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そうして連れてこられた病院は、私の思っている病院と違った。
「せい、しん病院…?」
連れてこられたのは心療内科クリニックだった。
はっきり言ってカナ先輩が何を考えているのかわからない。
だって、精神なんか病んでいないし、特にこれと言って性格が歪んでいるわけでは無いから来る意味が無い。
そんなことを思っている間にカナ先輩は受付を済ませ案内番号をもらっていた。
番号が呼ばれるのを待つ間、私たちは何も話さなかった。
私はカナ先輩が何を考えているのかわからなかったし、正直不信感すら抱いている。
こんな状態で話しかけられるはずがなくて。
カナ先輩はカナ先輩で、どこか張り詰めた表情をしていた。
「32番でお待ちのお客様〜」
私たちの番号が呼ばれる。
「…行こっか」
カナ先輩の言葉に私は無言で頷くだけだった。
「うつ病ですね」
診療室に先生の声が静かに響く。
「…は?」
この先生は一体何を言っているんだろうか。
言われるがまま問診をして、アンケートをとった。
そうして出た結果が、鬱…?
ありえない診断結果に段々イライラしてくる。
「やっぱりそうなんですね」
私の横に座っていたカナ先輩は診断結果に納得しているようで、目を見開いてカナ先輩を見る。
裏切られた、気分だった。
「会社は半年ほどお休みしましょう。お薬も出しておくので必ず毎日飲んでください」
そう言って私を置き去りに、カナ先輩と先生は勝手に話を進める。
「えっと、あの、何かの間違いだと思います。私うつなんてそんな…!」
必死に訴えても、「自分の状況と向き合っていくしかないです」と先生は言う。
カナ先輩も「私も力になるから」と、私の気持ち一つも汲み取ってくれない。
嫌悪感、不信感、不安、恐怖、怒り。
いろんな感情がないまぜになってうまく言葉にできない。
それがカナ先輩と先生の目にどう映ったのかはわからないけど、二人して「大丈夫」と繰り返すだけだった。
私が”大丈夫”なんてことは、私が一番わかってるのに…!
診断を終えて病院を出た私は、カナ先輩に支えられながら家に帰った。
私は心の中がぐちゃぐちゃで最後までカナ先輩と話すことはできなかった。
カナ先輩は何かを私に伝えていたみたいだけれど、その言葉は一文字も私の耳には届かなかった。
家について、部屋に一人になった途端、言い知れぬ感情が襲いくる。
なぜか悔しくて、悲しくて、どうしようもできなくて、私はまた感情に任せるまま何時間も泣き続けた。
そうして涙も乾いた頃、改めて診断書を見る。
『病名:うつ病 上記の診断にて、約6ヶ月休職の上、通院治療、自宅療養を要する。』
「…ぅっ、ぅぅ」
また涙が出てきた。
…悔しい。だって、絶対うつ病なんかじゃない。
私はまだ働けるのに。絶対、病んでなんかないのに。
認めたくなかった。
それでも診断された以上はその結果を会社に報告しないといけなくて、私は先生に言われた通り診断書の写真を撮って課長に送る。
正直課長のメッセージを開くのはとても嫌だった。震える手を押さえながらメッセージを送る。
相変わらず、前のメッセージに対する返信は届いていなかった。
メッセージを送った後、自分がうつ病だってことを自分で認めてしまった様な気分になってまた涙が溢れた。




