の時に頑張って恋をしておけばよかったと、後悔をしてしまうくらいには切羽詰まっている。



 それに、結婚願望だって人並みにある。

 子供だって欲しいし…。



「私って、何のために働いてるんだろ…」



 幸せになるために、働くんだと思っていた。

 けど、得られるのは幸福ではなくて幸福を買うためのお金。

 歳をとるにつれて支払わないといけないものはどんどん増えていき、気づけば自分の幸せは二の次。

 生きていくためには働かないといけなくて、働かないものには生きる資格が与えられない理不尽な世の中。



「こんなこと考えても意味ないのはわかってるんだけどな〜…」



 それでも思考は止められなくて、せっかくの誕生日なのにいらないことばかり考えてしまう。



「あーあ。働かずに生きれたら楽なのにな…」



 例えば、石器時代みたいな。…それは流石に極端すぎかな。



「はっ、だめだめ。仕事があるだけで私は恵まれてるんだから。ご飯が食べられて家があるだけで私は幸せなんだから」



 私は大丈夫、大丈夫、強い子だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