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異世界の英雄はもういない  作者: 天山竜
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2-7.『隠蔽』された宝 (大幅加筆)


 

 何故、行き成りそんな話を俺に?

 ……大切にしてた……か。

 家族。……だろうけど、それを言うと何か照れ臭いし……何より俺とシロが何かされかねないから絶対にやめておこう。何だろ?

 

 「なんだ?何もないのか?」

 「いえ、逆に多過ぎて判断に迷うんですが……何に使うんですか?」

 「物なら壊す、本なら燃やす」

 「止めて下さい」


 怖ぇよーーー!!それ、地下の倉庫が塵になるって言ってる様なものじゃん!?しかもそれ、人だったらどうするの!?まさか殺すとか言わないよね!?


 「じいちゃんが集めていた物はかなり残ってますが、生活の基盤……と言うか俺の基盤ですから無くなったら困ります」

 「そういえば〜……」


 この家を丸ごと破壊しかねない亜澄さんの話しで何か思い出したのか、エルさんが額に指を当てて少し前の記憶を言葉に乗せる。


 「ハイジ〜、お酒好きだったわよね〜。まぁ従えてる《神霊》が吞兵衛だし〜」

 「ハイジとはよく酒を呑んでたぞ?」


 酒……酒か。確かに家に居る時は良く飲んでた気がするな。料理を覚えてからはつまみも作らされてたんだ。

 そういえば……。


 「じいちゃんの酒って、何処にあるんだろ?」

 「……なら……それで行こう」


 俺の呟きを受け、亜澄さんがニヤリと笑う。な、何がでしょう?

 

 「物の保管場所は知ってるんだな?なのに酒の場所は知らされてない。つまり……子供に必要ない物は別に隠してるって事だろう」

 

 確かに。『お前にはまだ早い、時期が来たらお前にも楽しみ方を教えてやる!』って昔じいちゃんに言われた気がする。でもこの家でそんなの見た事ないよなぁ。

 

 「アイツの部屋は残ってるか?」

 「ありますけど……そんな類のは見てないですよ?」

 「魔法が使えれば何かを隠すなんて難しい事じゃない。──もしかしたら極上の酒もあるかもしれんな《神霊》?」

 「──それは興味深いの」


 ユグさんがピクリと反応を示す。

 《魔王》の誘惑に《神霊》が乗るの?!

 って言うか、そんな隠したい物なのかな?確かに教育に悪いって言えば、悪い……のか?


 「……ハイジが〜いつだったか〜『秘蔵の酒をシロに割られた』とか何とか言ってたっけ〜」

 「……シロ?」

 「じじぃの……びん……わったら……じじぃが、……おもしろかった」


 それ泣いてるよ!?

 じいちゃんが泣き崩れた所が一瞬で思い浮かんだんだけど!?


 「おもしろい……から……もっと……やろうと……したら……びん、なくなった」


 隠したかったんじゃなく、隠さざるをえなかったのか。

 俺達の教育云々かんぬんってより自衛だったな、絶対。


 「し、シロさん」

 「《英雄》になんて事してんのよ」

 「決まりだな」


 リリーナとティアがシロに向かって呆てる……のを尻目に決然と亜澄さんが宣言する。

 

 「灰慈の酒を見つけ出して呑み尽くす。それが出来なければ私は帰らんぞ?」

 「致し方ないの!気は進まんがこの森の安寧の為に探すしかないぞ!エルよ!」

 「しょうがないわね〜」


 この場に居る大人が大人げない!?じいちゃんの味方が誰も居ない!!

 子供では太刀打ちできない大人の結束……ごめん、俺だけでは止める事なんて出来ないよじいちゃん!!


 「……散らかすとか壊すは勘弁してくださいよ」

 「誰に向かって言ってるのかしら〜?これでも一家を支える母親なんだから〜……ちゃんと片付けるわよ〜」


 何故片すことを前提に言うんですかねぇ!?


