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そんな日々を送っていた四日目の昼。
ーテレテンッテンテン、テレテンッテンテン
唐突に私のスマホから着信音が鳴り響く。
頭が勝手に嫌な想像をして、私の心臓は大きな音を立てながら早鐘を打つ。
電話に出たくなかったので気づかないふりをしてしばらく放置してみても鳴り続けるスマホ。
私は意を決して震える手を伸ばし、恐る恐る画面の着信相手の名前を見る。そこには、
”カナ先輩”
と表示されていた。
「か、な先輩…?」
予想外の人からの着信に一瞬びっくりしたが急いで電話に出る。
「もしもし…」
「あ、キミちゃん?! よかった、繋がった〜!」
電話越しに聞こえるカナ先輩の声は本当に嬉しそうだった。
「ごめんね、急に電話して。メッセージ送っても既読つかないし、キミちゃん気づいてないみたいだったから…心配になって電話かけちゃった」
「えっ…ごめん、なさい私」
「あっいいのいいの!全然責めたりしてる訳じゃないから!キミちゃんは謝らなくていいよ」
最近スマホを触っていなかったし、通知を切っていたので全然気づかなかった。そんな自分に嫌気が差す。
「えっとそれでね、キミちゃんもしかしたらあんまり触れてほしくないかもしれないんだけど…同僚から聞いちゃって…」
カナ先輩は歯切れが悪そうに話す。
「その…聞いたよ、会社で倒れたこと」
その言葉に、あの日の光景が頭にフラッシュバックのように蘇り、心臓がドクンっと大きく脈打つ。
「…あ」
「わかってる、課長が原因なんだよね?」
「…い、いや、でもわ、私が…仕事できない、から…」
「…そう言われたの? …いや、辛かったら答えなくて大丈夫だから。キミちゃんは一切悪くないからね」
「…」
カナ先輩は小声で「アイツやっぱりどうかしてる…一回ガツンと言っておけばよかった…」と課長について不満を漏らす。
私は何も言えなかった。
「今はお休み中? …キミちゃんが大丈夫だったらなんだけど、明日、会えない?」
「え…明日、ですか?」
「うん。あ、もちろん無理だと思ったら断ってくれても全然いいから。ただ、キミちゃんと少し話がしたくて…」
「………私は、大丈夫です」
「ほんと? ありがとう! えっと、じゃあ明日11時に…」
それから明日の日時と場所を決めたらカナ先輩が電話を切るのを待って私も電話を切った。
電話を切った後、メッセージを開く。
そこには二日前の日付の横にカナ先輩からのメッセージが届いていた。
『キミちゃん、久しぶり。同期から聞いたんだけど…キミちゃん、大丈夫?』
「二日も未読無視してたの私…最悪だなぁ…」
カナ先輩のメッセージに謝罪のスタンプを押して、メッセージの一覧に戻る。
「…」
課長からの、返信はなかった。
そっと課長に送ったメッセージを開く。
私の送ったメッセージの横には既読の文字が表示されていた。
私はそのままメッセージを閉じてスマホの画面を切る。
もう何も考えたくなくて、そのまま眠りについた。




