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異世界の英雄はもういない  作者: 天山竜
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3-23.其々の『戦闘』

 

 

 「此処までだ」


 

 駆け寄る軽装の集団の前に立ち、進路を塞ぐ。

 身体の線から恐らく、全員女。

 装備は意匠(デザイン)が統一はされ、鎧から剣に至るまで高品質と見て取れる。

 それに加えて、向けられる敵意と、その立ち姿からそれぞれが相当な手練れなんだろう。


 「……グリント騎士団総隊長、プレディカ。領主御子息の命により貴様を拘束する」

 「この戦はグリント軍の総意なのか?」


 思っていた疑問を総隊長を名乗る女、プレディカに打つける。

 領主の息子……あるいは領主の命令だからと言ってこんな軽々しく騎士は動く物なのか。それが、騎士を名乗る者たちのする事なのかどうかが知りたかった。

 

 「我々は主の命令に従うのみ。兵の意志など関係ない」

 「上が決めた事に従うのが騎士か?ティストゥートが欲を出さなければ無駄な戦いも起こらなかったのに?」

 「関係ない!」


 興味をひく解答ではない。

 それじゃまるで、操り人形だな。

 だが、なんだ?敵意を感じる事に間違いはないが、違和感がある……これは戸惑いなのか?

 

 「課せられた使命は貴様が手に入れた道具の奪取、村の占拠、そして貴様の身柄の拘束だ」


 剣を抜き、切っ先を俺に向けて来た。

 どんな心境なのかは知らないが、俺達の敵だと言うなら魔物と変わらない。

 来るなら……戦う。


 「かかれ!!」

 

 プレディカと名乗った女の隊長の号令が響き、武器を手にグリント兵が一斉に斬り掛かって来た。



 ━━五百神シロ━━



 「クソっ!」

 「早いわよコイツ!?」

 「何なんだこの獣人種(ワービースト)は!?」


 二本足でグリント軍を翻弄して、確実に一人また一人と確実に狩って行くシロ。

 この部隊の目的は防壁に取り付き、その機能を消失させグリント軍の進軍を促す事だったのだが……彼女等の前に現れた白い髪の少女、五百神シロを突破出来ないでいた。

 部隊一人一人の強さは周辺国にも劣っていない。例え【最強】や【最恐】が出て来ても足止めは出来ると自負していた……が、蓋を開けてみればシロの足元にも及ばなかった。

 固まっても的になり、散らばっても打たれ、彼女達の自尊心はシロによってズタズタに引き裂かれる。


 「くそ……ちくしょう!私たちは栄えあるグリント軍騎士━━」

 「……しら……ない」

 「ぐふっ!!」


 最後に残った部隊長の腹部に会心の一撃を叩き込み、その意識を根こそぎ刈り取る。

 会敵から決着まで掛かった時間はわずか十五分。

 完膚なきまでに敵を叩き、シロの仕事は終了した。


 「……ちょっと……おなか……すいて……きた」

 『シロ様』

 「……?」

 『エルシエル様の命に従い、お届けに参りました』

 「……おぉ……!」


 頭上を見上げれば、戦場を俯瞰する偵察機の内、一機がシロの元に箱状の物をぶら下げて降りて来る。名を呼んだのはヴィオレの声だと分かったシロは其処が戦場にも関わらず、箱を受け取り、その場で開封。

 中に入っていた食事に目を輝かせ、手を合わせてこう言った。


 「……いただき……ます」



 ━━セリエ=オルタンシア━━



 今までの戦いから後方支援、中・遠距離攻撃が得意と思われていたセリエ。

 しかしその戦闘スタイルは纏う『武器』によって変わって来る。

 『フェネクス』を纏えば自在に空を掛け、広範囲に渡る攻撃によって敵を殲滅・制圧する事が出来るし、今回の様な近接戦を得意とするのは……。


 「あ、あの娘の姿は……一体、なんなの?」

 「あら?もうお終いですか?」


 セリエの足を包む黒色の装甲に腰から伸びた一匹の蛇。

 今回『魔装』としてその身に宿したのは、驚異的な機動力と近接戦闘能力を有した『アモン』だ。


 「もっと抵抗してくれなければこの姿になった意味がなくなってしまうのですが」

 「き、貴様!?」

 「気付いてない様だから教えて差し上げますが、もう魔法……使えますよ?」

 「何!?」

 「……ちゃんと抵抗、してくださいね?」


 セリエが発する重圧が増した。

 相手取る部隊の残りは5人……その者達に向けて、セリエの魔法が解き放つ。


 「【凄絶テリブル】【奔流トラン】」


 拳大の水を作り出し、それがみるみる内に大きくなって行く。

 