 「こっち」

 「おっ、灰慈の娘が案内してくれるのか?」

 「じじぃの……たから……さがす。……あと……しろ」

 「そうか。中々可愛い奴だな」


 シロの頭を優しく撫でる亜澄さん。

 珍しいな、シロが怯えず自分より強い人に接するのは。

 エルさんにしてもそうだが、強者は匂いが違うと言って初めは近付こうとしないんだけど……じいちゃんの家族だと判断したんだろうか。それとも、ただ単にじいちゃんの大切にしてる物を探す事に好奇心が疼いてるだけなんだろうか。


 「あの……良いんでしょうか?」

 「あの人もあれで、じいちゃんの事を悼んでくれているんだとは思うよ」


 先頭を切ってじいちゃんの部屋に入って行く五百神亜澄。その真意は分からないけど、何だか無理して楽しんでる様な気もする。本当は悲しんでいるのでは━━


 「アイツの部屋、小ざっぱりして面白みに欠ける部屋だな」

 「じゃからこそ怪しい!何か隠してる気配がビンビンしおるわ!」

 「……ここ……なんか……におい……ちがう?」

 「あら〜?確かに何だか魔力残滓があるわね〜?」

 「ほう?任せておけ。灰慈の魔法なんて物の数ではない」


 んー。純粋に只の嫌がらせに思えて来た。

 ……さて。


 「ん?何かすんの?」


 動き出したが、大人(+1)とは別方向に向かう俺にティアが声を掛けてきた。


 「じいちゃんの酒蔵が本当にあるならだが、あの人達その後飲むんだろ。つまみ位は作ろうかと」

 「あ、アタシも手伝ってあげてもいいわよ!?」

 「ティア、エルさんも居るのに台所に入るのか」

 「失礼ね!?つまみって簡単な物でしょ?それ位ならアタシでも出来るわ!」

 「あの……何かを盛り付けるとかそれ位なら、私にもお手伝い出来るでしょうか?」


 残された子供三人。

 大人の酒宴の準備をすれば、多少は《魔王》の心証も良くなるだろう。


 「なら頼もうか」


 ユグさんとも呑んだことがあると聞いたし……じいちゃんは仲間と楽しく騒いだ事もあるのだろうか?俺とシロを育ててくれた『五百神灰慈』。その全容を俺はちゃんと知らなかったんだと改めて気付いた。



 「ぷはー!これは良いのう!」

 「こっちも中々……んく。しかしこれも捨てがたいな、んくんく」

 「うん〜、これ〜、私好きかも〜」


 結果、じいちゃんの酒蔵はあった。

 しかもかなりの量が出て来て、それぞれがその味を鑑賞している。中にはじいちゃん自らが作成した「精酒」なる物もあったけど、これって魔法で調合したって事なんだろうか?


 「クロ坊ー!つまみもジャンジャン持ってくるのじゃ!!」

 「……この世界にも米や味噌、醤油まであったのか」

 「村の特産品よ〜。ハイジが一から方法を考えて村人に教えたの〜」


 あれだけ険悪だった三人が仲良くなってる……これが酒の力なのか?

 酒が進み、俺が作ったつまみも作って出した端から消えて行く。亜澄さんは特に、「焼にぎり」が気に入ったらしい。握り結んだ米にミソやショーユを塗って焼いただけのもの。今じゃ俺達が普通に食べてる米だけど、亜澄さんから聞いた話じゃこの世界には存在そのものがなかったらしい。それをじいちゃんが作ったって……どんだけ米が食いたかったんだって話だよ。


 「くろ……おかわり」

 「これ、意外と美味しいじゃない」

 「あ、あのお皿下げますね!」


 ……シロとティアは普通に食ってるし。君達、さっき夕飯済ませたよね?

 手伝ってくれるのがリリーナしかいない。はぁ。


 「リリーナも適当に休んでくれて大丈夫だよ」

 「いえ!お料理……は、まだ……手伝えないので!せめてこれ位は!」

 「お前は料理が上手くないのか?」


 と、俺達の会話を聞いていた亜澄さんが、酒杯を片手に寄って来た。

 呂律はしっかりしているけど、頬が若干赤みを帯び、俺達との距離感が近く柔らかいものに変わってる。

 ……酔ってます?


 「あ、はい。練習はしてるんですけど……中々」

 「……リリーナと言ったか?魔法適正は?数値は測ったのか?」

 「え?えっと……高いかは分かりませんが属性は二つ、『風』と『光』です」


 …………え?料理が出来ないって話だけで何故?


