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「もしかして…依ちゃん?」
「え」
私は顔を上げる。
「あ、やっぱり依ちゃんだ。久しぶりだったから全然気づかなかったよ!」
そう言ってにこりと微笑む女性の顔を見ながら記憶を辿る。
「…あ、もしかして…リコちゃん?」
私が名前を口にすると、リコちゃんはパッと笑顔になる。
「そう! 小森莉子だよ! よかった、覚えててくれたんだ嬉しい! 高校卒業以来だね!」
嬉しそうに駆け寄ってきた莉子ちゃんは優しく私の手を握る。
莉子ちゃんの手は思ったより暖かかった。
「あっちに階段あるから、そこでよかったら座って休憩しない?」
私たちは中学校の校門前の階段に座る。
私が落ち着くのを待つように、莉子ちゃんは優しく私の背中を撫でてくれた。
「依ちゃん、元気にしてた?」
徐にそんなことを聞かれる。
「ああ…うん、元気に…してたよ」
「…そっか」
私の歯切れの悪い返事に、それでも莉子ちゃんは優しく頷いてくれた。
そのまま数分間、私たちは無言で、莉子ちゃんはその間もずっと背中を撫でてくれていた。
「…依ちゃん、言いたくなかったら言わなくてもいいんだけどね、…その、やっぱり気になっちゃて…。…顔の傷は、どうしたの?」
迷う気配の後、歯切れが悪そうに莉子ちゃんは私に尋ねた。
触れてほしくないことに触れられて体が勝手に強張る。
私が返事を返せないでいると、莉子ちゃんは「ごめんね」と申し訳なさそうに謝った。
「…いや、莉子ちゃんが、悪いわけじゃないから…ただ、その…」
なんて、言ったらいいんだろう。
言葉が見つからない。
私は何も言えなくて俯く。
「ねえ、依ちゃん」
隣から莉子ちゃんが立つ気配がして、私は顔を上げる。
「久しぶりにお話し、しない?」
彼女はニコッと、優しく微笑んだ。
莉子ちゃんに連れてこられたのは、昔からある喫茶店だった。
高校生の頃はよくみんなでこの喫茶店に集まって勉強したのを思い出す。
ここはあまり都会ではないので、カフェと呼べるところがここぐらいしかないのだ。
だから平日の夕方は、大体高校生で満席。
お昼時の今はちらほらと老人たちがいるだけで、席はガラガラだった。
「端っこ、座ろっか」
一番端っこの、ちょうどインテリアで隠れたような席に座る。
「なにか頼む?」
私は首を横に振る。
「そっか、じゃあ私もいいや!」
そう言って、席を立った莉子ちゃんは私たち二人分の水を注いできてくれた。
「ありがとう…」
「どういたしまして!」
莉子ちゃんとは、特に仲が悪くもなくよくもない、普通の友達だ。
だからこうして二人で一緒に喫茶店に入ることは初めてだったから、少し緊張する。
「いつこっちに帰ってきたの?」
「えっと、1ヶ月前…、くらいかな…」
「そうなんだ! しばらくこっちにいるの?」
「…うん、その、つもり…」
他愛もない話をする。
莉子ちゃんの優しい声音が、何となく安心する。
それからしばらく他愛もない話を続けた。
久しぶりに話す莉子ちゃんとの会話は思ったよりも楽しくて、誰かとの会話でこんなに安心して話せるのは本当に久しぶりだった。
「…依ちゃんはさ、」
迷うように莉子ちゃんが切り出す。
「地元を出て、いっぱい頑張ったんだね」




