表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/32

1

 

(より)、これもやっといて」

「あっ、はい!」


 こちらを振り向くこともなく渡された書類を受け取って自分のデスクに積み上げる。


 周りからは絶えずキーボードを打つ音、誰かの叱る声、バタつく足音、1オクターブ上がる電話対応の音で溢れている。

 本日も平常運転。


 私は自身のデスクに積み上げられた書類に目を通しながらパソコンを起動した。






「あー、やっと終わった…」


 パソコンを閉じて、ひとつ伸びをする。

 壁に立て掛けられた時計に目をやると時刻はすでに22時を超えていた。


「かえろ…」


 デスクに並べられたコーヒー2缶とオロナミンC一本をゴミ箱に捨て、私だけだったオフィスの電気を消す。


 会社を退勤した外はいつも通り真っ暗で、人もほぼ通っていない。

 ここから自宅まで20分。


 毎日徒歩での通勤。

 ちょうど会社と自宅の真ん中らへんにあるコンビニに通うのが毎日の日課。

 そこで本日のお酒という名のご褒美を買うのが数少ない楽しみ。


「ん〜〜…ん!今日の夜ご飯は君に決めた〜」


 手に取ったコンビニ弁当とお酒をレジに通し、レジ袋を断るのが一連の流れ。

 そのまま今日のご飯たちを無造作に鞄に詰め込み少し早歩きで帰宅。

 リビングに行く前に靴下とシャツを洗濯カゴに投入し、リビングに突撃。

 鞄に詰め込んだコンビニ弁当をレンチンすることなく開封したら、ここでお酒を開けまずは一口。


「は〜〜〜っ至福ぅ〜……」



 これが私、依希実子(よりきみこ)の毎日のルーティーン。




 大学を卒業して社会人になり早3年。

 就職した会社はいわゆるブラック企業で、毎日の残業は当たり前。

 毎日始業時間の30分前には仕事が始まり、終業時間が22時を過ぎるのは珍しくない。

 日によって残業時間はまちまちだけれど、週10時間以上は必ず超える。

 基本土日が休みの会社だけど、もはや休日出勤は日常。

 そんな生活だから当然彼氏もできず、友達も気づけば片手で数えられるくらいしかいなくなった。


 時々、「そんな生活で辛くないの?」とか「仕事辞めたら?」と聞かれることがある。だけど、たしかに体は辛いが私自身は至って健康。

 自分で言うのもあれだけど、私のメンタルは強い方だと思う。

 だから落ち込んでもすぐに立ち直るし、悩みも寝て起きたら大抵忘れていたりする。


 それに、私は恵まれてる方だ。

 世の中には私よりももっと大変で辛い人がいっぱいいる。

 仕事がしたくてもできない人、雨を凌ぐ家がない人、今日のご飯もまともに食べられない人。

 例をあげたらキリがなくなるくらい。


 それに比べて、私はご飯も食べれて、仕事があって、家があってお金もある。

 これ以上ないくらい恵まれている。だから多少仕事が辛くても、全然耐えられた。むしろ幸せだ。


 それに仕事は忙しい方がやる気も上がるし、やりがいもあるしね!

 職場の人たちだって悪い人たちばかりではない。



「ごちそうさまでした」


 今日のご飯を平らげてそのままゴミ箱に投げ捨てる。

 お風呂は夏以外基本的には朝風呂派なので、とりあえずメイクをダブル洗顔不要(ここ重要)のクレンジングでパパッと落としたら、簡単に保湿をする。

 そうしたら歯磨きは1分で済ませる。

 いかに早く寝るかが、私の生活にとって最も重要だ。


 部屋着は高校の時の体操服。まだすこし肌寒いので上だけ長袖ジャージを着る。

 ベットの中に入る前に今日の日付を潰しておく。


 私は4月とかかれたカレンダーの前に立ち、17の数字を赤ペンで塗り潰した。

 ふとその2個下の週にある、赤く丸をつけられた30の数字に目がいく。


「もうそんなに経ったんだ…」



 時間の流れは早いなぁ、としみじみ思う。


 時計を見やると時刻は1時に差し掛かっていた。


「やばっ、寝なきゃ」


 急いで布団に潜り込むと、忘れないようにアラームをセット。

 これで私の一日は終わり。



 そしてまた明日から変わらない毎日がやってくる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