 「あ、アタシも料理出来ない!属性は『雷』!」

 「ほぅ、珍しいな」


 何か重大な話が始まると感じたのか、ティアも加わって亜澄さんの話しを聞きたがってる。確かに、リリーナもティアも練習してるのは知ってるんだけど全然上達しないんだよな。


 「それと料理が出来ない事って何か関係が?」

 「事実としてあるわけではなく、あくまで推論としての話しだが……」


 亜澄さんが言うには……。

 魔法の適正がある者は(こぞ)って料理が出来ないらしい。詳しく調べた訳ではないらしいが、一説には、精霊には味覚が理解出来ないから味が分からない。だから例え不味い物を食べても力になればそれで満足してしまう……とか。

 ……掃除や洗濯の様に見た目の問題には多少の干渉は出来るが、味付け等の繊細な作業には干渉できない……とか。

 他にも所説ある様な話が出て来た。

 ……あれ、でも。


 「ティアは皮むきも満足には」

 「それ以上喋ったらアンタの皮を剥くわよ」


 ひぃぃぃぃぃ!了解!承諾!分かったから台所に置かれた包丁に手を伸ばすの止めろぉ!!

 ティアの指が包丁に指が掛かる直前で取り上げ、遠ざける。

 魔法適正……精霊の干渉か。そう思うと疑問が更にもう一つ。


 「……エルさん、料理上手いよな」

 「ん〜?なぁに〜?」


 エルさんにしては珍しく、若干酔いが回ってるみたいな雰囲気ながら、こちらに身体毎振り向いてくれた。……魔法適正……って奴、高いんだよな?

 まぁ、あの威力で低いなんて言われても全っっっく信じないけど!


 「エルの数値はどの位なんだ?」

 「んっと〜。随分久しく図ってないけど〜……確か256位じゃなかったかしら〜」


 いつの間にか、亜澄さんのエルさんに対する呼び方が「エル」に変わってる。そこまで打ち解けたのか?酒の効果は……絶大だな。


 「今はそれ以上になっているだろうが……それだけの適正を持っていたら料理の習得に時間が掛かったんじゃないのか?」

 「それなりかしらね〜。確かに料理は苦手だったけど〜、それをそのままにするなんて〜何か癪に障ったから〜一杯練習したのは覚えているわ〜」

 「ならその練習方法を教えてくれても良かったじゃない!?」

 「教えたわよ〜」


 んー、分からない。エルさんが料理の、それこそ特訓をして今の実力に至ったのは納得するが、その娘のティアやリリーナに料理を「教える」事については、以前自身が凹む位に出来なかったが……。

 ……あ、分かった。


 「作る事に掛けては自分で何とかしたけど、自分の料理方法を人に教えるには……エルさんは感覚的過ぎるのか」

 「?どういう意味?」


 俺の独り言を拾ったティアが訪ねて来たので軽く説明を。

 例えば……材料の皮を剥いて、細かく刻む。

 そんな指示が出て、それから矢継ぎ早に「炒める」や「味付け」などの教えが飛んでくるが……先ず包丁で皮をどう剥けば良いのか分からなければ先に進めない。

 俺もエルさんに料理を教えて貰った時、「皮を剥いて〜」と説明を受けた際にはもう皮が全て剥け切り、次の工程に入っていたのには面食らった。

 戦闘訓練でもスパルタな人だし、本人の基本性能(スペック)として備わっている物を丁寧に他人に教えろと言われても……それは難しいのかも知れない。


 「じゃあ……もっと丁寧に練習すれば私でも料理が作れる様になるって言う事ですか!?」

 「まぁ……一概にそうとは……分からないけど」


 リリーナの食い付きが凄まじいな。そんなに料理作りたかったの?