 「馬鹿な!?詠唱は何時したんだ?!」

 「それよりも防御を━━」

 「残念ながら時間切れです。さようなら」


 魔法と能力の複合技のメリットはその発動の速さ。

 あまりにも軽い別れの挨拶は彼女達の耳には届かなかった。


 「さて……他の方の援護にでも向かいましょうか」


 髪を靡かせ、他の者達が向かった戦場へと目を向けるセリエ。

 威風堂々足る姿は……次代の《魔王》を彷彿とさせた。

 


 ━━ティアラティア=フリソス━━



 「随分脆い防具を使ってるのね」

 

 そう呟いた彼女の足元には昏倒したグリントの精鋭達。

 各員が身に付けていた防具を撃ち抜き、砕き、意識も自尊心も粉々にした挙句、その破片を手で弄びながらボソッと漏らした一言だ。

 それを見た残った9人の隊員がざわつく。


 「この鎧を容易く砕いた……だと?」

 「隊長、魔法が使えます!」

 「半数は詠唱を開始!残りは完了まで足止めしろ!」

 「はっ!!」

 「ま、そうなるわよね?」


 間近で指示を聞いたティアの反応は冷めたもの。

 弄んでいた鎧の破片を掴み取り……


 「ま、待ってやらないけど……ね!」


 大きく振りかぶって、詠唱を開始していたグリント兵に向けて投げ放った。


 「がっ!?」

 「っ!?散開し━━」

 「そんな暇ないわよ!?」


 鎧の破片が当たった隊員に気を取られたその一瞬でティアが距離を詰め、残ったグリント兵を掃討する。

 その速さは正に雷。

 瞬く間に8人のグリント兵を薙ぎ倒し、部隊をまとめていた女、部隊長の目を剥かせた。


 「この……小娘が!?」

 「誰が小振りな娘よ!?」


 残った部隊長の腹部を鎧ごと膝で強打、彼女の意識はそこで途切れたのだが。


 「アタシはこれからなの!成長期なんですぅ!ちょっと胸がデカいからって調子こいてんじゃないわよ?!ねぇちょっと聞いてんの!?」


 自分が倒した部隊長の胸倉を掴み、ガクガクと揺するティアラティア=フリソス。

 最後は締まらないものの、この部隊も全滅と相成った。


 「他のヤツも軒並みデカい!?誰か、……誰か、誰か1人くらいアタシと同じ様なヤツが居るでしょ?!」


 自身の劣等感(コンプレックス)を、倒したグリント精鋭部隊に刺激され、ティアは他で戦う者達の元へと駆け出す。

 援護とかではなく、……主に敵兵の女の体を確かめに。



 ━━リリーナ=プリムラ━━



 「皆さん、……凄い」

 「あれ位の人間に〜負けるような鍛え方は〜、してないわ〜」

 

 防壁の上からヴィオレの偵察機が映し出した各部隊が制圧されて行く光景を目にしたリリーナに、何処か誇らしげなエルが高らかに答えた。セリエこそ違うが、この【最恐】の弟子達は雑兵が何人束になっても敵うはずがないと言外に伝えて来る。

 残す敵は……クロが追い詰めた部隊長1人となっている。


 「あのクロちゃんが追い詰めている娘は〜、他の娘よりもちょっとだけ強かったわね〜」

 「そ、そうなんですか?」

 「もし〜そう強く見えなかったなら〜リリーナちゃんも強くなってるからよ〜?」

 「……だと、嬉しいです」


 万が一の補助役として残されたが、もしあの場に自分が立っていたら……こんな簡単に敵を御する事が出来ただろうか。そんな自分の実力を推し量る様な事を考えてしまうリリーナ。

 

 「もっと頑張らなきゃ━━?」


 自らの決意を心に決めたその時、一筋の光が……正確には一筋の闇がリリーナの脳裏を掠めた。

 それは精霊の知らせか、それとも己が持つ直感か。

 感じた感覚を信じ、声を張る。


 「ヴィオレさん!皆に待避を!?早く!?」

 「『皆様、急いで防壁にお戻り下さい』」

 「【私がレシピを、貴方が料理を、共に素敵な食卓を】━━」


 静かに、だが早口で魔力を編んで行くリリーナ。

 その速度は目を見張るものがあり、エルが知ってる魔法師の中では五指に入る速さだった。だが、一体何を警戒して?そう思い、敵陣方向を見やれば……ドス黒い魔力が敵陣……ティストゥートがいる筈の方角から流れて来る。



 「【シルク・ヴェール】!!」



 不穏な魔力をエルが感じたのと同じタイミングで、リリーナが魔法を展開。

 巨大な防壁全てを包み込む風と光の障壁が広げられた。

 その瞬間━━


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