 「下準備位なら……今度やってみるか」

 「はい!お願いします!!」

 「アタシもやるわ!!」


 まぁ。出来ない奴の気持ちは、分かると言えば分かる。魔法は使えないわ、訓練やそれこそ戦闘でも道具を駆使して戦える様になるまでにはそれこそ血が滲む……流しながら努力はしてるつもりだから。出来る事からやって、出来る事が増えていくのは嬉しいもんなんだよな。


 「私の教え方じゃ〜満足していなかった訳ね〜?」

 「いやいや、そうじゃなくてね!えっと……アンタもママから教わって何で普通に料理出来る訳!?何か納得出来ないんだけど!」


 母からの追及を躱す為に俺を出汁に使う娘……。勘弁してくれ、そんなの━━


 「もしさっきの推論が本当なら、俺には魔法適正がないからだろ。それに、俺はエルさんから教わったって言うよりも、盗んだって言う方が正しい」

 「……盗んだ?」

 「二人共、エルさんから料理を教わったなら分かると思うけど、説明されてる事が既に終わっていただろ?皮を剥いてと言われた次の瞬間にはもう次の工程に入ってるみたいな」

 「た、確かに」

 「聞く二割、見る八割……それこそ『技の種(スキル・シード)』を使って見て覚えた」

 「あぁ〜!確かに〜ある時期から〜、喋らなくても覚えてくれるから楽だったのを覚えてるわ〜」

 「それ……ズルくない?!」


 ズルくないわ!?ある物を利用して自分の糧を得ろと言うのは他ならないエルさんからの教えだわ!?……まぁそう考えると、魔法が使えて料理も出来る、エルシエル=フリソスが凄い人物なのだと改めて思う。天は二物を与えずなんてどこかで聞いたけど、エルさんはその内の一つを、自分の並々ならぬ努力で手に入れたんだ。俺にそれが手に入れられるなら、知恵や道具を駆使してでも手に入れなきゃ。


 「魔法が使えないんだからそれ位は大目に見て欲しいんだけど」

 「魔法が……使えない?」


 そんな意外そうに尋ねられても……この世界じゃ珍しい部類には入るのかな?正に珍種だからなー。


 「ええ、全く。それが何か?」

 「……いや……何でもない。今あるもので高みを目指す、私の娘にも見習わたいと思ってな」


 亜澄さんから気になる言葉が飛び出したな……。娘?……《魔王》の?


 「あら〜、アスミにも娘さんが居たのね〜」

 「まぁ仲は良くないがな」

 「何かあったの〜?」

 「単純に教育方針の問題だと思う。教えの形としては灰慈と変わらないだろうが……自分の子供に、私自身がどう接して良いか分からなかった。だからと言う訳ではないが……まぁその、少々殺伐とした教え方をしてしまってな」


 絶対的強者である《魔王》が自分の子供をどう育てた、か。聞くのが怖い……が、興味は惹かれる。


 「……具体的には?」

 「欲しい物は奪え。奪えないなら奪えるまで努力しろ。奪えた物には奪われない様に工夫しろ。それでも奪われた物は、奪い返せ」

 「それは、……何と言うか……」

 「分かってる。そんな育てられ方をしたら捻くれる。私は……私達姉弟がやられて嫌でたまらなかった育て方を娘にしてしまった。嫌われて当然だ。まぁ、ある時期から口も利かれなくなってしまったよ」


 そう言って、少し寂しそうな顔をする《魔王》。

 そんな顔をされると……世間から恐れられていたって、やはり人なんだと思わされる。

 ……あれ、娘が居るって事は配偶者……旦那さんが居るって事なんだよな?

 じいちゃんの世界でもそうだったらしいが、この世界の婚姻の形としては左手の薬指に伴侶が互いに作った指輪を填める。「作る」と言っても、元ある物に自分の想いを魔法に変えて指輪に付与をしていく。その指輪の効果がどうであれ、付与に掛かる過程は三か月は要する為、その間に継ぎ込んだ努力と想いが結婚の証となるのだが……。

 夫婦の誓いを立てた時に着けた指輪はお互いに、どんな時でも、肌身離さず身に着けている……はず、なんだけど。

 亜澄さんの左手薬指には、その指輪が……ない。

 「旦那さんはどうしたんですか?」なんて聞き辛いにも程がある!?


 「旦那さんとは別れたの〜?」

 「とっくにな」


 聞き辛い事をサラッと聞いたぞ、エルさん!?

 そしてサラッと答えたな、亜澄さん!?


 「なんで〜?」


 更に突っ込んだ!?


 「何故か?ふふふ、……当たり前だ」


 いや、え?夫婦って別れるのに当たり前な理由があるのか?っていうか、周囲の温度が亜澄さんの感情に吊られてグッと下がってるんだけど!?無理して答えなくても良いんですよ!?


 「あの野郎……事もあろうに私が出産で苦しんでる時に浮気して……腹が立って出産が終わったら」

 「まさか……殺し━━」

 「お前は私を何だと思ってるんだ?」

 「……あ、違うんですね?」

 「地獄に閉じ込めただけだ」


 殺したのとどう違うの!?そこは詳しく聞いて置きたい!?


 「あら〜、……優しいのね〜」


 優しい!?この回答が!?


 「私だって生まれたばかりの娘を片親になんてさせたくなかったからな。罰は必要でも命を取る事まではしないさ」


 って事は、生きてる……って事で良いの?


 「地獄とは具体的に何処なんですか?」

 「私に従ってる《神霊》の領域だ。お前なら名前くらいは知らないか?」

 「あん?」


 ……おいこの幼女、珍しく酔っぱらっているのか?

 ちびちび酒を呑むユグさんが亜澄さんを見やり、彼女の口から件の名前が出ると。


 「『コキュートス』と言う」

 「お主……あんな性悪と契約してたのか」


 こんなに嫌そうな顔のユグさん、じいちゃんが『新しい魔法の実験をする!』とか言い出して聞かなかった時以来。って事は、相当その『コキュートス』って《神霊》と仲が悪かったんだろうか。


 「ユグさんの友達か?」

 「はん!あんな奴、友でも何でもないわ!事ある毎に妾の事をバカにする癖に、妾が契約した主に契約を迫る様な訳分からん頭に花が咲いた様な奴などどうでも良いわ!」

 「お、おぅ」

 「うふふ、ユグちゃんの事が好きなのね、その《神霊》ちゃん」

 「やめんか!酒が不味くなるわ!」


 まだ杯に残っていた酒をきゅっと飲み干し、新たな酒を注いでいく。

 《神霊》同士でも繋がりがあったり、好悪があったりするのかな?……そういえばじいちゃんが契約していた《神霊》、俺はユグさんしか知らないんだよな。

 人間、に限らず、その全てを知る事なんて出来はしない。

 ……例えそれが自分の娘だろうと。


 「一度、娘さんと話してみたらどうですか?トコトン」

 「……何?」

 「俺もじいちゃんの全部は知りません。が、生きていた時に自分が何に疑問を思っていたのか、話せば良かったって今は思います。貴女も、貴女の娘さんも、今生きているなら自分の想いを口にした方が良いと俺は思います」


 じいちゃんが自分から話した事ではなく、それこそ元の世界の家族や、この世界で出来た仲間の事とか……。彼が話したがらなかった事も含めて、聞くだけ聞いてみたら良かったって。過去も、今も、もしかしたら未来の事だって、じいちゃんなら……俺の知ってる五百神灰慈なら笑って話してくれたかもしれない。


 「……そうか。…………そうだな」


 敵意も悪意も殺意もない、不意を突いた亜澄さんの手が、俺の頭を撫でた。

 まるで生前のじいちゃんが撫でてくれた様な安心感が胸を満たす。


 「あの愚弟なら、そんな事を言うかもな」


 やっぱりこの人、じいちゃんの家族だ。


 「前の世界のじいちゃんの事、聞いても良いですか?」

 「ふふ、勿論。何でも答えてやるぞ」

 「あら〜!それは興味あるわね〜」

 「わ、私も是非聞いてみたいです!」

 「アタシも!」

 「此方の世界とそんなに変らん様な気もするがの」


 随分静かだと思ったら、いつの間にか寝ていたシロを自分の部屋まで連れて行き、日が変わり夜が明ける寸前まで、『五百神灰慈』談議に花が咲いた。



※大幅に入れてないエピソードを見付けて、慌てて編集した感じっす。

かなり長くなってるのは……ご愛嬌。

まもなく2024年が終わります。

できれば今日中に新しい話をあげられればと思ってますが、どうなる……!?


皆様、良いお年を

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